質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七八号

ローマ教皇の核廃絶演説に対する政府の受け止めに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十一月二十八日

熊谷 裕人   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   ローマ教皇の核廃絶演説に対する政府の受け止めに関する質問主意書

 フランシスコ・ローマ教皇は、日本各地でミサやスピーチを行い、力強いメッセージを発信したのち、本年十一月二十六日、帰国した。
 教皇は、「核兵器なき世界」に向けてすべての人が「一致団結」すること、また、特に若い世代に対しては、他者と命を分かち合うことの大切さを説いた。教皇の訪日の意義はとても大きいものと考えられる。
 同月二十四日、教皇は被爆地の広島、長崎で行った演説で、「核兵器を所有することは、平和の望みへの最良の答えではない」、「核戦争の脅威で威嚇しながら平和を提案できるのか」と指摘し、特に核兵器による「抑止力」を強く否定した。また、武器開発を「テロ行為」と糾弾し、「戦争のための原子力使用は犯罪」と言い切った。
 時事通信によると、長崎大学核兵器廃絶研究センター長の吉田文彦氏は「ここまで強い表現での核兵器批判はあまり目にしない。それを爆心地で言ったのはかなりの決意を持っているからだ」と指摘した。
 教皇はカトリックの最高指導者であるとともに、バチカンの国家元首でもある。バチカンは核兵器禁止条約を最初に批准した三カ国の一つである。核兵器禁止条約の発効には五十カ国の批准が必要だが、現時点で批准国は三十三カ国にとどまっている。日本を含む多くの国がロシアと並ぶ核大国である米国の「核の傘」に依存している実情があり、日本も核兵器禁止条約を批准していない。
 同月二十五日、菅官房長官は記者会見で、教皇が重視する核兵器禁止条約について「核を含めた米国の抑止力を維持・強化していくことが現実的で適切な考え方」と発言し、その批准に否定的な見解を示した。教皇はその後、安倍総理と会談したが、「核なき世界」の実現をめぐる両者の溝は埋まることはなかったと承知している。
 右を踏まえて、以下質問する。

一 バチカンの国家元首でもある教皇の核廃絶を求める演説にかかわらず、「核を含めた米国の抑止力を維持・強化していくことが現実的で適切な考え方」という政府の方針は変わらないという理解でよいか。

二 教皇の「核兵器を所有することは、平和の望みへの最良の答えではない」との演説に対する政府の見解如何。

三 前記一及び二に関連して、「核を含めた米国の抑止力を維持・強化していくこと」は、教皇のいうところの「最良の答えではない」としても、次善策であり、現実的な安全保障政策上の選択肢であると政府は考えているという理解でよいか。

四 前記一から三を踏まえ、日本が核兵器禁止条約の批准を現時点では考えていないことに変わりはないのか。政府の見解如何。

  右質問する。