質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第九六号

政府情報システムにおける仕様書作成の公平性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年六月十一日

熊谷 裕人


       参議院議長 山東 昭子 殿



   政府情報システムにおける仕様書作成の公平性に関する質問主意書

 会計検査院は、令和三年五月二十六日、国会法第百五条の規定による検査要請を受諾した事項について、会計検査院法第三十条の三の規定により、「政府情報システムに関する会計検査の結果について」を参議院議長に報告した。

 この報告では、政府情報システムにおいて、国全体の競争契約における一者応札の件数の割合が高く、ベンダーロックインが生じている可能性がある状況となっていると指摘されており、その割合は七十三・九%と報告されている。

 今後、デジタル庁が整備される中で、政府におけるIT調達の改革が進むことが期待される一方で、民間技術者の採用も行われることから、ベンダーロックインのみならず、官製談合や官民癒着の構造が生まれ、適切な競争が生じないことや行政の効率化が図られないのではないかとの懸念を持つ。

 また、デジタル庁への民間からの中途採用の募集は始まっており、政府として適切な対応策を準備しておくことは急務である。

 このような観点から、以下質問する。

一 政府情報システムにおける調達において、仕様書の作成支援事業者などの第三者による支援を受けずに、政府の職員が仕様書を作成している割合はどの程度か。政府の把握するところを明示されたい。

二 政府の職員が仕様書を作成するに当たり、既存契約先の大手情報システム会社などに仕様書案を作成させているようなケースはないのか。あるとすればどの程度か。政府の把握するところを明示されたい。

三 応札が想定される事業者に仕様書案作成を依頼ないしは関与させることは公平性を阻害するものであり、適切な競争を損なうものではないか。政府の見解如何。

四 前記三に関連して、現在、政府内で応札予定の事業者に仕様書案作成を依頼ないしは関与させている事例はあるのか。あるとすればどの程度か。政府の把握するところを示されたい。

五 前述の懸念の前提として、国の調達における競争性や公平性が挙げられる。会計法第二十九条の三において、「契約担当官及び支出負担行為担当官は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、第三項及び第四項に規定する場合を除き、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない」とされていることから、民間採用職員による応札予定の者への仕様書作成依頼などがあったとしても競争が成立するのであれば、法律上問題がないのではないか。競争性を確保できていることの法律上の要件は如何。

六 政府の情報システムのガイドである「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」において、「PJMOは、有用な情報を得られるよう、公平性・競争性を確保した上で、事業者に対し説明会・個別ヒアリング等を逐次行い、取得した情報を精査し、活用するものとする」とされている。国の調達手続きにおいて公平性はどのような要件を満たすことが法的に求められているのか。法令による根拠と要件について具体的に示されたい。

七 デジタル庁では民間から採用予定の職員は政府情報システムの仕様書作成の業務に携わるのか。

八 デジタル庁は「国の行政機関が行う情報システムの整備及び管理に関する行政各部の事業を統括し及び監理すること」と示されている。国の行政機関が行う情報システムの整備及び管理について統括及び監理するということは、調達に係る情報等についても事前に把握することが可能であろう。デジタル庁及びデジタル庁が統括及び監理する行政各部における政府情報システムの仕様書作成にあたり、採用予定の職員が所属していた企業やかつての取引先に仕様書作成の依頼や、事前に情報を提供するなどした場合、官民癒着となる懸念がある。このような事例をどのように防止するのか。明示されたガイドライン等は存在するのか。政府の対応策を具体的に示されたい。

九 公務員倫理法第三条では、「職員は、国民全体の奉仕者であり、国民の一部に対してのみの奉仕者ではないことを自覚し、職務上知り得た情報について国民の一部に対してのみ有利な取扱いをする等国民に対し不当な差別的取扱いをしてはならず、常に公正な職務の執行に当たらなければならない」と示されている。デジタル庁の職員が出身企業や関連企業に対して国の調達に係る情報を事前に共有したとしても、「職務の執行」の結果が「国民全体」に「奉仕」するものであれば、公務員倫理法第三条の目的に合致し、公務員の職責にも適うものであろう。また「公共調達の適正化について」(財計第二〇一七号 平成十八年八月二十五日)では、「公共調達については、競争性及び透明性を確保することが必要であり、いやしくも国民から不適切な調達を行っているのではないかとの疑念を抱かれるようなことはあってはならない」と示されているところである。しかしながら、IT総合戦略室やデジタル庁準備室が所在する内閣官房等における「提言」(令和元年七月十一日 内閣官房及び内閣法制局入札等監視委員会、内閣府本府入札等監視委員会)において「入札制度は、行政目的を達成するために必要となる財又は役務を、必要な品質を確保しつつ最も安価に供給可能な相手方(事業者)を選別し、その者と契約を締結するためのものである。このためには適切な競争状態を確保することが重要であるが、一般競争入札を形式的に貫くことで、かえって国民の利益確保という目的に沿わない状況が生じているのではないか、という疑問がある」と指摘されるような、調達に係る行政手続きに競争性や公平性を重視することは、手段が目的化し事務コストを増やしているものではないか。かかる適正化を図る具体策を政府は持っているのか。政府の見解如何。

  右質問する。