質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一九号

北朝鮮籍と見られる漁船のわが国のEEZ内での違法操業に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十月九日

熊谷 裕人   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   北朝鮮籍と見られる漁船のわが国のEEZ内での違法操業に関する質問主意書

 令和元年十月七日午前九時頃、能登半島から北西に約三百五十キロの沖合に位置するわが国の排他的経済水域(EEZ)内にある「大和堆」と呼ばれる海域の付近で、北朝鮮の国旗のようなものを付けた漁船(以下「本漁船」という。)と水産庁の漁業取締船「おおくに」が衝突した。本漁船は沈没し、乗組員ら約六十人が海に投げ出されたが、乗組員らは水産庁の救命いかだなどに引き揚げられた後、付近にいた別の北朝鮮籍と見られる漁船に乗り移り、わが国のEEZを離れた。この衝突を受け、海上保安庁も巡視船などを現場に派遣したが、本漁船の乗組員の身柄を拘束しなかった(以下「本件事案」という。)。
 以上のことを踏まえ、以下質問する

一 北朝鮮籍と見られる漁船は、これまでにもイカやカニなどが豊富な漁場である大和堆付近をはじめとするわが国のEEZ内で操業を繰り返しているが、かかる行為は日本の法令上、違法ではないのか。違法であるとすれば、どのような法令に違反するのか。

二 本漁船は、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律第四条ないしは第五条に違反する行為をしていたのか。政府の把握するところを示されたい。

三 前記二について、本件事案の発生時に、本漁船に同法に違反する行為が確認されなかったとしても、北朝鮮からわが国のEEZ内まで航行してきたことから、同法で禁じられている違法操業を行う目的があったと見るべきである。本漁船の乗組員が同法第二条第四項でいう「外国人」であるか否か等を確認するためにも、当該乗組員の身柄を確保し、聞き取りを行うべきだったのではないか。

四 本件事案において、本漁船の乗組員の身柄を確保せずにわが国のEEZから追い返した理由は、本漁船が漁船に偽装された工作船であることも否定できず、過去の不審船事例から武器を隠し持っていることも考慮に入れ、水産庁や海上保安庁の職員の身体の安全を勘案したためという理解でよいか。

五 ロシア連邦保安庁の発表や報道によると、ロシアの国境警備隊は本年九月十七日以後少なくとも四回、ロシアのEEZ内で違法操業をしていた北朝鮮漁船を摘発し、五百七十人以上の乗組員を拘束している。中には、北朝鮮漁船側が武器で抵抗したためロシア側も反撃し、北朝鮮漁船の乗組員が死傷した事例もある。ロシアは北朝鮮漁船による違法操業の取り締まりを強化していると見られ、ロシアのEEZから追い出された北朝鮮籍と見られる漁船が、わが国のEEZ内での違法操業を活発化させていると考えられる。
 政府は北朝鮮籍と見られる漁船をわが国のEEZから追い返すのではなく、悪質な違法操業を行う漁船の乗組員の身柄を拘束するなど取り締まりを強化し、北朝鮮籍と見られる漁船にわが国のEEZ内で違法操業をすることは割に合わないということを認識させるような手立てを講ずるべきではないか。政府の見解如何。

  右質問する。