質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第三六号

LNGの安定的確保と都市ガス供給事業の拡充支援に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年四月十三日

矢田 わか子


       参議院議長 山東 昭子 殿



   LNGの安定的確保と都市ガス供給事業の拡充支援に関する質問主意書

一 ガスシステム改革のこれまでの評価について

 ガスシステム改革は、令和四年四月からの導管部門の法的分離によって節目を迎えたことになるが、これまでの改革プロセスにおいて、改革の目的である(1)天然ガスの安定供給の確保、(2)ガス料金の最大限抑制、(3)利用メニューの多様化と事業機会拡大、(4)天然ガス利用方法の拡大、といった課題についての検証が必要と考える。電気事業法等の一部を改正する等の法律(平成二十七年法律第四十七号)附則第七十五条第一項は、「政府は、第五条及び第六条の規定による改正後のガス事業法の施行の状況並びにガス事業に係る制度の抜本的な改革に係るエネルギー基本計画に基づく施策の実施の状況及びガスの需給の状況、ガスの小売に係る料金の水準その他のガス事業を取り巻く状況について検証を行うとともに、その結果を踏まえ、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とし、法的分離後五年以内に施行状況等について検証を行うことになっているが、各事業者による取組経過とあわせ、政府としてこれまでの改革の成果をどのように評価しているのか、明らかにされたい。

二 国際紛争によるLNG供給状況の変化への対応について

 ロシアのウクライナ侵攻による西側諸国の制裁措置やロシア側の対抗措置により、国際的にLNGの需給構造が大きく変化し、我が国としてもLNGの調達難や価格高騰の事態に直面することが予想される。都市ガス供給事業では「原燃料費調整制度」によって原料費の価格変動を反映する仕組みがあるが、事業者によっては上限が設定されている場合があり、今後もLNGの価格高騰が続けば、都市ガス事業者の経営を大きく圧迫する要因になりかねない。一方で、上限が設定されていない場合には、今後のLNG価格高騰に応じて、需要家の負担増も懸念される。現在、政府は、原油高騰対策として石油元売り企業に補助金を支給し、小売価格を抑制する施策を講じているが、同様に、LNGに対してもこのような支援対策を講じることを検討する意思はあるか、見解を述べられたい。

三 都市ガス・LPガスにおける温室効果ガスの排出量抑制について

1 二〇三〇年目標におけるLNGの活用支援について

 昨年十月に閣議決定された「第六次エネルギー基本計画」では、二〇三〇年における温室効果ガスの排出量四十六%削減(二〇一三年比)という目標を踏まえ、天然ガス・LPガスの普及が重要施策の一つとして位置付けられた。日本における消費エネルギーのうち、産業部門や民生部門における「熱需要」が約六割を占めているが、この部門での天然ガスの活用拡大は温室効果ガスの排出量の削減に大きく寄与することなる。二〇三〇年の目標達成に向け、エネルギー利用者の天然ガス転換を促すためのインセンティブ型の政策の拡充が求められるが、今後の政府としての対応方針を明らかにされたい。

2 インフラの整備・拡充に対する支援について

 低炭素化を推進していくためには、天然ガスの安定的な供給や市場環境の整備等のため、導管の整備拡充が求められる。また、二〇五〇年のカーボンニュートラル社会の実現に向けては、既存導管の活用が期待されている。他方、導管整備には相当程度の建設費用や建設期間を要するとともに、埋設する場所の地権者との調整も必要となり、事業者にとって導管整備は大きな負担となる中で、導管網の拡大のための投資が今後行われるかどうかは、不透明である。海外では、国が調査費を負担したり、建設費に対する利子補給などの支援措置の事例が見られるが、今後、産業インフラとしての導管の保守・拡張、政府としていかなる支援策を講じるのか、明らかにされたい。

3 合成メタンの実装化への支援策について

 二〇五〇年のカーボンニュートラルの目標を展望すれば、ガスの脱炭素化においては、水素と工場や発電所から排出される二酸化炭素を反応させて合成メタンを製造する「メタネーション」が有力な手段として位置付けられている。現在、この合成メタンの開発にむけて、各事業者において技術開発・実証事業が進められているが、実用度の高い合成メタンを開発するためには、技術開発・社会実装への支援の強化が必要であり、あわせて将来的に各事業者が過度の負担を強いられることなく合成メタンを導入できるよう、国としての支援策の拡充が求められるが、政府として合成メタンの技術開発・社会実装に関する方針を明らかにされたい。

四 分散型エネルギーシステムの普及促進について

1 分散型システムの構築における省庁間、国と地方間の連携強化について

 今後、低・脱炭素化に向けてエネルギーの分散型システムの普及拡大がますます重要になると考える。エネルギーの分散型システムの構築には、再生可能エネルギーやコージェネレーションを主とした発電システムの整備とともに、マイクログリッド、大型蓄電システム、スマートシティなどのインフラ整備や地域の再開発が必要となるが、このためにも経済産業省、環境省、国土交通省のみならず、地方公共団体の事業を所管する総務省等の省庁間連携が不可欠である。地域経済の活性化やエネルギー面での強靭化にも資する分散型システムの構築にむけた実証実験を含め、これら省庁の連携のもとに政府としていかなる支援策を講じていくのか、今後の方針を明らかにされたい。

2 家庭用燃料電池の普及策について

 家庭用燃料電池は、エネルギーの分散型システムの推進と温室効果ガスの排出抑制に大きく寄与する発電機器として位置づけられる。この普及拡大においては市場価格の引き下げが重要な要素となっているが、政府の関係審議会においては、「今後、部品点数の削減など、二〇二四年までに八十万円以下を目指す」との説明がなされている。この目標の実現に向け、製造事業者等に対し、政府としてどのような具体的支援策を講じようとしているのか、明らかにされたい。

五 天然ガスの自主資源開発における支援策について

 中国をはじめアジア各国のLNG需要が拡大し、LNGの確保をめぐる国家間の競争が一段と激しくなる中、資源の自主開発や資源外交の重要性がますます高まっている。「第六次エネルギー基本計画」においては、国産を含む石油・天然ガスの自主開発比率を二〇一九年度の三十四・七%から二〇三〇年度に五十%以上、二〇四〇年度に六十%以上に引き上げるとの目標が掲げられているが、今後の自主開発にあたってはJOGMECによるリスクマネーの供給等のみでは十分とは言えない。また、ロシアのウクライナ侵攻に関わり「サハリンⅡ」からのシェル撤退問題に見られるように、自主資源開発には様々なリスクが伴ってくるものと考えられるが、石油・天然ガスの自主資源の開発に関する資金提供やリスク管理のあり方について政府の方針を明らかにされたい。

  右質問する。