質問主意書

第202回国会(臨時会)

答弁書


内閣参質二〇二第一五号
  令和二年十月二日
内閣総理大臣 菅 義偉


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員山添拓君提出東京外かく環状道路事業の事業費等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山添拓君提出東京外かく環状道路事業の事業費等に関する質問に対する答弁書

一について

 関東地方整備局事業評価監視委員会において、令和二年度に、東京外かく環状道路(以下「東京外環」という。)のうち東京都練馬区から同都世田谷区までの区間(以下「東京外環(関越~東名)」という。)の事業再評価を行ったところであるが、当該事業再評価における事業費の増加分については、平成二十三年十二月九日に開催された高速道路のあり方検討有識者委員会の「中間とりまとめ」において、東京外環等の大都市部の高速道路は、利用者負担による有料道路方式での整備を基本とすべきとされていることを踏まえ、できる限り有料道路事業により負担する予定である。その上で、お尋ねの有料道路事業と直轄事業の負担額については、現時点では未定であり、今後、国土交通省、関係高速道路会社、東京都等の関係者間において、調整して決定する予定である。また、お尋ねの決定する時期についても未定である。

二について

 中央ジャンクションにおける地中拡幅部の断面形状・工法変更等、中央ジャンクションにおける地質調査・地下水調査を踏まえたジャンクション構造等の変更及び大泉ジャンクションにおける現地地質条件を踏まえたトンネル構造等の変更については、これらを含むジャンクションに係る工事費が、令和二年七月三十日に開催された令和二年度第一回関東地方整備局事業評価監視委員会(以下「第一回委員会」という。)前においては、四千五百六十七億三千万円であった。
 大泉ジャンクション側本線シールドにおける地質調査を踏まえた軟弱地盤対策・耐震検討の追加並びに東名ジャンクションにおける本線シールドトンネルの掘進方法及びヤード構造の変更については、これらを含むシールドトンネルに係る工事費が、第一回委員会前においては、七千六十一億八千万円であった。

三について

 令和二年九月三日に開催された令和二年度第二回関東地方整備局事業評価監視委員会(以下「第二回委員会」という。)において、東京外環(関越~東名)は、「早期の完成と供用に努めること。」、「コスト縮減を徹底するとともに、事業費増の要因を分析し、厳格なコスト管理を行うこと。」、「事業進捗について、定期的に関係自治体と共有するなど引き続き事業の透明性を高めること。」及び「事業の必要性や現場で行われている事業の工夫などを社会一般に知ってもらえるよう、わかりやすい情報発信を行うこと。」という付帯意見をもって、事業継続の原案のとおり了承されたところであり、これらの付帯意見を踏まえ適切に事業を進めてまいりたい。

四について

 お尋ねについては、現在詳細な設計を進めているところであり、お答えすることは困難である。

五について

 青梅街道インターチェンジ部の地中拡幅部の事業費については、今後実施される詳細な設計を通じて精査される予定であり、関東地方整備局事業評価監視委員会における東京外環(関越~東名)の事業再評価による事業計画の変更には含めておらず、また、現時点で当該事業費の変更についての見通しが立っていないため、当該事業費に関するお尋ねにお答えすることは困難である。

六について

 東京外環(関越~東名)について、今後事業を進める中で実際の現場条件等により、更なる事業費の変更が見込まれる場合には、適切に事業評価を実施してまいりたい。
 また、第二回委員会において、東京外環(関越~東名)は、「コスト縮減を徹底するとともに、事業費増の要因を分析し、厳格なコスト管理を行うこと。」等の付帯意見をもって、事業継続の原案のとおり了承されたところであり、これらの付帯意見を踏まえ適切に事業を進めてまいりたい。

七について

 国土交通省関東地方整備局からは、令和二年七月二十八日付けで、東京都知事宛てに、「関東地方整備局事業評価監視委員会に諮る対応方針(原案)の作成に係る意見照会について(依頼)」により、第一回委員会で説明予定の資料案を送付し、関東地方整備局事業評価監視委員会に諮る対応方針(原案)の作成に当たり、東京都の意見を伺ったところである。
 同都からは、同月二十九日付けで、国土交通省関東地方整備局長宛てに、「関東地方整備局事業評価監視委員会に諮る対応方針(原案)の作成に係る意見照会について(原案)の作成に係る意見照会について(回答)」により、「東京が日本経済のエンジンとして、我が国の成長をけん引するため、また、災害時における首都東京の安全・安心を確保するためには、首都圏の陸・海・空の交通・物流ネットワークの強化が極めて重要である。」、「外環(関越~東名)は首都圏における交通・物流の根幹を成す重要な道路である。今回、再評価される事業の内容について、今後、都民に対しこれまで以上に丁寧な説明に努めるとともに、開通の見通しを明らかにし、早期開通に向け事業を推進されたい。」、「事業費については、都の負担増とならないよう、有料道路事業を活用するとともに、引き続き、安全に十分配慮しつつコスト縮減を図りながら、効率的に事業を実施されたい。」及び「事業の実施に当たっては、東京外かく環状道路(関越~東名)事業連絡調整会議を活用し、都と十分に調整を図るとともに、地域住民の意見や要望に対する「対応の方針」を国の責任において確実に履行されたい。」という意見が提出されたところである。

八について

 そもそも、事業評価においては、貨幣換算した便益を費用で除した費用便益比は重要な要素の一つであるが、事業評価は、これに限らず、環境への影響、災害時における人や物資の輸送の確保といった貨幣換算が困難な効果、さらには、事業の実施環境等の視点により総合的に実施するものであり、これを前提に、東京外環(関越~東名)については、第二回委員会において、付帯意見をもって、事業継続の原案のとおり了承されたところであり、「国の判断が妥当性を欠くものであった」との御指摘は当たらず、「事業を継続すること自体の見直し」を検討することは考えていない。

九について

 お尋ねの「コロナ禍の下での社会経済情勢等の変化」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、東京外環(関越~東名)については、第一回委員会及び第二回委員会において、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」前後の全国主要四十断面の高速道路の交通量等を説明した上で、事業継続の対応方針(原案)の審議をいただき、第二回委員会において、付帯意見をもって、原案のとおり了承されたところである。

十について

 東京外環(関越~東名)については、首都圏の都心方向に集中する交通を適切に分散し、首都圏の慢性的な渋滞の緩和等に資するとともに、物流効率化や生産性向上等の効果が見込まれる事業であり、その実施に当たっては、今後とも、厳格な事業評価を行いつつ、適切に事業を進めてまいりたい。

十一について

 東京外環(関越~東名)については、第一回委員会及び第二回委員会において、事業の進捗状況を説明した上で、事業継続の対応方針(原案)の審議をいただき、第二回委員会において、付帯意見をもって、原案のとおり了承されたところであり、事業を継続することは適切であると考えている。
 また、都市計画事業の承認及び認可の申請に係る事業施行期間については、他の同規模と考えられる事業に要する期間等から総合的に勘案して適切であると判断されたものであり、当該承認及び認可に係る判断は適切であったと考えている。

十二について

 国土交通省が平成二十七年度から令和元年度までの五年間に「国土交通省所管公共事業の新規事業採択時評価実施要領」及び「国土交通省所管公共事業の再評価実施要領」に基づき事業評価を実施した事業について、事業評価実施後の全体事業費が高い上位十件の事業名と全体事業費は、
 第二東海自動車道横浜名古屋線(御殿場ジャンクション~浜松いなさジャンクション) 約二兆五千九百八十億円
 北海道新幹線(新函館(仮称)・札幌間) 約一兆六千七百億円
 東京外環(関越~東名) 約一兆五千九百七十五億円
 北陸新幹線(金沢・敦賀間) 約一兆四千百億円
 一般国道四六八号首都圏中央連絡自動車道(川島~大栄) 約一兆三千百三十六億円
 東関東自動車道水戸線(三郷~高谷ジャンクション) 約一兆五百五十六億円
 石狩川直轄河川改修事業 約九千四十億円
 利根川・江戸川直轄河川改修事業 約八千五十四億円
 近畿自動車道名古屋神戸線(城陽~高槻第一ジャンクション) 約七千三百十八億円
 第二東海自動車道横浜名古屋線(海老名南ジャンクション~秦野) 約六千八百七十四億円
である。
 また、「国土交通省所管公共事業の再評価実施要領」に基づき平成二十七年度から令和元年度までの五年間に再評価を実施した事業のうち、事業評価実施前の事業費と比較して事業評価実施後の全体事業費が七千六百億円を超えて増額されたものは存在しない。