質問主意書

第204回国会(常会)

答弁書


内閣参質二〇四第八二号
  令和三年六月十五日
内閣総理大臣 菅 義偉


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対する答弁書

一の1の(1)及び(2)について

 令和元年末時点で難民認定申請(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第六十一条の二第一項の難民の認定の申請をいう。以下同じ。)中の者の数及び審査請求(入管法第六十一条の二の九第一項の審査請求をいい、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成二十六年法律第六十九号)第七十五条の規定による改正前の入管法第六十一条の二の九第一項の異議申立てを含む。以下同じ。)中の者の数は、それぞれ、一万八千五百六十二人及び一万五百六十二人である。

 令和二年末時点で難民認定申請中の者の数及び審査請求中の者の数は、それぞれ、一万七千六十一人(速報値)及び六千六百六十人(速報値)である。

一の1の(3)及び(4)並びに2の(5)について

 令和二年に地方出入国在留管理局等(地方出入国在留管理局及び地方出入国在留管理局支局をいう。以下同じ。)における振り分けの段階で明らかに濫用・誤用的な案件として振り分けられたB案件又はC案件(「難民認定事務取扱要領」(平成十七年五月十三日付け法務省管総第八百二十三号法務省入国管理局長通知)に「B案件」又は「C案件」として記載されているものをいう。以下同じ。)の数は、B案件が七十三件であり、C案件が三百八十二件である。

 また、令和二年に難民認定申請をした者のうち、難民認定申請時に二十歳未満であったもので在留資格を有していなかったものの数は二百三十人(速報値)であり、このうち入管法第二十二条の二第一項の規定により本邦に在留していたものの数は二百十三人であり、不法に本邦に在留していたものの数は十七人(いずれも速報値)である。

一の1の(5)及び(6)について

 お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の1の(7)及び二の3について

 令和二年に仮滞在許可(入管法第六十一条の二の四第一項の仮滞在の許可をいう。以下同じ。)を受けた者のうち、仮滞在許可を受けた時点で二十歳未満であったものの数は十一人(速報値)であり、その年齢別の内訳は、零歳が四人、一歳、三歳、八歳、十一歳、十四歳、十七歳及び十九歳がそれぞれ一人(いずれも速報値)である。

 また、同年に仮滞在許可を受けた者のうち、出入国港である空港において難民認定申請を行ったものの数は零人(速報値)である。

 その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の1の(8)について

 令和三年三月末時点で審査請求中のミャンマー人は六百五十三人(速報値)であり、その余のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

一の2の(1)及び(2)について

 平成三十一年から令和二年までの間に難民と認定した者(審査請求手続において認定した者を含む。)九十一人のうち、二回目以降の難民認定申請に対して難民と認定したものの数は二人(速報値)であり、退去強制令書発付後に難民と認定したものの数は三人(速報値)である。

 また、平成三十一年から令和二年までの間に難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めた者八十一人のうち、二回目以降の難民認定申請に対して難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものの数は三十七人(速報値)であり、退去強制令書発付後に在留を特別に許可したものの数は四十二人(速報値)である。

一の2の(3)及び(4)について

 お尋ねについては、通常の業務において集計しておらず、集計に当たっては難民認定申請の受付及び処分を行う地方出入国在留管理局等に調査を行わせ、その結果を精査するなどの作業に膨大な時間を要することから、お答えすることは困難である。

一の2の(6)について

 御指摘の「いわゆる「新しい形態の迫害」」に係る御指摘の「仕組み」の内容については、難民審査参与員からの提言や諸外国の実例なども参考にしながら、現在においても引き続き検討中であり、この「いわゆる「新しい形態の迫害」」を受けたことを理由に令和二年に難民の認定を受けた者はいない。

一の2の(7)について

 御指摘の「一般化・明確化」については、難民認定制度の透明性向上の観点から、現在、我が国及び諸外国の実例や国連難民高等弁務官事務所(以下「UNHCR」という。)が公表した文書なども参考にしながら検討中であり、所要の作業が終わり次第、できる限り早期に公表する予定である。

 また、御指摘の「一般化・明確化」の作業に当たっては、UNHCRの意見を聴くことを予定している。

一の3の(1)について

 令和二年に難民不認定処分をした者について、難民調査官が行った入管法第六十一条の二の十四第一項に規定する事実の調査において、難民認定申請をした者に対する事情聴取を実施したか否かは網羅的には把握しておらず、お尋ねの件数についてお答えすることは困難であるが、二回目以降の難民認定申請において、それ以前とは異なる新たな難民の地位に関する条約(昭和五十六年条約第二十一号)上の迫害事由に該当する事情を主張していない場合であって、過去の記録や申請書等の提出資料により難民の認定をするかしないかを判断できる等の理由により、事情聴取を行わなかった事案があることは把握している。

一の3の(2)について

 平成二十二年から平成二十九年まで難民認定申請数が増加を続けていたことに伴い、審査期間が長期化している未処理案件が生じていた中で、それらを集中的に処理したことから、難民認定申請から処理までに要した期間の平均が長期化したものであると考えている。

一の4の(1)について

 審査請求に係る口頭意見陳述(行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号。以下「新法」という。)第三十一条第一項本文に規定する意見の陳述をいい、新法による改正前の行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号。以下「旧法」という。)第四十八条において準用する旧法第二十五条第一項ただし書に規定する口頭で意見を述べる機会を含む。以下同じ。)の申立ての有無を確認する際には、審査請求を受け付けた地方出入国在留管理局等の職員が、審査請求を行った者に対し、口頭意見陳述が、同人に主張する機会が十分に与えられるよう、同人が口頭で意見を述べる手続であることを説明している。

一の4の(2)及び(3)について

 口頭意見陳述及び質問(新法第三十六条に規定する質問をいい、旧法第四十八条において準用する旧法第三十条に規定する審尋を含む。)の期日が開かれなかった理由については、個別の事案によることから、一概にお答えすることは困難であるが、例えば、審査請求を行った者の主張が、何らの難民となる事由を包含しておらず、口頭意見陳述を実施することが適当でないとの理由により、難民審査参与員が口頭意見陳述を不実施とした事案があることは把握している。

 また、お尋ねの「その他の事情」とは、難民不認定処分となった前回申請と事情の変化がないにもかかわらず、同様の申請を繰り返す者からの申請があったという事情などをいうものと解している。

一の4の(4)について

 口頭意見陳述の機会を与えるか否かは、審理手続の主宰者となる難民審査参与員等が、個別の事案ごとに適正に判断しているものと考えており、引き続き法令に基づいた不服申立制度の適正な運用に努めてまいりたい。

一の5について

 出入国在留管理庁において把握しているところでは、難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、令和二年に提起された件数は十五件、同年に終局裁判がなされた件数は第一審、控訴審及び上告審の合計で三十件である。

 また、難民不認定処分取消請求訴訟、難民不認定処分無効確認請求訴訟又は難民認定義務付け訴訟のうち、同年において国の敗訴が確定した事案については、確定後、いずれについても難民の認定が行われた。

二の1について

 平成三十一年及び令和元年に一時庇(ひ)護上陸許可(入管法第十八条の二第一項の一時庇護のための上陸の許可をいう。以下同じ。)の申請をした者の数は三十六人であり、その国籍・地域別の内訳は、イランが八人、スリランカが五人、エジプトが三人、ナイジェリアが三人、イエメンが二人、ガーナが二人、パキスタンが二人、モルドバが二人、イラクが一人、ウガンダが一人、カメルーンが一人、ソマリアが一人、中国が一人、中国(香港)が一人、チュニジアが一人、ドイツが一人、トルコが一人である。平成三十一年及び令和元年に一時庇護上陸許可を受けた者の数は、イラクが一人である。

 令和二年に一時庇護上陸許可の申請をした者の数及び一時庇護上陸許可を受けた者の数は、現在集計中であり、現時点でお答えすることは困難である。

二の2について

 お尋ねについては、通常の業務において集計しておらず、集計に当たっては難民認定申請の受付及び処分を行う地方出入国在留管理局等に調査を行わせ、その結果を精査するなどの作業に膨大な時間を要することから、お答えすることは困難であり、また、御指摘のような統計をとることは、現時点では考えていない。

三の1について

 令和二年末時点で出入国在留管理庁の収容施設に収容されていた者の数は三百四十六人(速報値)であり、このうち、難民認定申請中のものの数は四十五人、審査請求中のものの数は七十八人(いずれも速報値)であるが、難民不認定処分取消請求訴訟係属中のものの数については、統計をとっておらず、お答えすることは困難である。

三の2について

 お尋ねの「仮放免を不許可とする場合」は「その理由をより具体的に告知するものとすることを検討すること」に関しては、検討の結果、令和三年二月十九日に閣議決定し、今国会に提出した出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案において、入管法に「入国者収容所長又は主任審査官は・・・仮放免を不許可としたときは、当該請求をした者に対し、理由を付した書面をもつて、その旨を通知する。」との規定を加えることとしたところである。

 お尋ねのその余の事項に関しては、現在、今国会における御議論等をも踏まえて引き続き検討しているところである。

四の1について

 令和二年度において、難民認定申請をしている者のうち生活に困窮するものに対する支援としてする保護費の支給(以下「保護措置」という。)の申請をした者の数は、三百十一人であり、保護措置を受けた者の数は、三百五十七人である。

四の2について

 外務省においては、難民認定申請者保護事業等の実施を公益財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部(以下「委託先」という。)に委託しているところ、令和二年度における、委託先が保護措置の申請を受け付けてから保護措置を開始して差し支えない旨の結果通知を同省から受けるまでの期間の平均は、約九十二日である。

 また、同年度における保護措置を受けた者の平均受給期間は、約十四箇月である。

四の3について

 令和二年において、保護措置の申請をしたものの保護措置の開始が不適当と判断された者の数は、八十三人であり、その国籍は、イエメン、イラク、イラン、インド、ウガンダ、エチオピア、カメルーン、ガンビア、ギニア、ケニア、スリランカ、セネガル、タンザニア、中国、チュニジア、トルコ、ナイジェリア、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブルキナファソ、ミャンマー、リベリア及びルワンダである。

 また、同年における、委託先が当該申請を受け付けてから保護措置の開始が不適当である旨の結果通知を外務省から受けるまでの期間の平均は、約百日である。

四の4について

 令和二年度において、保護措置の対象者のうち直ちに住居を確保する必要があるものに対する支援として提供している難民認定申請者緊急宿泊施設(以下「緊急宿泊施設」という。)を利用した者の数は、九人であり、その男女別の内訳は、男性が四人、女性が五人であり、国籍別の内訳は、コンゴ民主共和国が五人、チュニジアが四人である。

 また、保護措置の申請から緊急宿泊施設の利用開始までの平均日数は約十日、最短日数は零日、最長日数は四十九日である。

四の5について

 お尋ねの令和二年度の支給額は、①保護費が一億六千四百四十二万三千五百九十円、②生活費が一億九百十三万七千二百九十九円、③住居費が四千五百七十万七千四百七十八円、④医療費が九百五十七万八千八百十三円である。

 また、同年度の緊急宿泊施設の予算額は、三百四十七万千六百円であり、執行額は、現在精算の手続を行っているところであり、現時点で具体的な金額をお示しすることは困難である。

五の1について

 出入国在留管理庁が令和元年十月一日に公表した資料「送還忌避者の実態について」は、当該公表の当時における送還忌避者の実態等を明らかにするために特に集計等を行い、公表したものであるところ、お尋ねの各数値のうち、令和二年末時点の「(8) 前記五1(2)のうち退去強制令書の発付後に初めて難民認定申請した者の数及びその国籍の内訳」については、集計を行っておらず、その余の(1)から(7)までの各数値は、次のとおりである(いずれも同年末時点の速報値)。

(1) 送還を忌避する者に限らず、退去強制令書の発付を受け、収容中の者(出入国在留管理庁の収容施設に収容されている者をいう。以下同じ。)の数は、三百三十人である。

(2) 退去強制令書の発付を受け、収容中の者のうち送還を忌避する者の数は、二百四十八人である。

 また、国籍・地域別の内訳は、イランが二十五人、スリランカが二十五人、ブラジルが二十五人、ナイジェリアが二十三人、中国が十八人、フィリピンが十四人、ネパールが十一人、ペルーが十人、パキスタンが八人、バングラデシュが八人、ベトナムが八人、その他が七十三人である。

(3) 退去強制令書の発付を受け、収容中の者のうち送還を忌避する者で我が国において有罪判決を受けたことがあるものの数は、百五十五人(入管法違反によるものを除く。)である。

 また、その内訳は、薬物関係法令違反が九十七件、窃盗・詐欺が六十二件、傷害・暴行・恐喝等が四十九件、交通関係法令違反が三十九件、住居等侵入が二十二件、性犯罪(強制性交等など)が十六件、強盗・強盗致傷が八件、その他が七十一件である。

(4) 退去強制令書の発付を受け、収容中の者のうち送還を忌避する者で退去強制処分を複数回受けているものは、六十一人である。

(5) 退去強制令書の発付を受け、収容中の者のうち送還を忌避する者で仮放免取消歴があるものは、四十三人である。

(6) 退去強制令書の発付を受け、収容中の者のうち送還を忌避する者で難民認定申請を行ったことがあるものは、百四十八人である。

 また、国籍・地域別の内訳は、スリランカが二十四人、イランが二十一人、ナイジェリアが十七人、ネパールが九人、バングラデシュが八人、その他が六十九人である。

(7) 退去強制令書の発付を受け、収容中の者のうち送還を忌避する者で複数回の難民認定申請を行ったことがあるものは、七十二人である。

 また、国籍・地域別の内訳は、ナイジェリアが十一人、スリランカが十人、イランが七人、ミャンマーが六人、ネパールが五人、その他が三十三人である。

五の2について

 令和二年末時点で退去強制令書の発付を受けて仮放免されていた者の数は三千六十一人(速報値)である。

五の3について

 出入国在留管理庁が各収容施設からの報告に基づいて把握した拒食中の被収容者の数は、令和二年末時点で五人、令和三年六月九日時点で零人(いずれも速報値)である。

五の4について

 御指摘の平成十六年五月十九日の衆議院法務委員会における野沢法務大臣(当時)の発言は、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律(平成十六年法律第七十三号)による仮滞在許可制度の創設等を含む難民認定制度の見直しの趣旨について、難民認定申請中の者及び難民と認定された者の法的地位の安定を図ることにあることを述べたものであるところ、同法により新設された入管法第六十一条の二の六第三項の規定の趣旨が難民認定手続中の者の法的地位の安定を図ることにあることは、当該発言からも明らかであるから、「先般の、送還停止効の目的は法的地位の安定である旨の答弁は、立法趣旨に反する」との御指摘は当たらないものと考えている。