質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第八四号

インフルエンザ脳症の患者数の確認と治療法の確立に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年三月二十三日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿



   インフルエンザ脳症の患者数の確認と治療法の確立に関する質問主意書

 新型コロナウイルス感染症が大きな問題となっている現在、政府においてはその対応に日々ご尽力されていることと存じます。
 ただし、実際のところ、新型コロナウイルスと季節性のインフルエンザの感染力はほぼ同等であるとのデータがあり、観察期間が異なるという面はあるものの、季節性インフルエンザにより我が国でも年間約三千人が亡くなっている現状においては、未知の新型ウイルスを軽視するわけではないが、季節性インフルエンザも同様に恐ろしい感染症であると言える。
 今回は、「インフルエンザ脳症」について質問する。インフルエンザ脳症とは、インフルエンザウイルスが原因となり引き起こされる合併症の中でも最も重篤なもので、昨年は三百四十四件の患者数が報告されており、死亡に至るケースも毎年十例前後報告され、重い後遺症が残るケースも散見される非常に恐ろしい疾患である。このインフルエンザ脳症は、毎年のように大流行を繰り返すインフルエンザウイルスが原因となっていること、また、ワクチン接種の有無にかかわらず老若男女問わず誰もが罹患する可能性があり、発症後に重症化する可能性も際立って高いことから、国民生活の安心・安全を守っていくために見過ごすことができる疾患ではない。さらに、この疾患は、新型コロナウイルスが引き起こす肺炎等と同様に、免疫系の暴走によるサイトカインストームが原因となり多臓器不全を引き起こし、わずか数時間のうちに死亡に至ることもある。どういった条件下で発症するのかの原因の特定は進んでおらず、特に有効な治療法もなく対症療法のみとなっている。
 先日も、岡山県津山市在住の健康そのものであった五歳の女児がインフルエンザ脳症が原因で突然命を落とすことになった。こうした命を決して無駄にすることがないよう、発症メカニズムの解明や適切な治療法の確立とともに、国民にインフルエンザ脳症の脅威についての認知を広げたいと考えている。
 インフルエンザワクチンの接種によりインフルエンザ脳症を防ぐことができる、あるいは逆にワクチンや解熱剤が原因となっている薬害であるとの主張等もあるようだが、実際のところワクチンの接種とインフルエンザ脳症発症の間には相関関係は認められていない。
 そもそも、インフルエンザウイルスの種類の多さを考えたときに、ワクチン接種自体の予防効果も決して万全とは言えないことからも、インフルエンザ脳症の罹患・発症に対する完全な予防法は現在のところ存在しない。実際にインフルエンザワクチンを接種していてもインフルエンザ脳症に罹患するケースも存在している。
 「インフルエンザ脳症ガイドライン」という厚生労働省インフルエンザ脳症研究班により作成されたガイドラインがあるが、改訂版でさえ平成二十一年九月現在のものである。
 右を踏まえて、政府の見解を問う。

一 インフルエンザ脳症の過去五年間の年齢別の患者数およびインフルエンザ脳症が主な原因とされる患者の死亡者数を伺いたい。

二 インフルエンザ脳症ガイドラインの作成後、インフルエンザ脳症に関して予防法や治療法などの進展はあったか。

三 インフルエンザ脳症に関する研究支援の現状を伺いたい。
 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁を求めない。国会法七十五条二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。

  右質問する。