質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第七一号

コンセッション研修やセミナー等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年三月五日

吉田 忠智


       参議院議長 山東 昭子 殿



   コンセッション研修やセミナー等に関する質問主意書

 令和元年十一月一日に提出した「コンセッション事業に関する研修やセミナー等に関する質問主意書」(第二百回国会質問第五一号。以下「前回質問主意書」という。)に対する答弁(内閣参質二〇〇第五一号)の一についての中で、コンセッション方式によるPFI事業(以下「コンセッション事業」という。)の導入による公務員への研修の必要性について「地方公務員に対する研修に関するものであり、政府としてお答えする立場にない」としていることについて、以下改めて質問する。

一 コンセッション事業は、これまでの指定管理者制度などのアウトソーシング(外注化)とは、特にその質と規模が異なる。
 特に中小の自治体が置かれている状況は、財政的にも人員的にも厳しいものがある。コンセッション事業に携わる公務員に対して「専門性」の向上を求めることについては、地方自治体で決めることではあるが、そのための研修等をどのようにすべきか、政府として全国的な統一的なマニュアルが求められているのではないか。

二 前回質問主意書において述べた「専門性」とは、「公共サービス」の事業においてコンセッション事業が導入されることによって、「資本」、「資本化」あるいは「収益」が大きな比重を占め、かつ長期間続くことにより、公務員として投資、金融、財政、会計等に関する知識を求められることが想定されることを意味する。このため、公務員の「専門性」の向上のために、例えば今後、「公務員試験」や「職員研修」において、コンセッション事業に関係する問題をこれまでよりも重視し、充実を図るなど、政府としても何らかの「指針」を明らかにすべきではないか。

三 前記二に関係するが、「専門性」の向上のために、現在も少数ながら行っている公務員の金融機関への派遣、専門的な大学、大学院、ビジネススクールなどへの受講派遣などについて、充実を図るために財政的かつ組織的な体制の確立が求められているのではないか。

四 コンセッション事業は、市町村の合併を促進するのではないかと言われているだけに、同事業に関する研修は、国、地方(都道府県、大都市、中小の市町村)の公務員を対象として、統一的かつ計画的なものにすべきであると思われる。政府は、職員が黙ってコンサルタント企業やインフラ関係企業の話を一方的に「受講」するしかないという傾向に歯止めをかけ、置かれている自治体の共通する問題を認識する場として研修やシンポジウムなどを設定するよう指導的な役割を果たすべきではないのか。

五 コンセッション事業は「収益性」が大きな比重を占めるために、従来の公務員の監視業務も異なってくる。これまでは、多くの場合決められた規則の「数値内に収められているかどうか」など「点検」中心の業務であった。しかし、コンセッション事業の「収益性を求める」ことに伴うモニタリングについては、これまでとは大きく異なるため、研修の充実があらためて求められている。
 つまり、コンセッション事業の「投資化」に伴う監視は、内容が総合的かつ複雑で多岐にわたっているうえに、資本の運動として発展しており、その期間も二十年から三十年という長期なスパンである。こうしたコンセッション事業の「投資化」に伴う監視については、「公共施設等運営権及び公共施設等運営事業に関するガイドライン」では、抽象的な表現にとどまっている。
 また、モニタリングする側の公務員の「能力の向上」及び「体制の確立」についても、同ガイドラインで具体的に述べられていない。公認会計士などに聞けばよいということにはならないのではないか。
 「能力の向上」とは、例えば、県庁では、コンセッション事業に対応する「専門職」の設置などを意味する。また、「体制の確立」とは、事業コンセッションに対応する「係」や「課」の設置、あるいはPT(プロジェクトチーム)の設置などを意味する。これらをガイドラインに明記するとともに、各自治体の全職員へのコンセッション事業についての研修を進めるうえでこうした組織を設けるべきではないか。
 政府は、地方公務員への研修については、地方自治体が決めることとするが、実際には、コンセッション事業は、国家的なレベルで進められることであるため、地方自治体が独自に取り組むことと重なることがあっても、研修やセミナー等のあり方について、政府として「指針」や「マニュアル」等を作成すべきと考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。