質問主意書

第207回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二〇七第五三号
  令和四年一月七日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出長野県松本市のペット繁殖業者による虐待案件と改正動物愛護法の施行状況に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出長野県松本市のペット繁殖業者による虐待案件と改正動物愛護法の施行状況に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の事件については、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号。以下「動物愛護管理法」という。)及び知事の権限に属する事務の処理の特例に関する条例(平成十一年長野県条例第四十六号。以下「事務処理条例」という。)に基づき、長野県及び松本市が御指摘の動物取扱業者の指導及び監督を行ってきたところ、同県において、現在、同県が動物愛護管理法に基づき行った対応等の事実関係、評価及び改善策について整理を行っているところと承知している。

二の1について

 環境省は、動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第三十九号。以下「改正法」という。)による改正後の動物愛護管理法第二十一条第一項の規定の令和三年六月一日の施行に先立って、同項の規定に基づき第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令(令和三年環境省令第七号。以下「飼養管理基準」という。)を同年四月一日に公布した。

 改正法による動物愛護管理法の改正内容及び飼養管理基準については、同日付けで、都道府県知事等に対し、「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(通知)」(令和三年四月一日付け環自総発第二一〇四〇一一〇号環境省自然環境局長通知)を発出し、この中で、「基準を満たさない不適切な状態を放置し、速やかに改善する意志がないような悪質な事業者に対しては、勧告、命令、取消処分、刑事告発といった手段を効果的に活用するといった厳格な対応を図ることが重要である」と通知した。

 また、都道府県等が飼養管理基準を運用するに当たっての技術的助言として、同年五月二十五日付けで、都道府県知事等に対し、「「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針~守るべき基準のポイント~」の策定について(通知)」(令和三年五月二十五日付け環自総発第二一〇五二五一号環境省自然環境局長通知)を発出し、この中で、「特に不適切な飼養及び保管を行っている事業者に対しては厳格な対応を図られるよう」要請した。

 さらに、御指摘の事件に係る動物愛護管理法第二十四条第一項及び事務処理条例に基づく松本市保健所による立入検査並びに長野県警察による捜査が行われたことを受けて、同省担当者から都道府県等の担当者に対し、電子メールにより動物取扱業者への厳格な対応につき周知を行った。

 都道府県知事等による動物取扱業者に対する指導及び監督が徹底されるよう、引き続き都道府県等に対して必要な技術的助言を行ってまいりたい。

二の2について

 お尋ねの「自治体における動物虐待の対応人員など」の意味するところが必ずしも明らかではないが、環境省が令和二年及び令和三年に実施した調査によると、都道府県等において動物愛護管理行政に従事する職員の数は、令和二年三月三十一日時点においては四千六百十四名、令和三年三月三十一日時点においては四千六百八十四名となっており、一年間で七十名増加している。

三について

 第一種動物取扱業を営もうとする者は、動物愛護管理法第十条第一項に規定する都道府県知事等の登録を受けなければならないところ、都道府県知事等は、動物愛護管理法第十二条第一項に基づき、当該者が同項に規定する登録の拒否事由に該当するときは、登録を拒否しなければならないとされている。また、登録後においても、第一種動物取扱業者は、飼養管理基準又は動物愛護管理法第二十一条第四項に基づき条例により定められた基準を遵守する義務を負うところ、都道府県知事等は、第一種動物取扱業者がこれらの基準を遵守していないと認めるときは、動物愛護管理法第二十三条第一項に基づく勧告等をすることができるとされ、また、第一種動物取扱業者が一定の事由に該当するときは、動物愛護管理法第十九条第一項に基づき登録の取消し等ができることとされている。

 まずは、これらの制度の適切な運用により動物取扱業の適正化が図られるよう、引き続き都道府県等に対して必要な技術的助言を行ってまいりたい。

四について

 過去三年間における警察による動物愛護管理法第四十四条の規定に基づく動物虐待事犯の検挙件数は、平成三十年が八十四件、令和元年が百五件、令和二年が百二件である。

 また、過去三年間における都道府県等による動物愛護管理法に基づく立入検査の件数は、平成三十年度が二万四千九百五十二件、令和元年度が二万五千四百七十三件、令和二年度が二万千七十八件である。

五について

 御指摘の「事前連絡なしの立入検査」については、都道府県等向けに作成した「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針~守るべき基準のポイント~」(令和三年五月環境省作成)において、「検査の実効性を高めるためには、事前の連絡を行わずに抜き打ちでの検査を実施することが有効な場合もあり、法はこれを否定していないことにも留意すること」と記載し、その有効性について周知を図っている。

 都道府県知事等による動物取扱業者に対する指導及び監督が徹底されるよう、引き続き都道府県等に対して必要な技術的助言を行ってまいりたい。

六について

 お尋ねについては、捜査中の事件に関わることであるため、お答えを差し控えたい。