質問主意書

第204回国会(常会)

質問主意書


質問第三二号

成年被後見人に対する新型コロナワクチン接種について成年後見人が医療機関等から同意を求められることに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和三年三月八日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   成年被後見人に対する新型コロナワクチン接種について成年後見人が医療機関等から同意を求められることに関する質問主意書

 本年四月十二日から一部の市町村で高齢者等に対する新型コロナワクチン接種(以下「ワクチン接種」という。)が開始される見込みであると承知しているが、ワクチン接種の対象者の中には、既に認知症等を原因として事理弁識能力を喪失し、家庭裁判所により後見開始審判を受け、成年被後見人となっている者も多数存在する。
 一方で、医療機関等より、成年被後見人に対するワクチン接種について、成年後見人が同意を求められることが多々あると聞いている。また、「同意」という名目ではなくとも、「意向調査」などと称して、実質的な同意を求められることもあると聞いている。
 右を踏まえて、以下質問する。

一 一般に、成年後見人には、成年被後見人が受ける医療に関する同意権限(いわゆる医療同意権)も同意義務もないものと思慮する。これは、憲法第十三条により保障されている自己決定権に基づいて、自分の身体に関する処分は、自分だけがなすことのできるものであり、他人が処分することはできない。ましてや、身上監護権はあるにしても、財産管理を主として任命されているはずの成年後見人が、成年被後見人本人の身体について処分する権限が認められているはずがないと思慮するが、成年後見人の医療同意権に関し、政府の見解如何。

二 ワクチン接種についても、成年後見人には、成年被後見人が受ける接種に関し、同意権はないものと思慮するが、政府の見解如何。

三 予防接種法第八条第二項及び第九条第二項は、成年後見人について、成年被後見人の「保護者」として、「予防接種を受けさせることを勧奨」し、予防接種を「受けさせるため必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と規定しているが、あくまで成年後見人には、医療同意権がないことが大前提であるものと思慮する。
 これに対し、予防接種実施規則第五条の二第一項は、成年後見人を含むものと思慮される「保護者」から「文書により同意を得なければならない」と規定している。しかし、成年後見人には、医療同意権はないのであるから、当該文書による同意は法的に無効であるものと解すべきではないか。政府の見解如何。

四 例えば、事理弁識能力が全くなく、認知機能も大幅に低下しているような成年被後見人に、身寄りがなく、親しい関係にある者も一切存在しない場合を想定すると、当該成年被後見人に成年後見人が就任していても、成年被後見人のワクチン接種について、成年後見人に同意権はなく、同意できないのであるから、有効な同意が存在する状況は観念することができない。
 このような状況で、当該成年被後見人に対し、ワクチン接種を行うことは、法的に可能なのか。政府の見解如何。
 なお、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。