質問主意書

第208回国会(常会)

質問主意書

質問第一八号

福島県民健康調査「甲状腺検査」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和四年二月二十四日

足立 信也


       参議院議長 山東 昭子 殿



   福島県民健康調査「甲状腺検査」に関する質問主意書

 福島第一原子力発電所事故後に行われている福島県民健康調査「甲状腺検査」(以下「甲状腺検査」という。)は現在五巡目が行われているが、現在まで二百五十名を超える甲状腺がんもしくはがん疑いが報告されている。この件について福島県「県民健康調査」検討委員会は検査二回目までの結果の取りまとめとして、放射線の影響とは考えにくいとしており、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)二〇二〇報告書においては、福島の住民の放射線被ばくの健康影響は今後も考えられないこと、事故当時の子どもたちの甲状腺がんと被ばくの関連性は認められないこと、感度の非常に高い超音波機器によるスクリーニングを行ったことが原因と考えられること、過剰診断が生じている可能性があることを指摘している。このような状況下で現在もなお行われている甲状腺検査について、以下質問する。

一 過剰診断はスクリーニングにおいて最も重大な不利益であり、過剰診断の可能性が指摘されている状況でスクリーニングを継続することは、対象者に大きな不利益をもたらすため倫理的な問題が生じるが、このことに対する政府の見解を示されたい。

二 第四十一回「県民健康調査」検討委員会で報告されているように、福島県が行った「甲状腺検査対象者及び関係者への聞き取り結果」では、対象者や保護者が検査の不利益を知らないことが報告されたが、その後、どのような対策を行ったのか、また対策が十分取られるまでは一時的に検査を見合わせるべきではないか、政府の見解を示されたい。

三 新しく作成された福島県の甲状腺検査の対象者に対する検査のメリット・デメリットの説明の中には「将来的に症状やがんによる死亡を引き起こさないがんを診断し、治療してしまう可能性があります」という過剰診断・過剰治療を想定したと思われる記載があるが、過剰診断の具体的な不利益の説明は全くなく、対象者やその家族が不利益を正しく理解できていないことが懸念されるが、過剰診断の不利益がどの程度周知された上で検査が行われていると考えているのか、政府の見解を示されたい。

四 甲状腺検査は福島県内の小学校・中学校・高等学校に通学している児童生徒については学校の授業中に検査が行われているが、受診に対し同調圧力が加わる可能性がある。任意の検査であるならば早急に学校検査を中止すべきと考えるが政府の見解を示されたい。

五 甲状腺検査によって診断された甲状腺がんの原因の一部に放射線被ばくがあろうがなかろうが、あるいは過剰診断がどの程度生じていたとしても、福島県では多くの子どもや若年者が甲状腺がんと診断される結果に至っており、これは甲状腺検査というスクリーニングによるものであることは明確であるので、検査を実施した福島県だけでなく資金を提供した政府も、診断によって生じる当事者の不利益に責任を有すると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。