質問主意書

第205回国会(臨時会)

質問主意書

質問第四四号

岸田総理の日本学術会議会員の任命拒否に係る見解等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年十月十四日

小西 洋之


       参議院議長 山東 昭子 殿



   岸田総理の日本学術会議会員の任命拒否に係る見解等に関する質問主意書

一 岸田総理は、令和三年十月十一日の衆議院本会議において、「そして、日本学術会議人事等についてお尋ねがありました。昨年十月の日本学術会議の会員任命については、任命権者である当時の内閣総理大臣が最終判断したものであることから、一連の手続は終了したものと承知をしております。」と述べているが、これは菅総理による六名の科学者に対する日本学術会議会員への任命の拒否が日本学術会議法に照らし合法であり、かつ、日本国憲法の定める学問の自由に対する侵害も生じていないものであると考えているのか。

二 歴代政府が答弁している「法令の解釈の考え方(ルール)」において、その「当該法令の規定の文言、趣旨、立案者の意図、立案の背景となる社会情勢、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意」等の条件などに照らして、なぜ、平成三十年に内閣法制局と内閣府で文書作成した内閣総理大臣が日本学術会議から推薦された科学者について任命拒否が可能である(内閣総理大臣は推薦されたとおりに任命する法的義務は負わない)との解釈が日本学術会議法との関係で合法になるのかについて、当該条件等に係る具体的な政府の認識を当該法令解釈の考え方(ルール)にあてはめて論理的に説明されたい。

三 前記二と同趣旨の質問に対して、政府は令和二年十二月十五日に「日本学術会議法(昭和二十三年法律第百二十一号)第七条第二項による日本学術会議会員(以下「会員」という。)の任命については、憲法第十五条第一項において公務員の選定は国民固有の権利であるとされていることからすれば、任命権者である内閣総理大臣は、日本学術会議法第十七条に基づく推薦を十分尊重しつつも、必ず推薦のとおりに会員に任命しなければならないわけではないと考えている。このような解釈は、昭和五十八年の同法改正以前からの申出や推薦に基づく公務員の任命に関する基本となる考え方を前提とし、また、日本学術会議の設立経緯、設立趣旨及び会員の選出方法の変遷に係る議論にも留意した上で、同法第七条第二項の文言も踏まえており、法令の解釈に関する政府の考え方にものっとったものであると考えている。」と答弁しているが、「昭和五十八年の同法改正」当時の「会員の選出方法の変遷に係る議論」について、内閣総理大臣は日本学術会議から推薦された科学者について任命拒否が可能であるとすべきである(内閣総理大臣は推薦されたとおりに任命する法的義務は負わないとすべきである)との見解が示された政府文書や国会会議録は何か存在するのか。存在する場合はどのような文書にどのような記載があるか具体的に示されたい。

四 政府は先に、平成三十年に内閣法制局と内閣府で文書作成した内閣総理大臣が日本学術会議から推薦された科学者について任命拒否が可能である(内閣総理大臣は推薦されたとおりに任命する法的義務は負わない)との解釈に関する内閣府提出の内閣法制局審査資料について、その一部を墨塗して参議院内閣委員会理事会に提出し、かつ、国民からの情報公開請求に対してもそのように対応しているが、当該墨塗部分にはどのような事項が記載されており、なぜ墨塗にしなければならないと考えたのか。また、それを国会や国民に対して非開示にして良いとする法令上の根拠をどのように考えているのか。

五 前記四について、政府が内閣法制局審査資料の法令解釈に係る考え方の箇所を墨塗で国会や国民に開示拒否するということは前代未聞の事態であり、憲法の定める国民主権原理及び議院内閣制の趣旨を否定する暴挙であり、岸田総理がいうところの「民主主義の危機」そのものではないか。

  右質問する。