質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二六号

景気判断の下方修正に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十月十一日

熊谷 裕人   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   景気判断の下方修正に関する質問主意書

 内閣府は、二〇一九年八月の「景気動向指数」の基調判断を景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に下方修正した。基調判断が「悪化」となるのは同年四月以来で四か月ぶりである。
 一方、政府の公式な判断を示す「月例経済報告」では、景気全体としては「緩やかに回復している」という判断が続いており、景気動向指数の基調判断との違いが鮮明となっている。
 もっとも、二〇一九年十月一日に消費税率が十%に引き上げられたことで、これまで国内景気を下支えしてきた個人消費が落ち込むことが懸念され、日本の景気の動向は不透明感を増している。
 これらを踏まえ、以下質問する。

一 今回、景気動向指数の基調判断が「悪化」となった要因は、企業の生産性の低迷が続いていることにあると考えるが、これは米中の貿易摩擦が激しくなっている影響で、世界経済が減速し、日本からの輸出が減少しているからではないか。政府の見解如何。

二 過去に景気動向指数の基調判断が「悪化」となったのは、リーマン・ショック前後の二〇〇八年六月から二〇〇九年四月、欧州債務危機時の二〇一二年十月から二〇一三年一月の二回に加えて、二〇一九年四月および今回発表された八月であると承知している。また、「悪化」と判断された期間は専門家が事後的に判定した景気後退期と重なることが多いことが知られている。「悪化」と判断された二〇一九年八月の状況は、政府の多用する「リーマン・ショック級の出来事」が生じた状況に匹敵し、「月例経済報告」のように景気全体が「緩やかに回復している」とは言えず、景気後退の局面に入っていると認識すべきではないか。政府の見解如何。

三 二〇一九年十月七日の記者会見において、岡田内閣官房副長官は、「日本経済は九月の月例経済報告で、輸出を中心に弱さが続いているものの、緩やかに回復していると判断しており、雇用、所得環境の改善、高い水準にある企業収益など、内需を支えるファンダメンタルズ(経済の基礎的な条件)は引き続きしっかりしていると認識している」旨説明しているが、この説明は景気動向指数の基調判断と一致しないのではないか。

四 日本経済の悪化の要因は、中国の景気が減速したこと、ドイツのGDPがマイナス成長に落ち込んだこと、アメリカの製造業の景況感を示す経済指標が大きく低下したことなどの世界経済の動向に影響を受けたことにあると考える。さらに、消費税率が十%に引き上げられたことで、これまで国内景気を下支えしてきた個人消費が落ち込むことが懸念されている。前記三の記者会見において、岡田内閣官房副長官は「軽減税率あるいはポイント還元、プレミアム商品券、自動車や住宅に関する減税などの対策によって、消費をしっかり下支えをし、経済の回復基調を確かなものにしてまいりたい」と述べているものの、その程度の対策で落ち込んだ個人消費を補うことは難しいのではないか。政府の見解如何。

五 国民の多くは景気全体が「緩やかに回復している」とは実感しておらず、政府の判断との間に齟齬がある。政府はこのような国民との認識の違いをどのように考えているのか。あるいは政府の判断と国民の認識との間に齟齬はないと考えているのか。政府の見解如何。

  右質問する。