質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第一三一号

黒川検事長の勤務延長のための解釈変更及びそれに基づく検察庁法改正案の国会提出並びに当法案の修正案の国会提出の顛末の確認等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年六月十六日

小西 洋之


       参議院議長 山東 昭子 殿



   黒川検事長の勤務延長のための解釈変更及びそれに基づく検察庁法改正案の国会提出並びに当法案の修正案の国会提出の顛末の確認等に関する質問主意書

一 政府においては、昨年の通常国会において、黒川検事長の勤務延長を可能とした解釈変更を行った。すなわち、「検察官は、検察庁法第二十二条及び国家公務員法第八十一条の二第一項の規定に基づき定年により退官(退職)しているとの理解」に立つこととし、当該理解に基づき検察庁法改正案を立案し国会に提出し廃案となっていたところ、今年の通常国会に提出し成立した改正検察庁法第二十二条第二項に「検察官については、国家公務員法第八十一条の七の規定は、適用しない。」との条文を設けた趣旨は何か。

二 前記一の改正検察庁法第二十二条第二項の「検察官については、国家公務員法第八十一条の七の規定は、適用しない。」との条文を設けることとしたのは、担当部局である法務省刑事局などの法務省内の官僚らの自発的な立案によるものであったのか、あるいは、与党や大臣等の政治家の指示によるものであったのか。

三 政府は、現時点においても、前記一の「検察官は、検察庁法第二十二条及び国家公務員法第八十一条の二第一項の規定に基づき定年により退官(退職)しているとの理解」に立っているのか。また、こうした理解は合法である、あるいは、合法であったと考えているのか。

四 前記一の「検察官は、検察庁法第二十二条及び国家公務員法第八十一条の二第一項の規定に基づき定年により退官(退職)しているとの理解」に基づき立案され、本年の通常国会において成立している条文を具体的に示されたい。

五 勤務延長に係る解釈変更、すなわち、検察官が検察庁法第二十二条だけではなく国家公務員法第八十一条の六第一項(改正前の国家公務員法第八十一条の二第一項)の規定に基づき定年により退官(退職)していると理解することによって初めて検察官の身分や地位などを実質的に変動させる何らかの法的効果が生じているものは当該退官(退職)以外に何か存在するのか。例えば、前記四の「条文」に該当すると解される改正検察庁法附則第四条は「・・・必要な情報を提供するとともに、・・・勤務の意思を確認するように努めるものとする。」とあり、この条文によって検察官の身分等そのものの変動たる法的な効果が生じているものとは解されないように思われるが、いずれにしても、政府の見解を示されたい。

六 法秩序の守護神であるべきところの検察官から転籍した法務官僚が自らの組織の私利私欲、あるいは、時の権力の指示に盲従して、法律泥棒ともいうべき国家公務員法の解釈変更を行い、しかも、その違法行為を糊塗するために全検察官の勤務延長を可能とする検察庁法改正案を再度作成して国会提出を行ったという事実は国民及び我が国の法の支配にとって悪夢というべき事態であったと解するが、それはさておくとして、検察官出身の法務官僚を始め法務省職員は法務省設置法第三条に定める「法秩序の維持」等の任務との関係で、どのような法令遵守の法的及び倫理的責務を負っていると考えているか。また、そうした法令遵守の徹底のために今後どのような取組を行っていく決意にあるか。

 なお、改正検察庁法第第二十二条第二項はどのような経緯で設けられたのかといういわゆる生きた教材として当該条項をこれら法令遵守の徹底の取組に活用していくことについては、まずは、我が国の法の支配の再生の取組の中で国家公務員法第八十一の六第一項の「定年により退職するという規範」が検察官に適用されるという解釈が立法措置によって封じられること等を待つべきと解するが、いずれにしても、当該取組及び決意について政府の見解を示されたい。

  右質問する。