質問主意書

第202回国会(臨時会)

答弁書


内閣参質二〇二第三二号
  令和二年十月二日
内閣総理大臣 菅 義偉


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員小西洋之君提出安倍内閣の集団的自衛権行使の容認が近代立憲史上に例のない暴挙等であることに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出安倍内閣の集団的自衛権行使の容認が近代立憲史上に例のない暴挙等であることに関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねのような要求がなされた事実はない。

二、三及び七について

 平和安全法制(我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律(平成二十七年法律第七十六号)及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(平成二十七年法律第七十七号)をいう。以下同じ。)は、我が国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容するとともに、更に変化し続け、我が国は複雑かつ重大な国家安全保障上の課題に直面していること等を踏まえ、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜くとともに、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の下、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献するためのものである。そして、平和安全法制により、日米同盟の抑止力は更に高まり、我が国が攻撃を受ける可能性は、一層なくなっていくと考えており、政府としては、平和安全法制には大きな意義があったものと認識している。
 このため、「日米同盟を片務条約に貶め、日本が米国の戦争に巻き込まれるリスクを生じさせた究極の売国行為」との御指摘は当たらない。

四及び六について

 御指摘の「在日米軍基地が米国に与えるこの上なく大きな利益」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、米軍は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)第六条の規定に基づき、我が国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、我が国において施設及び区域を使用することが許されており、これにより、米軍のアジア太平洋地域における前方展開が可能となっていることについては、もとより、日米間で認識を共有しているところである。

五について

 御指摘の「こうした計り知れない利益」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、平和安全法制は、我が国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容するとともに、更に変化し続け、我が国は複雑かつ重大な国家安全保障上の課題に直面していること等を踏まえ、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜くとともに、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の下、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献するためのものであり、また、平和安全法制により、日米同盟の抑止力は更に高まり、我が国が攻撃を受ける可能性は、一層なくなっていくと考えていることについては、二、三及び七についてで述べたとおりである。

八について

 「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)でお示しした「武力の行使」の三要件は、その文言からすると国際関係において一切の実力の行使を禁じているかのように見える憲法第九条の下でも、例外的に自衛のための武力の行使が許される場合があるという昭和四十七年十月十四日に参議院決算委員会に対し政府が提出した資料「集団的自衛権と憲法との関係」で示された政府見解の基本的な論理を維持した上で、同条の解釈の前提となる我が国を取り巻く安全保障環境の変化に照らして慎重に検討した結果、この基本的な論理に当てはまる例外的な場合として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるとしてきたこれまでの認識を改め、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合もこれに当てはまるとしたものである。
 また、同資料における御指摘の「外国の武力攻撃」が、我が国に対する武力攻撃に限定されているものではないことについては、先の答弁書(平成三十一年二月二十二日内閣参質一九八第一二号)一及び二についてで述べたとおりである。
 このため、「「基本的な論理」なるものをねつ造したという、法解釈ですらない不正行為による絶対の違憲無効の暴挙」との御指摘は当たらず、また、平和安全法制が、「近代立憲史上に例のない暴挙」や「日本国民の生命と尊厳をこの上なく蹂躙する暴挙」である等の御指摘も当たらない。