質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第七九号

中小企業の成長支援に向けた地域金融機関の役割に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年六月十五日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   中小企業の成長支援に向けた地域金融機関の役割に関する質問主意書

一 地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合といった地域金融機関は、コロナ禍で疲弊している地域経済・地場産業を資金面で支える重要な役割を担っている。コロナ禍の初期の段階から、実質無利子・無担保融資の活用により積極的な貸出が行われてきた。しかし、地域金融機関の経営環境は、コロナ禍以前から、日本銀行のマイナス金利政策などによる低金利環境が長期継続したことで、貸出利ざやを確保できず、厳しい状況に置かれたままで推移している。

 こうした課題への対応の一つとして、経営統合を選択する地域金融機関もあり、地域銀行の経営統合に際して一定の要件の下で独占禁止法の規定を適用しないこととする独占禁止特例法の制定や、経営統合等を行う金融機関に対する資金交付制度の創設など、様々な支援策も設けられた。また、銀行等の業務範囲規制・出資規制についても大幅な見直しが行われた。金融庁は、二〇二一事務年度金融行政方針において、必要に応じてこれらの制度を活用しつつ、地域の実情等を踏まえ、持続可能なビジネスモデルを構築し、将来にわたって健全性を確保するための実効性のある方策を地域金融機関自ら策定・実行していくことが必要であるとしている。

 もっとも、地域金融機関の本来的な役割は資金供給と事業者の支援にあることも指摘されており、単に経費を節減する観点からの合理化や経営統合、新規業務への参入では十全の役割を果たすことが難しいのではないか。

 古くから言われている「目利き力」の強化、民主党政権時の中小企業金融円滑化法制定時にも打ち出された「コンサルティング機能の発揮」につながるよう、地域金融機関への支援を行っていく必要があると考えるが、政府の見解を伺う。

二 二〇二一事務年度金融行政方針においては、金融機関が借り手を全面的に支えられる包括担保法制等を含む融資・再生実務の検討を行うことが掲げられた。現在では、企業の技術や顧客基盤などの無形資産を担保とする「事業成長担保権」について、法制審議会における検討が行われており、金融庁からも実務上の課題を提示していると承知している。

 コロナ禍以前から、中小企業に対して不動産担保や経営者の個人保証に過度に依存することなく融資が行われる必要性が指摘されており、金融庁も事業性評価に基づく融資等の推進を金融機関に求めてきた。コロナ禍により支援が必要とされる中小企業が、担保に乏しいことを理由として資金供給を受けられないことになっては本末転倒であり、金融機関には引き続き柔軟な対応が求められる。

 検討されている事業成長担保権が今後導入されることで、資産を持たない中小企業にも融資をしやすくなるとの期待もあるようだが、中小企業の資金調達にどのような改善をもたらすことができるのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。