質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第六〇号

中東地域における日本関係船舶の防護と国際法上の旗国主義に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年二月二十七日

白 眞勲


       参議院議長 山東 昭子 殿



   中東地域における日本関係船舶の防護と国際法上の旗国主義に関する質問主意書

 政府は、「中東地域における日本関係船舶の安全確保に関する政府の取組について」(令和元年十二月二十七日国家安全保障会議決定、閣議決定。以下「閣議決定」という。)に基づき、中東地域における日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集活動を実施するため、自衛隊の艦艇及び航空機を派遣しているものと承知している。
 本件に関し、以下質問する。

一 閣議決定においては、日本関係船舶について、「日本籍船及び日本人が乗船する外国籍船のほか、我が国の船舶運航事業者が運航する外国籍船又は我が国の積荷を輸送している外国籍船であって我が国国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶をいう」ものとしている。このうち、「日本人が乗船する外国籍船」については、日本人が一人でも乗船していれば該当するのか、あるいは、一定数の日本人が乗船していなければならない等の何らかの基準が設けられているのか。何らかの基準が設けられている場合は、その基準も示されたい。

二 日本関係船舶のうち、「我が国の積荷を輸送している外国籍船であって我が国国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶」は、当該外国籍船が輸送する全ての積荷が我が国を仕向地とするものでなければならないのか。例えば、自動車運搬船の場合には、複数の港に寄港しながら運航していることもあると聞いているが、我が国を仕向地とする積荷のほか、第三国を仕向地とする積荷もあわせて輸送する外国籍船も日本関係船舶に該当するのか。一定の割合で我が国を仕向地とする積荷を輸送していなければならない等の何らかの基準が設けられているのか。何らかの基準が設けられている場合は、その基準も示されたい。また、「我が国国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶」とは具体的にどのような船舶をいうのか。積荷によって我が国国民の安定的な経済活動にとって重要か否かを判断するのであれば、どのような積荷であれば「我が国国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶」に該当するのか。また、どのような積荷であれば該当しないのか、具体的に説明されたい。

三 政府は、日本関係船舶に対する不測の事態が発生した場合において、自衛隊による更なる措置が求められる場合には、自衛隊法第八十二条の規定に基づく海上警備行動を発令して対応するとする一方、公海上における外国籍船の防護については、国際法上、一般的には当該船舶への排他的管轄権を有する旗国がその責任のもとに行うべきとの旗国主義の考えに基づき対処することが基本であるとして、日本関係の外国籍船の防護に際して、自衛隊は、実力の行使を伴わない措置等をとる旨答弁している(令和二年一月二十三日衆議院本会議における安倍内閣総理大臣答弁等)。政府として、日本関係の外国籍船の防護については、武器の使用を伴う措置をとることができないと考えているのか、明確にされたい。また、このような政府の見解は、どのような国際法上の根拠に基づき導き出されたものなのか。具体的な条約、判例等を示されたい。

四 前記三で挙げた答弁のとおり、公海上における外国籍船の防護について、国際法上、一般的には当該船舶への排他的管轄権を有する旗国がその責任のもとに行うべきとの旗国主義の考えに基づき対処することが基本であるということであれば、旗国の同意を得ることにより、侵害行為を受けている当該外国籍船の防護も可能となるのか。その際、旗国の同意はどのように得るのか。当該外国籍船の船長から、武器の使用を含む実力の行使を伴う措置をとってほしい旨の緊急性のある強い要請を受けた場合、それは旗国の同意を得たことになるのか。また、事前に旗国の同意をとってしまえば、防護対象となる船がどこの船籍であっても、国際法上、武器の使用を含む実力の行使を伴う防護が可能となるのではないか、政府の見解を示されたい。

五 過去の政府答弁には、「公海におきましては、(中略)旗国以外の国の執行管轄権の行使を受けないという旗国主義という原則がある」との答弁(平成十八年十二月十四日参議院国土交通委員会における小松外務省国際法局長答弁)や、「国際法上、公海上にございます船舶はその旗国の排他的管轄権に服するので、当該船舶に対しまして船舶検査活動を実施するためにはその旗国の同意を得る必要がございます」との答弁(平成十二年十一月二十八日参議院外交・防衛委員会における谷内外務省条約局長答弁)など、国際法上の旗国主義に関して、他国を旗国とする船舶への乗船、臨検等の措置は原則として認められないといった観点から説明するものが確認できる。現在、政府は、海上警備行動発令時の日本関係船舶の防護に関して、被害船舶が日本籍船か外国籍船かによって実力の行使を伴う措置等をとることができるか否かを判断するとし、これを国際法上の旗国主義の原則に基づくものと説明しているが、国際法上の旗国主義の原則において問題となるのは、被害船舶の国籍ではなく、侵害行為等を行う船舶の国籍ではないのか。海上警備行動発令時に、日本関係船舶のうち外国籍船の防護に際しては実力の行使を伴う措置等は認められないとする理由を、国際法上の旗国主義の原則に求めることは適切な解釈なのか。政府の見解を示されたい。

  右質問する。