質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四五号

六ケ所再処理工場等貯蔵の高レベル廃液の重大事故評価が旧西ドイツ政府の大事故評価と異なること等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十月三十日

川田 龍平   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   六ケ所再処理工場等貯蔵の高レベル廃液の重大事故評価が旧西ドイツ政府の大事故評価と異なること等に関する質問主意書

 日本原燃株式会社六ケ所再処理工場及び日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所の再処理廃止措置技術開発センター(以下「両再処理工場」という。)に貯蔵されている高レベル放射性廃液(以下「高レベル廃液」という。)の冷却が止まると、旧ソ連キシュテム再処理施設の事故(以下「ウラル核惨事」という。)のような事態や、旧西ドイツ原子炉安全研究所が作成した再処理工場の大事故評価に係る報告書(以下「IRS―290報告」という。)にある「国民の半数死亡」との事態が現実になる可能性がある。
 原子力規制委員会設置法の目的を定める同法第一条には「原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならない」とあり、また、同法第二十五条には「保有する情報の公開を徹底することにより、その運営の透明性を確保しなければならない」とある。二〇一八年十一月九日に私が提出した「六ケ所再処理工場の新規制基準適合性審査に関する質問主意書」(第百九十七回国会質問第二〇号)に対する答弁書(内閣参質一九七第二〇号)は、同法第二十五条が原子力規制委員会に義務づけている情報公開や透明性が守られていない回答に終始していた。不都合な質問だからといって説明しないことこそ、重大事故への道ではないか。人々へ真実を知らせ一緒に考えることが重大事故を防ぐ道ではないか。
 以上を踏まえ、私は第百九十八回国会において、我が国の原子力施設において人々を不幸に陥れる重大事故を二度と起こすことがないように、両再処理工場に貯蔵されている大量の高レベル廃液の危険性の評価について質す質問主意書(第百九十八回国会質問第八一号)を提出したが、政府から十分な答弁が得られなかったため、改めて質問する。

一 IRS―290報告では「高レベル廃液貯槽事故で放出される放射性物質の割合」として、代表的な二十四元素について蒸発乾固後の溶融揮発による環境放出割合が示されている。
 しかるに、本年一月二十八日に行われた第二百五十七回核燃料施設等の新規制基準適合性に係る審査会合の資料二―二「蒸発乾固に係る評価の再整理」では、六ケ所再処理工場の高レベル廃液に含まれる多種多様な放射性核種のうち、環境放出が評価されているものはルテニウムだけであり、IRS―290報告で環境放出評価の対象とされているストロンチウムやセシウム、アメリシウム等の重要危険放射性元素(核種)の環境放出評価が全く行われていないのはなぜか。

二 IRS―290報告では、再処理工場の大事故時に住民の受ける推定被ばく線量(放出点からの距離における決定臓器毎の被ばく線量)を評価しているが、両再処理工場について、重大事故時に住民の受ける推定被ばく線量を評価し、公開しないのはなぜか。

三 ウラル核惨事では、「高レベル廃液の貯槽が爆発を起こした。主な放射性物質はストロンチウム90であり、幅三十から五十キロメートル、長さ三百キロメートルにわたり汚染が起きた」旨が原子力百科事典「ATOMICA」に記述されている。ウラル核惨事は、国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル六とされた。このような事故は、両再処理工場で絶対に起きないのか。起きないとする場合、その根拠を示されたい。また、両再処理工場において現に貯蔵されている高レベル廃液中の有機物の混入割合を示されたい。

四 本年三月二十日に行われた第六十七回原子力規制委員会の資料四「日本原燃株式会社再処理事業所における再処理の事業の変更許可申請書に関する審査書(案)」や前記一の「蒸発乾固に係る評価の再整理」を見ると、高レベル廃液の冷却が止まり、蒸発乾固後の水分の存在しない領域で出現する放射性物質の揮発、爆発、貯槽損傷といった危険の種類が挙げられているだけであり、どの高レベル廃液の貯槽も蒸発乾固後、あたかも自然に事故が収束するかのような申請書の文言そのままで、新規制基準適合性審査を終了しようとしている。これは、使用済燃料の再処理の事業に関する規則第一条の三第二号で「液体状の放射性廃棄物を冷却する機能が喪失した場合にセル内において発生する蒸発乾固」が重大事故の一類型とされていることを根拠に、新規制基準適合性審査においては蒸発乾固に係る評価さえ行えば足りると政府が考えているためと思われる。しかし、蒸発乾固に引き続いて起きる放射性物質の溶融、揮発、爆発、貯槽損傷こそが真の重大事故につながるものではないのか。高レベル廃液の危険性の判断を、蒸発乾固に係る評価のみで済ませ、溶融、揮発、爆発、貯槽損傷といった放射性物質の真の危険性を評価せず済ませることは、国民を重大事故から守るために設けられたはずの使用済燃料の再処理の事業に関する規則の看過できない不備と思われるが、この点についての見解を示されたい。

  右質問する。