質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第二八号

在日ウクライナ大使館が募集した義勇兵と刑法第九十三条に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年三月十五日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   在日ウクライナ大使館が募集した義勇兵と刑法第九十三条に関する質問主意書

 在日ウクライナ大使館は、先日、日本国内においてロシア侵略に対する義勇兵を募集したが、この義勇兵に応募することが刑法第九十三条に触れるかどうかが話題となった。しかし、刑法第九十三条は送検事例がある程度で、正式裁判になったことがなく、学説でも議論が分かれるところである。そこで、この機に政府の見解を伺いたく、以下質問する。

一 刑法第九十三条の「私的に戦闘行為をする目的」の解釈について

1 「私的に」とは、日本政府の国権の発動・命令によらずに、という意味か。それとも、外国政府の国権の発動・命令があれば「私的に」という要件から外れるか。もし、外国政府の国権の発動・命令による戦闘行為をする目的の準備行為まで「私的に」という要件に該当するとなると、外国人が、自身の国の国権の発動・命令による戦闘行為をする目的の準備行為を日本政府が取り締まることとなるから、外交上問題となったり、外国人の兵役逃れに悪用されたりしないか。政府の見解如何。

2 前記一の1に関し、「私的に」という要件が日本政府の国権の発動・命令によらないものに限定される場合、在日ウクライナ大使館による義勇兵募集は間違いなく本罪の構成要件を満たすが、そのことをもって、在日ウクライナ大使館及びウクライナ政府に制裁を加えることは、ウクライナが置かれた状況を斟酌すればあまりに無慈悲というべきである。駐日ウクライナ大使には、外交関係に関するウィーン条約第三十一条第一項の刑事裁判権の免除が及ぶか。

二 「戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者」とは、組織的である必要があるか。それとも、一人であっても、「戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀」をすれば足りるか。

三 大日本帝国政府は、過去、私戦行為そのものを罰しないこととした。その理由として「然るに外国に対し私に戦端を開くという事実は想像に浮んで来ないのでございます。皆外国へ行って向こうの土地で戦争をするということでありますれば、むしろ向こうの国の犯罪になりはしないかという考えを持ったのであります。日本内地に居ってこの行為を為すことはほとんど出来得る場合が無いものではあるまいかという考えでございます。そこで原案では日本内地においてなされるだけの行為を禁じた方が穏当であろう、しかのみならずこれは外患罪という性質ではあるまい、むしろ交信を破る性質の犯罪であろうというのでここに規定した次第であります」との旨を当時の政府委員が答弁しているが(第十六回帝国議会貴族院刑法改正案特別委員会議事速記録第九号百三十二頁)、刑法第九十三条にいう「外国に対して私的に戦闘行為をすること」そのものは、現行の日本国内法においても何ら罰されないという認識でよいか。そうだとすると、日本において刑法第九十三条に触れる行為をすることなく、ポーランド行きの航空券を買って、ポーランドにおいて戦闘準備をし、ポーランド経由でウクライナに入国して、ウクライナの義勇兵に参加する行為を取り締まる法律は、現行の日本国内法上存在しないと考えるが、政府の見解如何。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。