質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第六五号

肥料、配合飼料、輸入粗飼料の高騰に対する緊急支援に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年六月十日

紙  智子   
岩渕  友   
武田 良介   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   肥料、配合飼料、輸入粗飼料の高騰に対する緊急支援に関する質問主意書

 肥料、飼料は農業にとって欠かせない生産資材であるが、肥料、配合飼料、輸入粗飼料の価格が高騰し、農業経営を直撃している。

 全国農業協同組合連合会(JA全農)は、本年六月から十月に供給する秋肥の価格を発表した。単肥では、春肥対比で、尿素(輸入・大粒)の九十四%、塩化カリウムの八十%を中心に、二十五%から九十四%の値上げ、化学肥料で五十五%の値上げである。

 農業経営に占める肥料費の割合は、水田作で九%、畑作で十三%(北海道は十五%)、飼料費の割合は、肥育牛で三十%、酪農で四十八%(北海道は四十一%)、肥育豚で六十%、養鶏で五十六%である。

 肥料、飼料、燃油などの経営コストが高騰している一方、コロナ禍で農畜産物の需要が減少し、自由化による輸入圧力もあることから、農畜産物価格が低迷している。生産コストの上昇に見合った所得が確保されなければ、生産者の経営を窮地に追いやり、営農を継続することも困難になる。

 肥料には、鉱物資源や化石燃料を原料とした化学肥料と、鶏ふんや牛ふん、大豆油かすなど動植物由来の有機肥料がある。窒素は葉の成長を、リン酸は開花や結実を、カリウムは根の発育を促す作用があり、このうち一つの成分からなる単肥や、二つ以上の成分を含むよう加工した化学肥料などがあるが、農林水産省によると、窒素、リン、塩化カリウムはほぼ全量を輸入している。また、畜産経営に欠かせないトウモロコシ等の配合飼料、乾燥牧草や稲わらなどの粗飼料も輸入に頼っている。

 すでに、食料品価格の値上げが相次ぎ、帝国データバンクの「食品主要百五社」価格動向調査(五月)によると、八千三百八十五品目で値上げが計画されていることが明らかになっている。生産資材の高騰が続けば、食料品の価格上昇を招き、国民生活への影響は計り知れない。

 本年四月の「原油価格・物価高騰等相当対策」に続き、五月三十一日に令和四年度補正予算が成立したが、肥料、飼料の価格高騰を抑える、目に見える政府の対策がないことから、以下質問する。

一 肥料は、ほぼ全量を輸入しているが、主要供給国である中国が自国を優先して肥料輸出を抑制していることや、ロシアのウクライナ侵略で肥料価格の高騰が加速したことで、二〇二〇年に一トン四万円程度で輸入できた尿素は十万円ほどに急騰している。配合飼料、輸入粗飼料価格の上昇の原因は、新興国の穀物需要が急速に高まっていることや、バイオエタノールへの需要の高まりなどが指摘されているが、コロナ前(二〇二〇年一月)と現在(本年六月)の、肥料(窒素、リン、塩化カリウム)原料の輸入価格並びに上昇率を明らかにされたい。あわせて、トウモロコシ、大豆油かすのシカゴ相場及び配合飼料の工場渡価格を明らかにされたい。また、輸入乾燥草の直近の輸入価格と対前年比を明らかにされたい。

二 日本銀行の「異次元の緊急緩和」政策による円安誘導が、輸入価格、販売価格に与えている影響について、政府はどのように分析しているか。

三 生産資材の高騰は、生産者の経営に影響を与えていることから、高騰分を緩和するためには旧来の枠にとらわれない緊急対策が必要だと考える。

1 肥料については、配合飼料価格安定制度のような支援策がないことから、新たな仕組みが必要である。二〇〇八年、リーマンショックで価格が高騰した際は、価格高騰前との差額を財政支援したが、事務手続きの煩雑さに加え、助成額が価格高騰分の七割であったことから、改善が求められた。新たに生産者を直接支援する仕組みが必要だと考えるが、政府の見解如何。

2 配合飼料価格については、価格高騰を緩和するための「配合飼料価格安定制度」がある。しかし、価格上昇幅が大きすぎて、畜産生産者の経営を圧迫し、「今の制度では救済できない」、「違う次元で検討すべき」との意見が出ているが、政府の見解如何。

3 輸入粗飼料価格については、価格高騰を緩和するための支援策はない。国産粗飼料生産基盤を強化するのは当然であるところ、輸入粗飼料に頼らざるを得ない生産者への緊急支援が必要だと考えるが、政府の見解如何。

4 輸入配合飼料、粗飼料を国産に置き換えるための計画的な対策が必要だと考えるが、政府の見解如何。

5 農業資材を海外に依存することは、食料の安定した供給を困難にし、国民生活に悪影響を与えると考えるが、政府の見解如何。

四 肥料等の輸入資材の高騰は、米価下落に苦しむ生産者への影響は避けられない。こうした状況で、今年度から実施される水田活用の直接支払交付金のカットは、減反に協力してきた生産者の営農意欲を奪い、地域経済への影響が避けられないのではないか。政府の見解如何。

  右質問する。