質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第八七号

東京オリンピック・パラリンピックの観客にPCR検査などの陰性証明書の提示を求めることを政府が検討中との報道に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年六月八日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   東京オリンピック・パラリンピックの観客にPCR検査などの陰性証明書の提示を求めることを政府が検討中との報道に関する質問主意書

 「新型コロナウイルスPCR検査の実施時期について」(令和三年一月二十九日付全国保健所長会協力事業令和二年度地域保健総合推進事業新興感染症対策班分担事業者井澤智子氏発出文書)には、発症していない接触者(ウイルスにばく露した可能性がある者)への検査の実施時期の目安は「潜伏期間(ばく露から発症までの期間)が平均的(五日間)であると仮定すると、ばく露(第〇日)して一―二日後には偽陰性率が高く、四―八日後には偽陰性率が低い」とある。

 また、厚生労働省「退院基準及び濃厚接触者に対する検査等の見直しについて」内の「台湾における調査報告」には、「発症前の患者に曝露された濃厚接触者の方が発症後の患者から曝露した場合と比べて発症率が高い」とある。

 新型コロナウイルス感染症は、発症前においては偽陰性とされる確率が高く、しかも、発症前の患者に暴露していた者が新型コロナウイルス感染症にり患する事例が多い。これは、令和二年十一月二十五日に参議院予算委員会にて田村厚生労働大臣が「もし発症した場合、これは全くもっていろんな、発症をしていない、要するに、陽性者じゃないというようなことをチェックしますけれども、なかなか、無症状のまま入ってこられる方々もおられる。感染して間もない場合にはなかなかPCRや抗原定量でつかまらない場合もあります。もちろん感度の問題もあります。」と発言したとおりである。それゆえ、新型コロナウイルス感染症の濃厚接触者は、PCR検査の結果如何にかかわらず、二週間の行動自粛を求める政府の方針は、PCR検査の「陰性」という結果を信用しないという点において評価に値する。新型コロナウイルス感染症に関する専門家有志の会(政府対策本部の旧専門家会議や厚生労働省クラスター対策班等の関係者で組織された専門家の有志の会)が令和二年四月二十九日にウェブサイト上で「新型コロナの陰性証明はできません!」と表明しているように、そもそも、現代の科学において新型コロナウイルス感染症にり患していないことを証明する手段は存在しないと承知している。

 一方、報道によると、政府は、東京オリンピック・パラリンピックの観客にPCR検査などの陰性証明書の提示を求めることを検討しているという。

 右を踏まえて、以下質問する。

一 政府は、東京オリンピック・パラリンピックの観客に新型コロナウイルス感染症に係るPCR検査などの陰性証明書の提示を求めることを検討しているか。検討していることが事実である場合、PCR検査のほかに候補となっている検査方法を明らかにされたい。また、要求する偽陰性割合の精度はどの程度か。信頼区間も合わせてお答えいただきたい。

二 政府は、新型コロナウイルス感染症に係るPCR検査結果が一週間以内であればよいと検討しているとの報道があるが、これは事実か。事実であれば、なぜ期限を一週間以内で検討しているのか。

三 政府は、新型コロナウイルスに暴露してから一~二日後には偽陰性率が高いことを承知しているか。

四 現時点で、九十五パーセント信頼区間における偽陰性割合が十パーセントを切る新型コロナウイルス感染症にり患しているかどうかを確認する検査方法は存在するか。

五 東京オリンピック・パラリンピックの観客にPCR検査などの陰性証明書を求めた場合、「新型コロナウイルス感染症に対する陰性証明は科学的に可能である」という誤ったメッセージが国民に広がる可能性が大であると考える。

1 政府は、なぜ検体採取の際の手技が適切でない場合や、検体を採取する時期により、対象者のウイルス量が検出限界以下となり、最初の検査で陰性になった者が、その後陽性になる可能性もあり得ることを承知していながら、東京オリンピック・パラリンピックの観客にPCR検査などの陰性証明書を求めることを検討したのか。政府の見解如何。

2 東京オリンピック・パラリンピックの観客にPCR検査などの陰性証明書を求める目的は何か。

3 政府は、厚生労働省のホームページ「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」にて「国内での感染者数が増える中で、医療機関や保健所への各種証明の請求についてはお控えいただくよう、お願い」しているが、東京オリンピック・パラリンピックの観客にPCR検査などの陰性証明書を求めることは、厚生労働省のホームページ記載の政府方針と矛盾するのではないか。政府の見解如何。

4 東京オリンピック・パラリンピックの観客にPCR検査などの陰性証明書を求めることを政府が検討したという報道によって、すでに「新型コロナウイルス感染症に対する陰性証明は科学的に可能である」という誤ったメッセージが国民に広がっている可能性がある。政府は、改めて、新型コロナウイルス感染症患者については、医療保健関係者による健康状態の確認を経て、入院・宿泊療養・自宅療養を終えるものであるため、療養終了後に勤務等を再開するに当たって、職場等に、陰性証明を提出する必要はないこと、及びPCR検査では、検体採取の際の手技が適切でない場合や、検体を採取する時期により、対象者のウイルス量が検出限界以下となり、最初の検査で陰性になった者が、その後陽性になる可能性もあり得ることについて、力強く周知する必要があるのではないか。政府の見解如何。

六 東京オリンピック・パラリンピックを仮に有観客で開催するのであれば、PCR検査などの陰性証明書よりも、コロナワクチン接種完了証明書を求める方が合理的であると考える。現状の国内でのワクチン接種の進行度合いを考えると難しいとは思うものの、観客にコロナワクチン接種完了証明書を求めるとする提案に関して政府の見解如何。

なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。