質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第四八号

立法不作為等に係る訴訟への対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年五月十八日

吉川 沙織


       参議院議長 山東 昭子 殿



   立法不作為等に係る訴訟への対応に関する質問主意書

 私が提出した「立法不作為等に係る訴訟への対応に関する質問主意書」(第二百七回国会質問第二号)に対する答弁書(内閣参質二〇七第二号。以下「前回答弁書」という。)を踏まえ、改めて質問する。

一 前回答弁書の「二について」において、立法不作為等に係る訴訟について事件を受理した旨を法務省が衆議院及び参議院に対して通報する際、「訴状等の写しその他の資料」を添付している旨の答弁があった。ここにいう「訴状等の写しその他の資料」とは具体的に何か明らかにされたい。個別具体的な事案によって添付する「訴状等の写しその他の資料」が異なる場合には、代表的なものを挙げるなど、誠実に答弁されたい。

二 前回答弁書の「三及び四について」において、令和元年度以降に提起された立法不作為等に係る訴訟の件数及びそのうち法務省が衆議院及び参議院に対して通報したものの件数について、通常の業務において集計していないことを理由に挙げて、答弁は困難であるとされた。しかし、政府が挙げるこの理由は、政府が通常の業務において集計していない件数等については一律に調査を拒絶し、答弁しないということを宣言しているに等しく、国会議員の質問権を著しく侵害するものであって、容認することはできない。そもそも内閣には質問に対して答弁する義務があり、集計作業に時間がかかる等の理由により質問主意書を受け取った日から七日以内に答弁することができない場合には、答弁することができる期限を明示した上で、答弁を延期することができる。政府は、「調査に膨大な時間を要するため、お答えすることは困難である。」との定型の答弁をすることもあるが、本件については、衆議院及び参議院側が把握している通報の件数に鑑みれば、令和元年度以降の期間に立法不作為等に係る訴訟の件数が膨大に存在するとは考えにくい。

 以上を踏まえ、改めて質問する。令和元年度以降に提起された立法不作為等に係る訴訟の件数及びそのうち法務省が衆議院及び参議院に対して通報したものの件数を年度ごとに明らかにされたい。

三 前回答弁書の「二について」及び「五について」において、立法不作為等に係る訴訟が提起された場合には事件を受理した旨を衆議院及び参議院に通報している一方、立法不作為等に係る訴訟の判決が言い渡された場合には、「必要があるとき」に限り、判決が言い渡された旨を衆議院及び参議院に通報している旨の答弁があった。事件を受理した場合と判決が言い渡された場合とで、衆議院及び参議院への通報の態様に差異があるが、その理由を明らかにされたい。また、立法不作為等に係る訴訟の判決が言い渡された場合において、どのようなときに衆議院及び参議院への通報をしないこととするのか明らかにされたい。

四 前回答弁書の「十一について」において、立法不作為等に係る訴訟について国が上訴した場合、「必要があるときは、衆議院及び参議院に対し、控訴状等の写しを添付して、上訴した旨を通報している。」との答弁があった。この場合、「必要があるとき」に限っている理由を明らかにされたい。また、どのようなときに衆議院及び参議院への通報をしないこととするのか明らかにされたい。

五 立法不作為等に係る訴訟の判決が言い渡された場合又は立法不作為等に係る訴訟について国が上訴した場合において、衆議院及び参議院への通報を「必要があるとき」に限るのではなく、必ず通報することとしたとき、法務省その他関係機関の事務執行上、支障が生じることとなると考えられるか明らかにされたい。支障が生じることとなると考えられる場合、どのような支障であるか具体的に挙げられたい。

六 前回答弁書の「六について」において、立法不作為等に係る訴訟が国に不利益な裁判によって終了した場合に衆議院及び参議院に対し上訴の提起に関する意見を求めることについて、法務局及び地方法務局訟務処理細則第三十四条第七項によるときは必ず意見を求めるのに対し、訟務局訟務処理準則第二十八条第三項によるときは、「必要があるとき」に限り、意見を求めることとしている旨の答弁があった。このように、上訴の提起に関し意見を求めることについて態様に差異がある理由を明らかにされたい。また、後者による場合、どのようなときに衆議院及び参議院に対し意見を求めないこととするのか明らかにされたい。

七 前回答弁書の「六について」において、法務省が衆議院及び参議院に対し上訴の提起に関する意見を求めている趣旨は「上訴の要否を判断するため」であることが明らかにされた。しかし、上訴期間は判決正本が送達された日の翌日から起算して二週間であり、法務省から衆議院及び参議院への上訴の提起に関する意見照会の期間はさらに短くなる。この短い期間では上訴の要否について明確な判断をすることが難しく、衆議院及び参議院が意見照会への回答を留保する要因の一つとなっているように見受けられる。

 そこで、立法不作為等に係る訴訟について、衆議院及び参議院において上訴の要否に係る検討を前広に行えるよう、事件を受理した旨の通報をする際に法務省が添付する資料の充実、判決言渡し時及び上訴時における通報の確実な実施、審理状況の随時報告など、法務省から衆議院及び参議院に対する情報提供等の充実強化を図るべきと考えるが、見解を明らかにされたい。

  右質問する。