質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第八五号

介護福祉士養成施設卒業者への国家試験義務付けに係る現行五年間の経過措置の延長に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年三月二十七日

舩後 靖彦


       参議院議長 山東 昭子 殿



   介護福祉士養成施設卒業者への国家試験義務付けに係る現行五年間の経過措置の延長に関する質問主意書

 去る三月六日に「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」(以下「本改正案」という。)が提出されました。本改正案要綱の中に、「第六 社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律の一部改正」として、「平成二十九年度から令和八年度までの間に介護福祉士の養成施設を卒業した者については、当該卒業した日の属する年度の翌年度の四月一日から五年間、介護福祉士となる資格を有するものとすること。(附則第六条の二第一項関係)」が含まれています。つまり、介護福祉士養成施設卒業者への国家試験義務付けに係る現行五年間の経過措置を、さらに五年間延長することになります。
 しかし、本改正案は介護福祉士の社会的地位や質の向上に資するとは思えません。このため、政府としての認識をお尋ねしたく存じます。

一 第二十三回及び第二十四回社会保障審議会福祉部会において、「介護福祉士養成施設卒業者への国家試験義務付けの経過措置延長」を要望したのは、全国老人福祉施設協議会と日本介護福祉士養成施設協会の代表委員二名のみでした。日本介護福祉士会、全国福祉高等学校長会、日本社会福祉士会等の代表委員からは経過措置の延長には反対の意見が出されました。多くの反対意見があったにもかかわらず、なぜ政府側はこのような本改正案を提出されたのか、理由をお示し下さい。

二 平成二十九年度より介護福祉士養成施設卒業生の国家試験受験が始まり三年経過しました。平成二十九年及び平成三十年度の卒業生の中で、国家試験不合格者及び国家試験未受験者で介護福祉士として従事している方の人数をお示しください。また、今後七年間における介護福祉士の輩出見込み人数もお示しください。

三 国家試験に合格せずに介護福祉士として従事することは、介護ニーズの多様化・高度化の進展に対応できる資質を担保し、社会的な信頼と評価を高める(第二十三回社会保障審議会福祉部会 資料二)ということに矛盾すると考えます。医療的ケアの実技の達成度をはじめ各教科の修了要件は、各介護福祉士養成施設の裁量に委ねられている実情があります。現在、新型コロナウイルスのクラスターが福祉施設や医療機関において増加していますが、感染症対策をしっかり学んだ生活支援の専門職としての介護福祉士が必要です。求められる介護福祉士像を実現し、質を担保するためには、介護福祉士国家試験に合格することは最低条件と考えますが、政府のご見解をお示しください。

四 前記三で述べた通り、国家試験合格は介護福祉士の質を担保するため不可欠と考えます。このため、養成施設ごとの合格率を公表すべきと考えますが、政府のご見解をお示しください。

五 介護福祉士養成施設卒業者への国家試験の義務付けの延長の背景には、留学生の合格率の低さが挙げられており、介護福祉士養成施設卒業生で国家試験不合格者や国家試験未受験者が、介護福祉士の資格保持者として、介護現場に輩出されています。日本における介護福祉専門職としての資格の価値を低下させてしまうのではないかという懸念が現場から出ております。そうならないためにも、国家試験に合格できるよう教育支援や就労支援を政府としてどのように充実させようとしているのか、ご見解をお示しください。

  右質問する。