質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七号

文化庁のあいちトリエンナーレへの補助金不交付措置に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十月四日

熊谷 裕人   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   文化庁のあいちトリエンナーレへの補助金不交付措置に関する質問主意書

 令和元年九月二十六日、文化庁は、あいちトリエンナーレにおける国際現代美術展開催事業については、文化庁の文化資源活用推進事業の補助金審査の結果、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「補助金適正化法」という。)第六条等に基づき、全額不交付とすること(以下「今次のあいちトリエンナーレの事例」という。)を明らかにした。
 文化庁はその理由として、「愛知県は、展覧会の開催に当たり、来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、それらの事実を申告することなく採択の決定通知を受領した上、補助金交付申請書を提出し、その後の審査段階においても、文化庁から問合せを受けるまでそれらの事実を申告しませんでした」としている。また「審査の視点において重要な点」の一つには、「実現可能な内容になっているか」があり、「文化庁として適正な審査を行うことができませんでした」ともしている。
 今次のあいちトリエンナーレの事例は、事実上の事後検閲であり、芸術文化の振興に関し、重大な萎縮効果を生じさせるという指摘もある。
 以上のことを踏まえ、以下質問する。

一 今次のあいちトリエンナーレの事例は、事実上の事後検閲であり、表現内容が不適切であるため文化庁は全額不交付にしたとの指摘があるが、文化庁の処分は事後検閲にあたらないとの理解でよいか。

二 補助金が全額不交付となることで、交付対象だった企画自体が中止になることもありうるが、今次のあいちトリエンナーレの事例は、「文化の振興」及び「国際文化交流の振興」等を図るとの文部科学省設置法上の文化庁の任務には反していないという理解でよいか。また、補助金を全額不交付とした理由は、実現可能な内容になっていないためであるという理解でよいか。

三 前記二に関連して、実現可能な内容になっていないということは、文化庁として展示物の表現内容を審査した上で、展示物が政治的な対立を生じさせかねず、「展覧会の開催に当たり、来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実」が生じかねないと判断したという理解でよいか。

四 今次のあいちトリエンナーレの事例は、文化庁の判断により補助金が全額不交付になる前例であり、今後も、政治的な対立もしくは政治的主張を包含する表現内容については、「展覧会の開催に当たり、来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実」が生じかねないと文化庁に判断され、容易に補助金が全額不交付とされかねないという懸念を持たざるを得ない。文化庁は、表現内容の持つ政治的主張を今次の補助金審査の判断材料にしたのではないか。政府の見解如何。

五 補助金適正化法第六条は、各省各庁の長が補助金等の交付の決定をするに当たっては、当該申請に係る書類等の審査及び必要に応じて現地調査等を行うことを課している。文化庁は、補助金不交付の理由として愛知県の不手際を一方的に責め立てているが、文化庁の担当者は、あいちトリエンナーレに関する補助金審査にあたり、現地調査を何回行ったのか。あるいは全く行っていないのか。

六 たとえ表現内容の持つ政治的主張について、意見が対立していたとしても、文化庁は、申請者からの聞き取りや現地調査などを丁寧に行った上で審査を進め、透明性の高い手続きを行うべきだったと考える。唐突に全額不交付の通知を受けた愛知県知事は法的措置も辞さないとの発言をしている。今次のあいちトリエンナーレの事例は、文化庁の手続きが不透明で、瑕疵があるのではないか。政府の見解如何。

  右質問する。