質問主意書

第207回国会(臨時会)

質問主意書

質問第三二号

女性のさらなる活躍に貢献することが期待される低用量ピルの普及に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十二月十七日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   女性のさらなる活躍に貢献することが期待される低用量ピルの普及に関する質問主意書

 バイエル薬品株式会社が発表した「日本人女性における月経随伴症状に起因する日常生活への負担と社会経済的負担に関する研究結果」によると、月経随伴症状などによる社会経済的負担は、通院費用九百三十億円、OTC医薬品費用九百八十七億円、労働損失四千九百十一億円と年間六千八百二十八億円にのぼり、労働損失(会社を休む、労働量・質の低下)が約七十二%を占めている。女性の健康に関する社会的な問題についてはその認知度が徐々に高まりつつあるが、二〇一九年三月の経済産業省ヘルスケア産業課による「健康経営における女性の健康の取り組みについて」によると、企業における女性の健康課題に対する対応については、「女性向けのサポート整備状況について、女性活躍の流れによりワークライフバランス関連の取り組みは比較的進んでいるが、女性特有の健康課題に対する取り組み(リテラシー向上施策や相談窓口等)は制度整備状況や認知度が低いことがわかった」とのことである。

 この女性の健康課題のうち、月経不順やPMS(月経前症候群)等、月経困難症等と診断されない場合の月経随伴症状の対策の一つとして低用量経口避妊薬(いわゆる低用量ピル)が挙げられる。低用量ピルには避妊効果が良く知られているが、それだけでなく、PMSの改善や、月経痛、月経過多の改善といった効果も期待できる薬である。また、卵巣がんや子宮体がんのリスクを下げる効果も期待できる。低用量ピルには血栓症などの副作用があり、それに対する注意は必要であるものの、正しい理解の下での服用によって前述のような効用により、女性の活躍に大いに貢献することが期待される。

 また、国連が発行している「避妊法二〇一九」のデータによると、日本のピル内服率は二・九%とのことである。十%から三十%台の内服率である欧米諸国に比べると、日本での内服率は極めて低く、このようなことから日本をピル後進国とする指摘もされている。しかし、日本でその普及が進めば、女性の活躍が一層進んで社会に寄与する部分が大きくなると考える。この低用量ピルについて、以下質問する。

一 日本でのピルの普及が芳しくない理由の一つとして、一九九九年に承認された後の副作用への忌避感が挙げられる。発売された当時はホルモン量が今より多く副作用も出やすかったため、ピルはよくない、副作用がひどいなどの偏見や誤った認識がいまだに根深いことが考えられる。現在の低用量ピルは数多くの研究を経て進化しており、当時のような偏見や誤った認識は改めていくべきと考える。女性の健康支援関連の取組の一つとして、今後低用量ピルの正しい知識を広めるための情報提供を政府として積極的に行っていく考えはあるか。

二 日本でのピルの普及が芳しくない理由の一つとして、保険適用の問題、価格の問題が挙げられる。避妊目的で低用量ピルを内服する場合、保険適用ではないため、費用は自己負担となる。また、子宮内膜症に伴う月経困難症と機能性月経困難症の治療目的であれば、低用量ピルの一部は保険適用であるが、自費診療に比べて大きく値段が下がるわけでもないとの指摘がされている。女性の健康支援関連の取組の一つとして、国内の低用量ピル普及が進むように低用量ピルの保険適用拡大や価格引下げに政府として取り組む考えがあるか。

三 日本でのピルの普及が芳しくない理由の一つとして、医師による処方が必要であり、購入のハードルが高いことが挙げられる。低用量ピルをドラッグストアで購入できる国が多い中、日本では医師が処方しなければ、低用量ピルを手に入れることができないのが現状である。女性の健康支援関連の取組の一つとして、低用量ピルの市販化推進に政府として取り組む考えはあるか。

 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。