質問主意書

第204回国会(常会)

答弁書


内閣参質二〇四第七〇号
  令和三年五月二十五日
内閣総理大臣 菅 義偉


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員有田芳生君提出ヘイトクライムに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員有田芳生君提出ヘイトクライムに関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「事例」について網羅的にお答えすることは困難であり、また、一部の「事例」のみを殊更に示すことは予断を与えるおそれがあることから差し控えたいが、いずれにせよ、政府として、御指摘の「ヘイトクライムの定義」について特定の見解を有していないことについては、先の答弁書(令和三年四月十六日内閣参質二〇四第五五号。以下「前回答弁書」という。)一及び二についてで述べたとおりである。

二について

 御指摘の令和三年四月二十一日の参議院本会議における菅内閣総理大臣の答弁は、同日の参議院本会議における白眞勲議員の複数の御質問のうち、「今回、米国におけるアジア系住民に対するヘイトクライムを許さない姿勢など、日米両国が自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有したことは評価したいと思います。しかしながら、同じような現象がこの日本でも起き続けています。総理はこの件に関してどのような対策を取るつもりか、お聞きします。」との御質問に対して答弁を行うことを明確にする観点から、当該御質問における「ヘイトクライム」との用語を引用して述べたものにすぎず、御指摘の「特定の見解」を前提として述べたものではない。

三について

 御指摘の「ヘイトクライム」については、前回答弁書一及び二についてで述べたとおり、様々な意味で用いられているものと承知しているところ、その定義については、これを設けることの当否も含め、様々な議論があり得るものと考えられることから、現時点において、政府として、御指摘の「ヘイトクライム」について定義することは考えておらず、また、そのために必要となる「手続き」についても検討していない。

 いずれにせよ、前回答弁書一及び二についてで述べたとおり、政府としては、御指摘の「ヘイトクライム」の定義いかんにかかわらず、特定の民族や国籍の人々を排斥する趣旨の不当な差別的言動については許されないものと考えており、例えば、法務省の人権擁護機関において外国人の人権に関する啓発活動を実施するなど、外国人に対する偏見や差別の解消に向けて取り組んでいるところである。また、捜査当局においては、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づき適切に対処するものと承知している。