質問主意書

第202回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六号

被選挙権と公職の候補者になる権利の違いに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年九月十六日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   被選挙権と公職の候補者になる権利の違いに関する質問主意書

 公職選挙法の被選挙権について質問する。

一 二〇二〇年七月十二日に告示された千葉県印西市長選挙において、NHKから国民を守る党所属議員の私設秘書である粟飯原美佳氏(二十四歳)が市長選挙に立候補すべく書類を提出したが、印西市選挙管理委員会には受理されなかった。実は同氏は二〇一九年に鎌ケ谷市議会議員選挙に立候補をしようとしたが、当時二十二歳であることを理由に立候補届は受理されなかった経緯がある。
 公職選挙法では、被選挙権(同法第十条)と公職の候補者になる権利は明確に区別されており、被選挙権がない者の立候補届を却下する規定については、同法第八十六条の四第九項にあるのみであり、選挙の当日において年齢が二十五歳に達していない者の立候補を選挙長が却下できるという規定は存在しない。
 昭和二十八年五月七日最高裁判所第一小法廷判決(民集七巻五号五三二頁)によれば、選挙長は立候補届の受理に際しては、同法第八十九条違反を実質的に審査して届出を却下する権限を有さない旨が判示された。そして、地方公共団体の長に立候補した被選挙権を有する者が死亡または立候補後候補者たることを辞したものとみなされた場合、同法第八十六条の四第七項により選挙の期日が延期されたとき、立候補の段階では選挙の当日には未だ二十四歳であると思われた立候補者が、選挙の期日の延期によって、選挙の当日またはそれより前に二十五歳を迎える可能性も、ないではない。そうすると、「地方公共団体の長の選挙については、特に選挙の期日を延期してまで補充候補者を許しているところから見れば、法律の趣旨はなるべく同法第一〇〇条による無投票当選を避ける趣旨と考えられ」るから(前記の判決より引用)、同法によって公職の候補者となることができない者ではなく、単に年齢が二十五歳に達していないというだけで選挙長が立候補の届出を受理しないという判断を下すことは相当ではないように思える。

1 一般に、選挙の告示日には未だ被選挙権年齢に達していないが、選挙の当日までに年齢要件を満たし被選挙権を得る可能性のある者について、選挙長はその者の立候補届を受理すべきか。

2 一般に、地方公共団体の長の選挙について、選挙の当日までに被選挙権の年齢要件を満たさないが、届出に必要な書類の不備がない者について、選挙長はその者の立候補の届出を却下することができるか。選挙長は実質審査権がないこと及び選挙の期日の延長がありうることを踏まえて答弁されたい。

3 一般に、同法第八十六条の四第八項の規定により立候補する選挙延期の告示日には二十五歳ではないが当該選挙の期日の三日前までに二十五歳に達する補充候補者が、告示日当日に書類の不備なく立候補を届け出た場合、選挙長は当該立候補の届出を却下することができるか。昭和二十七年十月三十一日最高裁判所第二小法廷判決(民集六巻九号九五四頁)の判示「立候補の適格を有しない者が立候補の届出をした場合にはその届出は固より違法なものではあるがその立候補者が立候補届出期間内に立候補者たる適格を有するに至つた場合にはその適格を有するに至つた時から右立候補届出が効力を生ずるものと解するを相当とする。」を踏まえて答弁されたい。

二 政府は、被選挙権と公職の候補者になる権利(立候補の届出を却下されない権利)の違いを把握しているか。公職の候補者となることができない者は、公職選挙法第八十六条の八第一項、同法第八十七条第一項、同法第八十七条の二、同法第八十八条、同法第二百五十一条の二及び同法第二百五十一条の三と限定的に規定されていることを踏まえて答弁されたい。
 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。また、答弁書の文字がいわゆる青枠の五ミリ以内に収まっていなくてもかまわない。

  右質問する。