質問主意書

第206回国会(特別会)

質問主意書

質問第一七号

ヤングケアラーの実態、支援の必要性及び取組の実効性の確保等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十一月十二日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   ヤングケアラーの実態、支援の必要性及び取組の実効性の確保等に関する質問主意書

 ヤングケアラーの実態、支援の必要性及び取組の実効性の確保等について、以下のとおり質問する。

一 厚生労働省におけるヤングケアラーについての対応は、主に子ども家庭局家庭福祉課虐待防止対策推進室が行っていると承知している。

 令和三年四月十四日の参議院国民生活・経済に関する調査会において、ヤングケアラー対策を担当する独立した部局の必要性を質問した私の質問に対し、参考人として出席した澁谷智子成蹊大学文学部教授は、虐待事例と比較してヤングケアラーが命に別状はない等の理由から軽視され、支援につながるのが遅れることへの懸念等から、独立した場所がある方が望ましいと発言している。

 虐待とヤングケアラーは重なる部分もあるとはいえ、その本質が異なっていることにも鑑み、組織体制の検討を行うべきと考えるが、澁谷参考人の発言に関する見解も含め、政府の考えを示されたい。

二 令和三年三月、厚生労働副大臣と文部科学副大臣を共同議長とする「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」が立ち上げられ、五月十七日には報告書(以下「連携PT報告書」という。)が取りまとめられた。

 この連携PT報告書の中で、ケアを要する家族と同居する子どもが中高生であっても福祉機関や専門職から「介護力」と見られてしまい、ヤングケアラーによる介護がなされることを前提とした福祉サービス等の利用調整等が行われるケースがあるとの指摘があった。このため、子どもを「介護力」とすることを前提とせず、福祉サービス等の提供主体が、ヤングケアラーのいる家族に対して介護サービスを行う場合の取扱いの明確化の検討などを行うこととなったと承知している。

 この指摘を受け、厚生労働省の事務連絡「「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」のとりまとめ報告を踏まえた留意事項等について」(令和三年七月十二日 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課)において、介護給付費等の支給決定に当たっては、家族へのケアに係るヤングケアラーの負担等に配慮すること等が求められた。

 この事務連絡の発出から四か月が経過するが、介護給付費等の支給決定への具体的な影響は、どのようになっているか。

三 群馬県高崎市は、令和四年度から、ヤングケアラーを支援するため、対象となる中高生がいる家庭に無料でヘルパーを派遣する事業を開始する予定としている。ヘルパー二人を一日二時間、週二日派遣する計画で、生徒や保護者のほか、学級担任らが校長を通じて派遣の依頼を申し出ることができるとしている。

 子どもを「介護力」とすることを前提としないためには、ヤングケアラーの家庭に介護力を手当するのが最も効果的な支援となる。高崎市の支援例は、このような意味で注目に値する試みと考えるが、政府の認識は如何か。

四 令和二年十二月から令和三年二月にかけて、厚生労働省及び文部科学省の連携により、全国の学校や生徒を対象とする初めての大規模な実態調査も実施された。この初の全国調査は大きな一歩ではあるが、学校や生徒を対象としているので、本当に厳しい状況にあるヤングケアラーは学校に来られない事情を踏まえると、現実には数値以上にヤングケアラーが存在していると考えるべきであろうとの有識者の指摘もある。

 学校に来られないような厳しい状況にあるヤングケアラーの把握に関しては、どんな点に留意すべきと政府は考えるか。

  右質問する。