質問主意書

第207回国会(臨時会)

質問主意書

質問第五三号

長野県松本市のペット繁殖業者による虐待案件と改正動物愛護法の施行状況に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十二月二十一日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   長野県松本市のペット繁殖業者による虐待案件と改正動物愛護法の施行状況に関する質問主意書

 千匹もの犬を劣悪な環境で飼っていた長野県松本市のペット繁殖業者が動物の愛護及び管理に関する法律違反の疑いで逮捕された。狭いケージ内で排せつ物は垂れ流されたままで、病気やけがの処置もされず、餌は二日に一回しか与えられないなどの虐待や、滅菌・麻酔なしの帝王切開を行い、死んだ犬は弁当ゴミと一緒に処理するなど、信じがたい行為が報告されている。この虐待案件は、繁殖業者の動物の命に対する意識の欠如と、行政の怠慢が、前代未聞の大きな悲劇を生んだとも評されている。

 今回の事件の背景も含め、二〇一九年に改正された動物の愛護及び管理に関する法律(以下「改正動物愛護法」という。)の施行状況について、以下のとおり質問する。

一 これだけひどい状況であるにもかかわらず、今回のペット繁殖業者は、環境省令に基づく改善勧告や命令、登録取消しの対象ではなく、三十年もの長きにわたって営業を継続していた。なぜこのような劣悪なペット繁殖業者が長く営業を続けることができたのか。

二 悪質なペット繁殖業者の排除や飼育環境の改善を目的に二〇一九年に改正動物愛護法が成立した。二〇一九年の改正を受け、今年六月に施行された環境省令では、数値等を盛り込んだ上限規制が設けられた。改正動物愛護法の一部は経過措置の対象となっており、第一種動物取扱業に関する完全施行は二〇二四年六月となる。環境省は経過期間中であっても、「基準との乖離が大きい事業者に対しては集中的に指導などを行うこと」と説明しているとのことであるが、今回の事件を防げなかった。

 せっかくの法律や環境省令も、実際に現場を担当する地方自治体が適切に運用しなければ意味がないものになってしまう。

1 環境省は、全国の自治体に対し、改めて環境省令の内容を通知し、積極的な措置を促すべきではないか。

2 二〇一九年の改正及びそれに引き続く環境省令の策定を受けて、自治体における動物虐待の対応人員などの増員はどの程度なされているか。

三 二〇一九年の改正及びそれに引き続く環境省令の策定過程で、八週齢規制や数値基準などを設けただけではなく、悪質なペット繁殖業者に対して厳格な運用を行う、いわゆる「レッドカード基準」が国の姿勢として示された中で、今回の事件が発生した。

 この現状に対し、現在は登録制で誰でもできる状態のペット繁殖業について、許可制の導入を入口規制として検討すべきという意見がある。政府の見解を示されたい。

四 ここ数年の動物虐待事件の件数と、動物の愛護及び管理に関する法律違反に関する立入検査の件数の推移を明らかにされたい。

五 長野県の対応は「年一回の定期的な立入検査」程度にとどまっていた。しかも、事前通告ありの立入検査であり、業者側は、施設に立入検査が入る日時があらかじめ分かっていたとされる。今後、立入検査に際して、事前連絡なしの立入検査を積極的に行うよう、自治体に促すべきではないか。

六 松本市やその関係者によると、立入検査の後に約千匹の犬の大半が埼玉県内の関係業者に移送されたという。なぜ、警察の捜査中にもかかわらず、被害にあった犬達の移動、所有権が移動できてしまうのか、理由を示されたい。あわせて、政府の認識を示されたい。

  右質問する。