質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五三号

コンセッション事業の導入に伴う労働者の労働条件の変化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十一月七日

吉田 忠智   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   コンセッション事業の導入に伴う労働者の労働条件の変化に関する質問主意書

 コンセッション方式によるPFI事業(以下「コンセッション事業」という。)が導入されることに伴い、行政サービスの職場で働く労働者の労働条件が大きく変わると予想されるが、このことについて伺う。

一 各自治体が、コンセッション事業を導入する場合、職場で働く労働者(公務員、非公務員を問わない。)、あるいは職員労働組合又は過半数の職場代表者に対して、労働条件などについて誠意を持って交渉や協議、説明を行うことが求められる。政府は、全国の自治体が「管理運営事項」を理由に、労働者と労働条件などの交渉や協議、説明を行わないことがないように、関係省庁、地方公共団体、関係団体に対し周知徹底を図るべきではないか。政府の見解を明らかにされたい。

二 コンセッション事業の導入に伴い、労使協議や説明を行う際に職場に労働組合がない又は、あっても労働組合の組織率が過半数に達していない場合、使用者側が労働者の代表に対して具体的にどのように対応するべきかが示された統一的な方針やマニュアルはあるか明らかにされたい。

三 コンセッション事業を導入する場合、運営権譲渡先の民間企業に自治体職員を公務員の身分を有したまま派遣することはできないとされている。そのため、「転籍」により非公務員化するという法的システムが用いられるが、政府は、自治体やその職員に転籍のシステムについて統一的な説明を行っているか明らかにされたい。

四 多くの公務員、あるいは労働組合の役員は、たとえ自治体の財政状態がどうであろうと、また、リストラがあろうと退職まで公務員の身分でいられ、クビにならないことを常識と考えている。
 しかし、国家公務員法第七十八条、地方公務員法第二十八条を適用することによって「整理解雇」、すなわち分限免職が法的には可能となっている。
 コンセッション事業の導入に伴い、自治体職員が運営権譲渡先の民間企業への転籍を拒否した場合、分限免職されることはあるか。
 コンセッション事業の導入によって、あるいは元の自治体の職員定数が減ることによって、転籍した公務員が元の職場(自治体)に戻ることを希望しても、元々いた部署が無いか、あるいは過員となり、結果として分限免職される可能性はあるか。こうした場合の元公務員の処遇について明らかにされたい。

五 これまで厚生労働省をはじめとしたPFI研究プロジェクトは、コンセッション事業の導入に伴う雇用問題について、EU(ヨーロッパ連合)で導入されているTUPE(事業を譲渡する会社の雇用を守ることを目的とした法規制)について研究・討議してきた。現在、政府はTUPEについて、どのような見解を持っているのか明らかにされたい。

六 コンセッション事業の導入により、転籍した者が、それまで勤めていた自治体以外の地域や外国に異動、派遣、出向となることはありえるか。また、こうした場合、これを拒否するとその者の処遇はどうなるか明らかにされたい。
 また、コンセッション事業の導入に伴い、転籍する自治体職員の基本賃金、勤務時間、勤勉手当などの労働条件についても変更があると思われる。そのため、転籍した自治体職員(公務員、非公務員を問わない。)が、それまでの労働条件の水準を維持することを要求したにもかかわらず、実際に新たな職場で提示された労働条件がそれまでの水準を下回った場合、これを拒否することは可能か。また、提示された労働条件を拒否するとその者の処遇はどうなるのか明らかにされたい。

七 コンセッション事業の導入に伴う運営権譲渡先の民間企業が倒産した場合、転籍した自治体職員は、元の職場(自治体)に戻れるか。また、その場合、運営権譲渡先の民間企業が倒産した時点で整理解雇されることになるか。運営権譲渡先の民間企業の倒産及びそれに伴う整理解雇は、全て当該企業の責任であって、運営権譲渡元の自治体には責任がないのか。運営権譲渡元の自治体にも責任があるとすれば、どのような責任があるのか。
 また、転籍した自治体職員には雇用保障期間があるのか。転籍から二十年、三十年後においても雇用が保障されるのか明らかにされたい。

  右質問する。