質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第五七号

我が国における難民認定の状況に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年六月三日

石橋 通宏


       参議院議長 山東 昭子 殿



   我が国における難民認定の状況に関する質問主意書

一 難民認定の実態について

1 難民認定申請者について

(1) 二〇二〇年末及び二〇二一年末時点で、難民認定申請中の者の数を示されたい。

(2) 二〇二〇年末及び二〇二一年末時点で、審査請求(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の九第一項の規定による異議申立てを含む。以下同じ。)中の者の数を示されたい。

(3) 二〇二一年の難民認定制度の「濫用」の件数を示されたい。

(4) 二〇二二年五月に公表された「令和三年における難民認定申請者数等について」によれば、二〇二一年の難民認定申請者のうち、四百二人が二十歳未満であった。そのうち、難民認定申請時に在留資格を有していなかった件数を示されたい。

(5) 二〇二二年五月に公表された「令和三年における難民認定申請者数等について」によれば、二〇二一年に仮滞在を許可した者は二十九人であった。このうち、二十歳未満の者の数とその年齢の内訳を示されたい。

2 難民認定者及び人道配慮による在留許可者について

(1) 二〇二一年に難民として認定された者(審査請求手続における認定者を含む。以下同じ。)のうち、複数回申請者及び退去強制令書発付後に難民として認定された者の数を示されたい。

(2) 二〇二一年に難民としては認定されなかったものの、人道的な配慮により在留を認められた者(審査請求手続の結果、在留を認められた者を含む。以下同じ。)のうち、複数回申請者及び退去強制令書発付後に在留特別許可された者の数を示されたい。

(3) 二〇一七年から二〇二一年(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)に難民として認定された者全てについて、難民認定申請から難民の認定を受けるまでに要した期間を示されたい。

(4) 難民認定事務取扱要領は、難民認定申請案件を「難民条約上の難民である可能性が高い案件、又は、本国が内戦状況にあることにより人道上の配慮を要する案件」(A案件)、「難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を主張している案件」(B案件)、「再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している案件」(C案件)及び「上記以外の案件」(D案件)の四類型(以下「四類型」という。)に振り分けている。二〇一九年から二〇二一年(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間)に難民として認定された者について、四類型別の内訳を明らかにされたい。

(5) 前記一2(3)及び前記一2(4)において、仮に「通常の業務において集計しておらず」、「膨大な時間を要することから、お答えすることは困難」である場合は、通常の業務において集計していない理由及び集計に要する時間の見込みを示されたい。

(6) 二〇二一年に難民として認定された者のうち、いわゆる「新しい形態の迫害」に当たる者は含まれているか。含まれているのであれば、その人数及びどのような迫害を受けていたのかを明らかにされたい。

(7) 二〇二一年に難民として認定された者のうち、性的指向及び/又はジェンダー・アイデンティティを理由として難民と認定された者は含まれているか。含まれているのであれば、その人数及び「認定者の認定事由」のどれに当たるかを明らかにされたい。

(8) 二〇二一年に難民として認定された者のうち、不服申立てで「理由あり」とされた者(難民認定者)九人の国籍の内訳を示されたい。

3 一次審査について

(1) 二〇二二年五月に公表された「令和三年における難民認定者数等について」によれば、二〇二一年の一次審査の平均処理期間は約三十二・二月と、二〇一〇年以降最長を記録している。本来、難民認定申請は速やかに処理されるべきだが、処理期間が長期化している理由について、政府の見解を示されたい。

(2) 二〇二一年にD案件に振り分けられた千百四十五人のうち、現に有する在留資格(「短期滞在」及び別表第二の在留資格を除く。)に該当する活動を行わなくなった後に難民認定申請を行った又は出国準備のために在留を認められた期間に難民認定申請を行ったとされた者の数を示されたい。

4 審査請求について

 二〇二二年五月に公表された「令和三年における難民認定者数等について」によれば、二〇二一年に不服申立てに「理由あり」とされた者及び「理由なし」とされた者のうち、七百二十人に口頭意見陳述等期日が実施され、六千二十一人には口頭意見陳述等期日が実施されていない。また、口頭意見陳述等期日を実施しなかった者のうち、三千百九十八人が口頭意見陳述の申立てを放棄したとされている。

(1) 口頭意見陳述の開催を希望した審査請求人について、口頭意見陳述の機会を与えるか否かを、難民審査参与員以外が判断することはあるか。

(2) 二〇一六年九月九日に開催された難民審査参与員協議会の議事概要メモにおいて、「・・・行政不服審査法上では、本人から審査請求があると直ちに各班に割り振らなければならないとされているところ、二年先に手続開始の可能性があるものを現時点で各班に割り振るというのは効率的な運用の面で問題がある。そこで、臨時的措置として、難民認定制度に関する知識又は経験の豊富な参与員にお願いして、臨時的措置による臨時班を編制し、そこに形式的に案件を割り振り、具体的事案を見て早期案件か否か判断し、早期処理案件であれば臨時的措置による臨時班で早期処理を行い、早期処理案件に該当しなければ指名替えを行い、常設班への割振りを行うという形をとり効率的な処理を行っていきたいと考えている。」と当時の審判課長が述べているが、現在においても早期案件か否かの判断が「臨時班」においてされているか否か、現在は「臨時班」において判断されていない場合はいつまでされていたかを明らかにされたい。

(3) 二〇二二年四月二十一日時点の難民審査参与員百十八人のうち、「臨時班」に関与している難民審査参与員の人数を示されたい。

(4) 口頭意見陳述等の期日が実施されていない六千二十一人のうち、口頭意見陳述の開催を希望したにもかかわらず、口頭意見陳述等の期日が実施されなかった人数について、①合計及び所管地方局別の人数、②判断をした難民審査参与員の班がある事務局設置局別(東京・名古屋・大阪)の人数をそれぞれ示されたい。

(5) 口頭意見陳述等の期日が実施された七百二十人のうち、原処分庁への質問が申し立てられた件数、及びそのうち原処分庁が口頭意見陳述の期日に招集された件数を示されたい。

5 訴訟について

 難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、二〇二一年に提起された件数及び終局裁判がなされた件数をそれぞれ明らかにされたい。加えて、難民不認定処分の取消し若しくは無効が確定した後、又は、難民認定処分の義務付け訴訟で国側が敗訴した後、難民認定がなされず、在留資格が付与されなかったケースはあるか。あれば、その理由について、政府の見解を示されたい。

6 本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置の実施状況について

(1) 二〇二一年末時点で難民認定申請中のミャンマー人二千八百八十九人のうち、非正規在留者の百九十二人について、難民認定申請を行った年の内訳を明らかにされたい。

(2) 二〇二一年に複数回申請を行ったミャンマー人二百四十八人のうち、A案件及びC案件に振り分けられた者の数を明らかにされたい。

(3) 「人道的な配慮を理由に在留を認めた」とされるミャンマー人四百九十八人のうち、難民とは認定されなかった四百五十六人について、一年未満の在留資格が付与された者は含まれるか。四百五十六人に対して付与された在留資格の内訳と併せて明らかにされたい。

(4) 「人道的な配慮を理由に在留を認めた」とされるミャンマー人四百九十八人のうち、難民認定手続の結果が出ていない四十二人について、在留資格の内訳を明らかにされたい。

(5) 二〇二一年末時点で難民認定手続中かつ緊急避難措置に係る在留資格「特定活動」を有しているミャンマー人千七百三十人のうち、四十二人について「人道的な配慮を理由に在留を認めた」とした理由について、政府の見解を明らかにされたい。

(6) 二〇二一年五月に公表された「本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置」では、「難民認定申請者については、審査を迅速に行」うとされていた。二〇二一年末時点で難民申請中のミャンマー人の数は二千八百八十九人にのぼるが、迅速な審査が行われているといえる状況か、政府の見解を明らかにされたい。

二 空港等での庇護申請関係の統計について

 政府は二〇一五年九月から「難民の迅速かつ確実な庇護」を推進するための難民認定制度の運用の見直しを行っているという。空港は難民保護のまさに最前線であり、上陸審査時に難民認定申請を希望した者に適切に対処できているかどうかは、「難民を迅速に庇護」できているか否かを示す、重要な指標である。

1 二〇二〇年及び二〇二一年に一時庇護上陸許可を申請した者の数及び許可状況を国籍別に示されたい。

2 二〇一八年から二〇二一年の我が国の空港支局等における難民認定申請件数を、申請が行われた空港支局別(成田・羽田・中部・関西)及び福岡空港出張所について年別に示されたい。

3 二〇二二年五月に公表された「令和三年における難民認定者数等について」によれば、二〇二一年に仮滞在を許可した者は二十九人、仮滞在の許否を判断した人数は六百二十五人である。そのうち、空港支局等(成田・羽田・中部・関西空港支局及び福岡空港出張所)において仮滞在が許可された人数及び許可されなかった人数をそれぞれ明らかにされたい。

三 難民認定申請者の収容について

1 二〇二一年末時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数と、そのうち、難民認定申請中、審査請求中及び難民不認定処分の取消しを求める訴訟係属中の者の数をそれぞれ明らかにされたい。

2 二〇二〇年六月に公表された報告書「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」では、「仮放免を不許可とする場合及び仮放免の取消処分をする場合は、その理由をより具体的に告知するものとすることを検討すること」及び「一定期間を超えて収容が継続する場合にその要否を吟味する仕組み」を設けることを検討することを求めている。これらはそれぞれ法改正を要しない施策と考えるが、政府の見解を示すとともに、現在の検討状況を示されたい。

四 保護費の支給状況について

1 二〇二一年度(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間。以下四5まで同じ。)について、保護費を申請した者の数、保護費を受給していた者の数をそれぞれ明らかにされたい。

2 二〇二一年度に保護費を受給していた者の申請から受給決定までの平均待機期間、平均受給期間をそれぞれ示されたい。

3 二〇二一年に保護費を申請したが受給できなかった者の数、国籍の内訳、申請から結果が出るまでの平均待機期間を明示されたい。

4 二〇二一年度の難民認定申請者緊急宿泊施設(以下「ESFRA」という。)の利用者数を性別、国籍別に示されたい。また、保護費の申請からESFRAの利用開始までの平均日数、最短日数及び最長日数をそれぞれ示されたい。

5 二〇二一年度について、①保護費、②生活費、③住居費、④医療費のそれぞれの支給額を示されたい。また、二〇二一年度のESFRAの予算額及び執行額をそれぞれ示されたい。

五 「送還忌避者の実態」について

 二〇一九年十月に公表された「送還忌避者の実態について」で示した以下の事項について、二〇二一年末時点での統計を示されたい。

1 「送還忌避」被収容者について

(1) 退去強制令書の発付を受け、収容中の者の数

(2) 被収容者のうち送還を忌避する者の数及びその国籍の内訳

(3) 前記五1(2)のうち有罪判決を受けている者の数及び「犯罪の態様」の内訳

(4) 前記五1(2)のうち退去強制処分を複数回受けている者の数

(5) 前記五1(2)のうち仮放免中の逃亡や条件違反により仮放免が取り消された上で再収容されている者の数

(6) 前記五1(2)のうち難民認定申請を行ったことがある者の数及びその国籍の内訳

(7) 前記五1(2)のうち複数回の難民認定申請を行ったことがある者の数及びその国籍の内訳

(8) 前記五1(2)のうち退去強制令書の発付後に初めて難民認定申請した者の数及びその国籍の内訳

2 退去強制令書の発付を受け、仮放免中の者の数

3 二〇二一年末時点及び現時点で拒食継続中の者の数

六 難民認定制度のあり方について

1 二〇一四年十二月に公表された「難民認定制度の見直しの方向性に関する検討結果(報告)」は、「難民該当性に関する判断の規範的要素を、我が国でのこれまでの実務上の先例や裁判例を踏まえ、また、UNHCRが発行する諸文書、国際的な実務先例及び学術研究の成果なども参照しつつ、可能な限り一般化・明確化することを追求するべきである」と提言している。この「一般化・明確化」について、現在の検討状況及び今後の作業予定を示されたい。

 また、私が提出した「我が国における難民認定の状況に関する質問主意書」(第二百四回国会質問第八二号)に対する答弁書(内閣参質二〇四第八二号。以下「前回答弁書」という。)の「一の2の(7)」で「UNHCRの意見を聴くことを予定している」とされているが、現在までのUNHCRとの協議の状況を明らかにされたい。

2 法務省は、二〇一五年九月に公表した「難民認定制度の運用の見直しの概要」の5の(1)においていわゆる「新しい形態の迫害」を申し立てる者が難民条約の適用を受ける難民の要件を満たすか否かの判断に関して「難民審査参与員が法務大臣に提言をし、法務大臣がその後の難民審査の判断に用いるようにするための仕組み」を構築するとしている。

 この「仕組み」に関して、前回答弁書の「一の2の(6)」で「現在においても引き続き検討中」とされていたが、現在の状況を明らかにされたい。

3 二〇二〇年十二月に公表された第七次出入国管理政策懇談会による報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」は、「適正手続保障の観点から、代理人の立会いを認める範囲など、申請者の置かれた立場に配慮した一次審査における適切な事情聴取の在り方を検討する必要がある」としている。

 事情聴取における代理人の立会いは、難民認定審査の透明性や、難民認定申請者が安心して審査を受けることができる環境を確保するに当たり欠かせないと考えるが、政府の見解を示されたい。また、「代理人の立会いを認める範囲」に関する現在の検討状況を明らかにされたい。

4 二〇二〇年十二月に公表された第七次出入国管理政策懇談会による報告書「今後の出入国在留管理行政の在り方」は、「行政の公正性や適正性を維持する観点から、難民認定業務の専門性・独立性をより高めるために、その組織の在り方について検討することを求めたい」としている。

 公平・中立な難民認定審査を行うに当たり、独立性を有する組織の設置は必須と考えるが、政府の見解を示されたい。また、「難民認定業務の専門性・独立性をより高めるため」の「組織の在り方」に関する現在の検討状況を明らかにされたい。

5 二〇二一年七月に行われた、UNHCRとの協力覚書の交換において、「難民調査官等への研修についての協力」の継続が施策の例に挙げられている。国際基準を踏まえた難民認定審査を行うためにUNHCRによる研修は欠かせないと考えるが、政府の見解を示すとともに、UNHCRの研修を受けることがないままに、入国審査官が難民調査官に指定されることはあるか、明らかにされたい。

 また、二〇二二年四月一日現在の難民調査官に指定されている者の数及び難民調査官に指定されてからの平均期間を明らかにされたい。

  右質問する。