質問主意書

第198回国会(常会)

答弁書


答弁書第六五号

内閣参質一九八第六五号
  令和元年六月十一日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員川田龍平君提出長崎大学で進められているBSL4施設の建設に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出長崎大学で進められているBSL4施設の建設に関する質問に対する答弁書

一について

 長崎大学におけるバイオセーフティレベル4施設(以下「BSL4施設」という。)の設置に係る検討の経緯については、平成二十二年に同大学がBSL4施設設置の検討を開始し、平成二十六年に同大学を含む九大学等で構成され、BSL4施設を中核とした感染症研究拠点の形成に係る協議を行う感染症研究コンソーシアムにおいて、BSL4施設を設置する候補を同大学とすることが決定されたものと承知している。また、同大学以外の大学におけるBSL4施設の建設計画の存否については承知していない。

二について

 御指摘の「文部科学省と長崎大学が二○一六年八月にBSL4施設の建設を断念」した事実はなく、お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、平成二十八年十一月十七日に国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議において「長崎大学の高度安全実験施設(BSL4施設)整備に係る国の関与について」(以下「「国の関与について」」という。)を決定し、「長崎大学が坂本キャンパスに整備を予定しているBSL4施設を中核とした感染症研究拠点の形成について、事業実施主体としての長崎大学の対応を踏まえ、長崎大学に対し必要な支援を行い、我が国における感染症研究機能の強化を図ることとする」としたところである。その後、長崎県知事、長崎市長及び長崎大学長の三者による協議が行われ、同月二十二日に同県知事及び同市長から同大学のBSL4施設整備計画の事業化に協力することに合意する旨が表明されたと承知している。

三について

 BSL4施設設置の候補地については、平成二十九年九月に長崎大学が策定した「長崎大学の感染症研究拠点の中核となる高度安全実験(BSL―4)施設の基本構想」において、同大学坂本キャンパスは、「①施設の安全な運営にとって最も適切な地である」、「②BSL―4施設が機能を発揮できる立地である」、「③大学病院に「第一種感染症病床」がある」ことから、BSL4施設の設置の候補地として優れた特性を持っているとされている。また、お尋ねの「他の先進国」及び「住宅密集地」の意味するところが必ずしも明らかではないが、長崎県、長崎市及び同大学が、同大学のBSL4施設の設置計画について課題の明確化とその対応等について協議する「感染症研究拠点整備に関する連絡協議会」に提出された同大学の調査結果によると、BSL4施設の立地について、米国、英国、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス等では、住宅地、公共施設、商業施設や幹線道路などが近隣に存在するものがあるとされている。

四について

 お尋ねの「高度な研究施設の建築そのものに関するルール」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第五十六条の三第二項に規定する特定一種病原体等所持者は、同法第五十六条の二十四の規定において、「その特定病原体等の保管、使用又は滅菌等をする施設の位置、構造及び設備」について、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則(平成十年厚生省令第九十九号)第三十一条の二十七各号に定める技術上の基準に適合するように維持しなければならないものとされている。

五について

 お尋ねの「BSL4施設の建設を決定する以前」の意味するところが必ずしも明らかではないが、長崎大学は、平成二十二年にBSL4施設設置の検討を開始して以降、同大学が整備を進めるBSL4施設を中核とした感染症研究拠点整備に関する安全・安心の確保等に関して地域住民と協議を行う「長崎大学における感染症研究拠点整備に関する地域連絡協議会」を二十五回、地域住民向け説明会等を九十回開催し、これらに加え、パンフレットの作成や新聞広告の掲載等を行うことにより、地域住民の理解の促進を図ってきているものと承知している。その上で、同大学長は、平成三十年十一月十四日にこれらの地域住民等に対する説明等の状況や、「国の関与について」の決定、長崎県及び長崎市による施設整備計画への協力、迫りくる感染症の脅威への対応の必要性といった点を総合的に勘案して、BSL4施設の着工を表明したと承知している。いずれにせよ、政府としては、同大学において地域住民の理解を得る努力が継続されることが重要であると認識している。

六について

 お尋ねの「対処」については、「国の関与について」において、長崎大学BSL4施設において「万一事故・災害等が発生した場合には、厚生労働省及び文部科学省等は、直ちに職員及び専門家を現地に派遣して長崎大学に対する技術支援や指示を行うなど、関係自治体及び長崎大学と連携して事態収拾に向けて対応する」等としている。また、お尋ねの「賠償や補償」については、個別具体的な状況に即して判断されるものであり、一概にお答えすることは困難である。

七について

 政府としては、「国の関与について」において、「長崎大学が坂本キャンパスに整備を予定しているBSL4施設を中核とした感染症研究拠点の形成について、事業実施主体としての長崎大学の対応を踏まえ、長崎大学に対し必要な支援を行」うこととしているところである。いずれにせよ、長崎大学において地域住民の理解を得る努力が継続されることが重要であると認識している。