質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第一二〇号

キャッシュレス決済の推進に向けた課題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年六月十五日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   キャッシュレス決済の推進に向けた課題に関する質問主意書

 政府は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が始まる前の段階で、キャッシュレス決済比率を二〇二五年六月までに四十%、将来的には八十%にすることを目指す方針を示している。現在の状況下では、現金決済による感染リスクの低減や、外出自粛を余儀なくされる中での巣ごもり需要等に対応した非現金・非接触での決済需要の高まりなど、キャッシュレス決済の利用が今後拡大していく可能性は確かに高いものと思われる。

 一方で、キャッシュレス決済を利用することが困難な人々が、事業者側にも消費者側にも一定程度存在することも事実である。事業者側には、設備導入の初期費用や決済事業者に対する手数料が新たな負担となる。また、消費者側においても、デジタル機器を使いこなせない人に利用に当たっての障壁が生ずる可能性があるほか、セキュリティや使いすぎなどの面に不安を感じる層も多いのではないかと懸念される。

 以上の認識を踏まえて、キャッシュレス決済の推進に向けた課題について、以下質問する。

一 事業者にとっては、キャッシュレス決済を導入したとしても、必ずしも売上増・利益増につながる保証はない。また、初期費用や手数料については、小規模店舗などにおいて利益に比して重い負担となる可能性もある。消費者側も、スマートフォンなど、新たなデジタル機器の導入が必要となる場合が多い。

 一方で、最近では、金融機関の両替手数料等の引上げによって、一円玉などの少額貨幣を釣り銭として確保することや、少額貨幣での口座入金等が困難となる事例も生じている。こうした事例の中には、金融機関側がキャッシュレス決済を利用してはと持ちかける例もあるとの報道も見られる。

 キャッシュレス決済の一層の普及を目指すに当たっては、現金の使用に事実上制限を掛けることで利用を余儀なくさせる方法ではなく、まずは消費者・事業者ともに安全・安心かつ低コストで利用できるよう、安全性や利便性を向上させる取組が必要であると考えるが、政府の認識を伺う。

二 キャッシュレス決済を利用するに当たっては、預金口座・クレジットカードなどからのチャージが必要となるものが一般的である。キャッシュレス決済自体の安全性はもとより、連携している預金口座やクレジットカードなどにおいても意図しない引出しが行われることがないようにするため、キャッシュレス決済事業者と金融機関等の双方でのセキュリティの確保は重要な課題である。

 ところが、二〇二〇年九月以降、キャッシュレス決済サービスと連携した預金口座からの不正引出しが相次いで発覚し、大きな問題となった。二〇二〇年十二月二十五日に金融庁が公表した金融機関に対するアンケート調査の結果によると、過去五年間に決済サービスを通じて発生した不正出金事案は、口座と連携する決済サービスを導入する全百十七金融機関のうち四十四金融機関で見られた。

 こうした事態を踏まえ、金融庁は、金融機関等に対して厳格な本人認証と不正取引に対する補償を求める方針を示し、本年二月に監督指針や事務ガイドラインを改正した。また、一般社団法人全国銀行協会や一般社団法人日本資金決済業協会においてもガイドラインを策定している。

 利用者の保護を万全なものとするため、キャッシュレス決済事業者と金融機関等の双方が取り組むべき対応について、政府の見解を伺う。

  右質問する。