質問主意書

第207回国会(臨時会)

答弁書

内閣参質二〇七第二一号
  令和三年十二月二十八日
内閣総理大臣 岸田 文雄


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員福島みずほ君提出再処理工場の高レベル廃液重大事故を防ぐためにIAEA基準を尊重し再審査を求めることに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出再処理工場の高レベル廃液重大事故を防ぐためにIAEA基準を尊重し再審査を求めることに関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「第十五回チーム会合」の資料四において「再処理施設の災害対策上のハザード」として「大容量液体貯槽の破裂(蒸発乾固)」と記載したのは、日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)が、その再処理事業所再処理施設(以下「六ヶ所再処理施設」という。)におけるハザード評価の実施に当たって仮定した「蒸発乾固」、「水素爆発」等の重畳が、「IAEA SAFETY STANDARDS SERIES No. GS-G-2.1(2007)」(以下「IAEA安全指針」という。)において再処理施設で発生した場合に施設の敷地外に影響を及ぼし得る事象とされている「大容量液体貯槽の破裂」に相当する事象であったためであり、IAEA安全指針において「蒸発乾固」が「大容量液体貯槽の破裂」に相当する事象とされているかのような趣旨ではない。

 また、IAEA安全指針では、「大容量液体貯槽の破裂」を、再処理施設の災害対策上の脅威の例として記載しており、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第四十四条の二第一項第二号に規定する重大事故として想定することは求めていない。

二について

 御指摘の「蒸発乾固」は、海外の事例も参考に、設計上定める条件より厳しい条件の下において発生する事故であることから、「セル内において発生する臨界事故」等とともに、使用済燃料の再処理の事業に関する規則(昭和四十六年総理府令第十号)第一条の三に定める重大な事故(以下「重大事故」という。)の一つとして規定したものである。

 また、お尋ねの「大容量液体貯槽の破裂」を重大事故に「設定しなかった理由」は、再処理施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成二十五年原子力規制委員会規則第二十七号。以下「事業指定基準規則」という。)及び「再処理施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(平成二十五年十一月二十七日原子力規制委員会決定。以下「事業指定基準規則解釈」という。)において、重大事故が単独で、同時に又は連鎖して発生することを想定することとしており、重大事故に起因して「大容量液体貯槽の破裂」が発生する可能性も含めて重大事故対策を確認するものであるからである。

三の1から3までについて

 御指摘の「IAEA安全指針の表四」は、「IAEA SAFETY STANDARDS SERIES No. GSR PART 7(2015)」(以下「IAEA安全要件」という。)の定義する原子力及び放射線に関連する施設等の適切な脅威区分(以下「脅威区分」という。)を判断するためには、同表の掲げる基準によることに限らず、施設固有の解析を実施できるとしている。そのため、同表中の「施設及び行為の緊急事態脅威区分を判断するために推奨される基準」に基づく判断は必ずしも必要ではないと考えられる。

 お尋ねの「六ケ所再処理工場の脅威区分」については、日本原燃の実施した施設固有の解析に基づくハザード評価の結果を確認し、IAEA安全要件に照らして脅威区分Ⅱに該当すると判断したものである。

 また、御指摘の「IAEA安全指針の二.六」の記載は、施設の敷地外で重篤な確定的影響が生じるような脅威は大型の原子炉や再処理施設などに限定されるであろうという趣旨であり、全ての再処理施設が脅威区分Ⅰに該当するとした記載ではないと認識している。

三の4について

 日本原燃の実施した六ヶ所再処理施設の施設固有の解析に基づくハザード評価において、仮定されている「蒸発乾固」、「水素爆発」等の重畳がIAEA安全指針における「大容量液体貯槽の破裂」に相当する事象であり、「蒸発乾固」に係る評価が「大容量液体貯槽の破裂」の評価を代替したものではないことから、同ハザード評価が「恣意的な過小評価」であるとの御指摘は当たらないものと考えている。

 脅威区分の判断については、IAEA安全要件等を踏まえて実施している。

四について

 原子炉等規制法第四十四条の四第一項の規定に基づき、日本原燃から平成二十六年一月七日付けでなされた、再処理事業に係る変更の許可を求める申請に対する審査においては、事業指定基準規則及び事業指定基準規則解釈に基づき、高レベル放射性液体廃棄物(以下「高レベル廃液」という。)等の沸騰を未然に防止するための対策、高レベル廃液等の沸騰を未然に防止できなかった場合に乾燥及び固化に至ることを防止するための対策並びに高レベル廃液等の温度を低下させ沸騰しない状態を維持することで事態を収束させるための対策が有効に機能し、乾燥及び固化に至らないことを確認していることから、御指摘の「蒸発乾固後の揮発や爆発の対策」については対象としていない。