質問主意書

第200回国会(臨時会)

答弁書


内閣参質二〇〇第一二二号
  令和元年十二月二十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員小西洋之君提出七・一閣議決定及び武力行使の新三要件並びに存立危機事態等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出七・一閣議決定及び武力行使の新三要件並びに存立危機事態等に関する質問に対する答弁書

一について

 現在の我が国を取り巻く安全保障環境に照らしても、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)における「我が国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容し、変化し続けている状況を踏まえれば、今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしても、その目的、規模、態様等によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る」との政府の認識に変わりはない。

二について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、「武力の行使」の三要件の第一要件にいう「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」とは、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち、その状況の下、武力を用いた対処をしなければ、国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということをいうものと解されるところであり、また、ある事態がこれに該当するか否かについては、実際に他国に対する武力攻撃が発生した場合において、事態の個別具体的な状況に即して、主に、攻撃国の意思・能力、事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断する必要があると解される。「究極の手段である武力」、「戦禍」及び「犠牲」を含む御指摘の平成二十六年七月十四日の衆議院予算委員会における横畠内閣法制局長官(当時)の答弁は、このことを述べたものである。

三について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、先の答弁書(平成二十七年十月六日内閣参質一八九第三六四号)で述べたとおり、「武力の行使」の三要件は、御指摘の「基本的な論理」を維持し、この考え方を前提として、我が国を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえ、この「基本的な論理」に当てはまる例外的な場合として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるとしてきたこれまでの認識を改め、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合もこれに当てはまるとしたものである。すなわち、国際法上集団的自衛権の行使として認められる他国を防衛するための武力の行使それ自体を認めるものではなく、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、一部、限定された場合において他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどまるものである。

四について

 お尋ねについては、先の答弁書(平成三十一年二月二十二日内閣参質一九八第一二号)一及び二についてで述べたとおりであり、この政府の認識に変わりはない。