質問主意書

第198回国会(常会)

答弁書


答弁書第四七号

内閣参質一九八第四七号
  令和元年五月十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員大島九州男君提出第百九十八回国会への提出が見送られた著作権法等改正案に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大島九州男君提出第百九十八回国会への提出が見送られた著作権法等改正案に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 お尋ねについては、平成三十一年三月二十六日の参議院予算委員会において、柴山文部科学大臣が「今般の著作権法の改正案について、文部科学省といたしましては、深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じる一方で、国民の正当な情報収集などには萎縮を生じさせない、この二つの課題を両立すべく慎重に判断して制度設計を行ってきたところであり、丁寧に御説明を行うことで国民の皆様の御理解をいただけると考えておりました。しかしながら、法案の提出期限まで時間がない中で、結果としては国民の十分な御理解をいただける見通しが立たなかったこと、また、その後の与党審査において自民党から再検討の御指示もいただいたことから、今国会への法案提出を見送ることとさせていただきました。」と答弁しているとおりである。

一の3について

 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)の改正に当たっては、著作権者や知的財産法の専門家等の幅広い関係者の意見を聞いた上で検討を進めることが重要であると認識しており、今国会に提出を予定していた著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案として検討していた案(以下「検討案」という。)についても、著作権者や知的財産法の専門家等で構成される文化審議会著作権分科会においてパブリックコメントの結果も踏まえて平成三十一年二月十三日に取りまとめられた報告書(以下単に「報告書」という。)に基づき検討していたものであるが、今後の検討に当たっては、より一層丁寧に対応していく考えである。

二及び三の1について

 検討案については、政府として決定に至っていないものであり、お尋ねについてお答えすることは差し控えたい。

三の2について

 お尋ねの「漫画本の中のある一コマのみ」であっても、これを「そのままコピーする行為」は、「原作のまま複製」する行為に該当すると考えている。

三の3について

 御指摘の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」という文言は、現行の著作権法において十五か所に規定されている。

三の4について

 検討案の今後の取扱いについては、現時点で政府としての具体的な方針は決まっておらず、今後、広く国民の御意見を伺いながら、対応を検討していくこととしている。

四について

 御指摘の「違法アップロード」の意味するところが必ずしも明らかではないが、警察庁に報告がなされた、インターネット上において著作権法第二十三条第一項に規定する権利を侵害したとして平成三十年中に都道府県警察において検挙した事件は、百一件である。

五について

 御指摘の「小委員会において議論の打切りに異議を唱えなかった」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねについては、平成三十一年三月十九日の参議院文教科学委員会において中岡文化庁次長が「一月二十五日の法制・基本問題小委員会でございますけれども、様々な意見をいただいておりますけれども、その当時、五名の委員の連名で、この二十五日は取りまとめはせずに検討の継続を求める意見書が提出されたことがございます。他方で、これに対しまして他の委員から、海賊版対策の緊急性に鑑みて審議先送りに反対する意見もあったところ、既に様々な観点からの議論が重ねられてまいったことを踏まえまして、最終的には小委員会の主査から報告書の取りまとめにつきまして一任を求める提案がございまして、この提案につきましては特段の異論なく了承されたものと承知しております。また、小委員会終了後に主査御指示の下に各委員と個別に調整を行いまして、慎重な御意見も含め、大半の意見を反映した上で報告書が取りまとめております。このように、報告書は小委員会で了承されたプロセスに沿いまして各委員の意見も十分に反映した形で取りまとめられておりまして、議論を打ち切ったとの御批判は当たらないものと考えております。」と、同月二十六日の参議院予算委員会において柴山文部科学大臣が「このダウンロード違法化に関しましては、海賊版対策が喫緊の課題となる中で、昨年十月に文化審議会での検討を開始してから三か月間で五回の小委員会を開催し、集中的に審議を進めてまいりました。小委員会としては、権利者団体、出版社及び利用者団体へのヒアリングを実施して、被害の実態、ユーザーへの影響などを把握した上で、静止画、テキスト等の特性を確認しつつ、権利者、利用者双方の御意見をしっかりと考慮しながら議論を深めてきたというふうに考えております。また、中間的な取りまとめを行った後、約一か月間のパブリックコメントも実施をし、その結果も踏まえて改めて小委員会で議論を行って、その際の意見も反映した形で小委員会の報告書が取りまとめられたと聞いております。その後、親会議である著作権分科会においても審議をいただき、全会一致で最終的な報告書が取りまとめられたと聞いておりますので、そういった観点からあの報告書は手続的には瑕疵がなかったかとは思いますけれども、ただ、先ほど申し上げたように、国民各般から様々な懸念が示されており、また与党から再検討の御指示もいただいたということから、より丁寧に議論をする必要があると考えたため、今回提出を取りやめた次第でございます。」と答弁しているとおりである。なお、同年二月十三日に開催された文化審議会著作権分科会において、当該分科会の下に置かれた法制・基本問題小委員会(以下「小委員会」という。)の委員を兼ねる二名の委員から、同年一月二十五日の小委員会の終了後に提出された当該二名を含む八名の委員による連名の意見書の内容を踏まえて報告書の案が修正されたことについて感謝の意を表する趣旨の発言があったところである。