質問主意書

第198回国会(常会)

答弁書


答弁書第四八号

内閣参質一九八第四八号
  令和元年五月十四日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員川田龍平君提出国際協力銀行が融資を決定したベトナム・バンフォン第一石炭火力発電事業に係る国際ルール違反等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出国際協力銀行が融資を決定したベトナム・バンフォン第一石炭火力発電事業に係る国際ルール違反等に関する質問に対する答弁書

一及び六について

 御指摘の「バンフォン第一石炭火力発電事業」(以下「本事業」という。)に対する株式会社国際協力銀行(以下「JBIC」という。)の融資については、「エネルギー基本計画」(平成三十年七月三日閣議決定。以下「基本計画」という。)において、海外の石炭火力発電事業への公的支援は「OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、原則、世界最新鋭であるUSC(超々臨界圧)以上の発電設備について導入を支援する」としており、「OECD公的輸出信用アレンジメント・石炭火力発電セクター了解」(以下「セクター了解」という。)を踏まえ行うこととなる。
 セクター了解においては、御指摘のように五百メガワット超の石炭火力発電所については公的支援の対象を超々臨界圧又は一キロワット時当たりの二酸化炭素の排出量七百五十グラム未満のものに限る旨の規定が存在するものの、セクター了解の施行の日(以下「施行日」という。)前から検討が進められていた案件には当該規定は適用されない旨の経過措置も設けられている。
 その上で、本事業は施行日前から検討が進められていた案件であり、当該経過措置を踏まえると、本事業に対するJBICの融資については、当該規定に拘束されず、基本計画とも齟齬を来すものではなく、公的支援として許容されると考えている。

二及び三について

 本事業に係るベトナム社会主義共和国(以下「ベトナム」という。)における環境社会影響評価(以下「ESIA」という。)は、平成二十三年五月にベトナム政府の承認を受けた後、平成二十七年三月及び平成二十九年十二月に更新されており、平成二十九年十二月の更新では、温排水の海洋に対する影響の分析手法に関する説明の追記等が行われたと承知している。
 その上で、JBICは、「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)にのっとって、適切に融資を決定しているものと承知しており、本事業の建設作業についても、事業者がベトナムの関係法令に基づき適切に対応するものと理解している。

四について

 平成二十三年五月に承認されたESIAが有効なものであり、更新後もその有効性が引き継がれていることについて、JBICはベトナム政府に確認しており、本事業に対するJBICの融資は適切に行われていると認識している。

五について

 お尋ねの意見広告が平成三十一年三月十九日付けフィナンシャル・タイムズ紙に掲載された意見広告であるならば、その内容については承知している。

七について

 本事業に関連して地域住民が訴訟を提起していることは承知している。

八について

 JBICは、ベトナムの関係法令に基づき適切な土地収用手続が実施されていることなどガイドラインにのっとった非自発的住民移転等に係る環境社会配慮が行われていることを確認の上、適切に融資を決定しているものと承知している。

九について

 お尋ねについては、対象となる会見が特定されておらず、お答えすることは困難である。

十について

 お尋ねの海外の石炭火力発電事業への公的支援については、基本計画において「パリ協定を踏まえ、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギーや水素なども含め、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢を相手国に提案し、その選択に応じた支援を行う。その際、我が国としては、再生可能エネルギー・水素の促進に積極的に取り組む。こうした提案・支援を含めた低炭素型インフラ輸出を積極的に進める中で、エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、当該国から、我が国の高効率石炭火力発電への要請があった場合には、OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、原則、世界最新鋭であるUSC(超々臨界圧)以上の発電設備について導入を支援する。また、CCS(炭素固定化)の実用化の状況を踏まえつつ、段階的にCCS付の石炭火力輸出を増加させていく。」としており、これに基づき取り組むべきものと考えている。