質問主意書

第198回国会(常会)

質問主意書


質問第八二号

内閣府の共生社会政策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年六月二十六日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   内閣府の共生社会政策に関する質問主意書

 障害者差別解消法等の国内法整備を経て批准した国際連合の障害者権利条約を踏まえて、二〇一八年に策定された障害者基本計画(第四次)は、障害者が自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加し、その能力を最大限発揮して自己実現できるよう支援するとしている。このことについて、具体的に質問する。

一 障害者基本計画における「共生」概念とは、障害を持つ者又は疾病に罹患している者も、厳密な意味において、健常者と同等の人権を享有する主体として扱うことを前提としており、社会的偏見を助長したり、社会から隔離したり、排除したり、家族の保護の下にある権利喪失者として扱ったりしてはならないことを含意していると考えている。
 しかしながら、「共生」概念を実践する現場においては、サポートする側や保護する側が、当事者である障害者の声を聞くことより、健常者の見方から一方的に障害者の思いを決めつけているケースが多いのが実情である。
 従って、障害者の主権を尊重する観点から、政府が「共生」概念の正確な理解を提示し、その上で、その理解に適うように、具体的な施策の中で、当事者の主体性を担保するための具体的な基準を示すことが必要であると考える。
 以上を踏まえて問うが、本年六月十八日に認知症施策推進関係閣僚会議でとりまとめられた「認知症施策推進大綱」における「共生」概念は、認知症の当事者の主権を健常者の主権と同等と考えているものであるのか、政府の見解を明らかにされたい。

二 社会のあらゆる局面における、障害者にとっての既存のバリアを解消していくためには、政府の施策として、社会全体でものとこころの両面におけるバリアを解消する波及効果を持ち得る、先駆的、先導的なファシリテーターを各地域に築くことを推進することが必要なのではないかと考える。
 例えば、公共交通など社会的インフラにおける抜本的なアクセシビリティの革新を、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックなどを契機に、地域で起こすことを推進する施策を図ることが、結果として、当該地域における障害者の社会的プレゼンスを格段に高めることにつながると予想される。このように、先駆的、先導的なファシリテーターの構築によって地域社会の風景が各段に変わることとこれにより地域社会がより幸せになることを国民が実感できるように、特定地域を選択して、他の地域に先駆けて先駆的、先導的なファシリテーターの構築を行うことを促すことが必要ではないか。

三 人々のこころのバリアの解消を推進する施策も、積極的に実施していかなければならないと考えている。そのためには、当事者である障害者の主体性を測る基準を設定していくことが必要ではないか。従来のように、障害者を健常者に見守られ、管理される立場にある者と位置付け、社会から隔絶され、閉ざされた人間関係に閉じ込めたままにしておくのではなく、これからの新たな時代においては、障害者と健常者との間の垣根を取り去り、障害者同士の関係や、障害者から健常者への働きかけといった人間関係をも含めた、同じ人間同士としての社会関係を構築すべく、分断を図るのではなく、当事者が主体的に活動することで開かれた人間社会を実感できる社会空間を創成していくことを促す必要があると考える。
 そのためには、地域住民の今までの考え方の枠組みを変えて、こころのバリアのない暮らしの方がより幸せな地域社会を作れるという実感を創り出していく必要がある。こころのバリアの解消につながる地域社会参加プログラムを行政が支援するに当たり、「共生」概念の理解の基準を定めるとともに、それに基づき、当事者である障害者の主体性が担保されているか否かを判断する明確な決定基準と決定手続が、公にされていることが必要であると考えている。
 ついては、人々のこころのバリアを解消することを推進する施策の必要性についてどのように考えるか、政府としての立場を明らかにされたい。

  右質問する。