質問主意書

第207回国会(臨時会)

質問主意書

質問第五〇号

労働関係法制における「過半数代表者」をめぐる諸課題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十二月二十一日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   労働関係法制における「過半数代表者」をめぐる諸課題に関する質問主意書

 多くの労働関係法制では、事業場等の労働者の過半数の支持を得た主体(以下「過半数代表」という。)が各種の機能を担うこととされている。例えば、労働基準法(以下「労基法」という。)第三十六条第一項では、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合(以下「過半数労働組合」という。)、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者(以下「過半数代表者」という。)について規定されている。

 過半数代表は様々な機能を担うこととされているが、従業員の雇用や労働条件との関係では、まず、労使協定の締結、すなわち、法定最低基準を下回る労働条件設定を合法化する機能を担うこととされている。

 また、労働条件決定過程に関与するという重要な機能も併せて担っている。さらに働き方改革等を経て、過半数代表の重要性は増大しており、今日過半数代表の関与を予定している規定は、百十以上存在するとされる。

 この過半数代表をめぐる諸課題について、以下のとおり質問する。

一 過半数代表が現に担っている重要な機能の一つは、法定最低基準を下回る労働条件設定の合法化機能である。こうした法規範からの逸脱は、国家による労働条件の基準設定の責務(日本国憲法第二十七条第二項)に基づき、あるいは、労働契約における労働条件対等決定の基本理念(労基法第二条第一項、労働契約法第一条及び同法第三条第一項等)に照らして、事業場等に労働組合が存在しない場合を含め、労使による対等決定をできるだけ可能とするよう、制度設計を行うべきと考えるが、政府の認識を伺う。

二 過半数代表者の選出手続の基本的な視点としては、(1)当該事業場の労働者に選任の機会が与えられていること、(2)民主的な手続がとられていることの二点が重要となる。つまり、民主的正当性を担保する適正な方法での選出が求められる。実際、労働基準法施行規則(以下「労基則」という。)第六条の二第一項第二号にも、「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者」とある。

 しかしながら実態としては、特に中小企業等の規模の小さな企業において、多くのケースで、使用者の指名、親睦会の代表者が自動的に過半数代表者になるなどの方法で選出されているとの指摘がある。

 過半数代表者の選出について、法で求められる民主的な選出に疑義が呈された事例について、労働基準監督署がその指導や相談の中で取り扱った件数を明らかにされたい。

三 過半数代表者が民主的に選出されない場合、使用者にはどのようなマイナスがあるか。過半数代表者の民主的な選出について、使用側のインセンティブが働くかという視点も合わせ、回答されたい。

四 重要と考えられる機能が現に認められているにもかかわらず、過半数代表については、特に、過半数労働組合が存在しない場合にこれらの機能を担う過半数代表者に関しては、職場の従業員を適正に代表するための制度的保障はほとんどない、との指摘が有識者からなされている。

1 この指摘に対する政府の認識を示されたい。

2 過半数代表者によって代表される従業員の意見を反映・集約する機会と仕組みは法制度上予定されているか。

3 過半数代表者の効果的な活動及び独立性は、どのように保障されるか。

五 選出された過半数代表者は、組織のサポートもない単独状態が普通であるが、政府はこうした者が的確に使用者と対等な立場で対峙できると想定しているのか。

六 労基則第六条の二第三項は「使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と規定している。この条項は強行規定か。実際に不利益な取扱いを行った場合には、どのような取扱いとなるか。

七 労基則第六条の二第四項に「使用者は、過半数代表者が法に規定する協定等に関する事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならない」とあるが、この「必要な配慮」とは具体的に何を示しているか。

八 政府は、現状この過半数代表者により、従業員の意思が適正に反映されていると考えているのか。政府の認識を示されたい。

  右質問する。