質問主意書

第198回国会(常会)

質問主意書


質問第六三号

インドネシア共和国におけるチレボン石炭火力発電所拡張事業に係る関係者による不正行為と国際協力銀行による公的融資の貸付実行等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年五月二十九日

石橋 通宏   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   インドネシア共和国におけるチレボン石炭火力発電所拡張事業に係る関係者による不正行為と国際協力銀行による公的融資の貸付実行等に関する質問主意書

 インドネシア共和国西ジャワ州におけるチレボン石炭火力発電所拡張事業(以下「本事業」という。)では、二〇一七年十一月十四日以降、株式会社国際協力銀行(JBIC)が民間金融機関および韓国輸出入銀行との協調融資で、丸紅株式会社および株式会社JERA等が出資するインドネシア法人PT.Cirebon Energi Prasarana(以下「CEPR」という。)に対する貸付を実行している他、日本貿易保険(NEXI)が民間金融機関による融資の一部に対して保険を適用している。本事業をめぐっては、韓国企業である現代建設が前チレボン県知事に対して不正資金を提供したとの報道が、本年四月からインドネシアおよび韓国において複数回なされている。贈収賄等の不正行為はあってはならないことであり、日本の公的輸出信用機関であるJBICおよびNEXIが関わるいかなる支援事業も、不正行為がない状態で適正に実施されなくてはならず、また、JBICおよびNEXIにおいては、その実施状況について国民に対する説明責任が果たされるべきであると考える。
 以上の経過と問題意識を踏まえ、以下、具体的に質問する。

一 JBICを含む銀行団(以下「銀行団」という。)からの借入人であるCEPRが、現代建設、三菱日立パワーシステムズ株式会社および株式会社東芝のコンソーシアムに発注したEPC(設計・調達・建設)契約において、現代建設の担当業務は、石炭運搬・灰処理設備や周辺機器などの供給と土建・据付工事ということで間違いないか。この他にも現代建設の担当業務があれば、具体的に明らかにされたい。また、EPC契約の契約期間および契約金額について、明らかにされたい。

二 本事業で使用される土地は全体で何ヘクタールであり、そのうち私有地と公有地はそれぞれ何ヘクタールであったか。当該私有地に対する補償金の水準は一平方メートル当たり何ルピアであり、誰が補償金の支払いの責任主体であったか。また、本事業で使用される土地について、地域住民から苦情等が出た場合、私有地あるいは公有地に係る各々の苦情を処理する一義的な責任主体と関係者は誰になるか、明らかにされたい。

三 銀行団がCEPRに対し、これまでに貸付けた融資の使途(例えば、土地造成工事、埠頭設備土建工事、火力発電設備土建工事等)について、すべて明らかにされたい。また、銀行団がこれまでに貸付けた融資実行額のうち、CEPRから現代建設に対する支払いに充当されたのは何割程度で、その使途は何であったか明らかにされたい。

四 銀行団がCEPRと締結した貸付契約書あるいはこれに付随する文書のなかで、贈収賄や不正行為に係る規定は設けられているか。設けられている場合、その規定の内容はどのようなものか、具体的に明らかにされたい。

五 本事業に関する、NEXIによる融資保険の引受に係る内諾書あるいはこれに付随する文書のなかで、贈収賄や不正行為に係る規定は設けられているか。設けられている場合、その規定の内容はどのようなものか、具体的に明らかにされたい。

六 本年四月十日にバンドン汚職裁判所で開かれた公判において、現代建設から本事業に係る資金提供を受けたことを前チレボン県知事が認めたと理解している。また、本年五月二日付のコリア・タイムズ紙記事において、前チレボン県知事に対して本事業に係る資金提供を行ったことを現代建設が認めたとの報道がなされている。本事業に係る現代建設から前チレボン県知事への資金提供(以下「当該資金提供」という。)について、その使途と金額はどのようなものであったと認識しているか。また、政府は、当該資金提供は不正な資金提供ではなかったと認識しているのか、理由とともに明らかにされたい。

七 JBICは、当該資金提供があったことを認識した後、どのように事実確認や調査等を実施し、その結果を踏まえ、どのような措置をとっているか、具体的に明らかにされたい。また、現状において、今後、CEPRから貸付実行要請を受けた場合、JBICはCEPRに対する貸付を実行する予定か。

八 JBICは日本の公的輸出信用機関として、当該資金提供が適正であったか否かとその理由、および、本事業に対するJBICによる貸付実行の可否とその理由について、国民に対する説明責任を果たすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

九 今後、本事業において、JBICからの公的融資が不正な資金提供に使われることを回避するため、JBICが新たな貸付を実行する前に、CEPRがEPC契約における現代建設との契約解除等も含め、本事業における不正行為の再発防止策を講じるべきと考えるが、JBICはCEPRにどのような対応を求めているか、具体的に明らかにされたい。

十 政府開発援助(ODA)の実施機関である国際協力機構(JICA)は、独立行政法人国際協力機構契約競争参加資格停止措置規程(平成二十年規程(調)第四十二号)および独立行政法人国際協力機構が実施する資金協力事業において不正行為等に関与した者に対する措置規程(平成二十年規程(調)第四十三号)で、ODA事業において不正行為が発生した場合には、当該ODA事業に関わる企業や団体等(下請企業を含む。)および相手国の政府・実施機関に対して、不正行為に関与した者の契約の相手方からの排除などを含む措置をとることを定めている。また、当該措置が適用されると、不正行為に関与した者が入札から排除されるのみならず、当該ODA事業自体が中断したり、受益国に対して対象となる資金の返還が求められたりするなど、当該ODA事業の実施そのものが困難になり、受益国側も大きな影響を被ることになる。
 日本の公的輸出信用機関であるJBICおよびNEXIの支援事業において、贈収賄等の不正行為が認められる場合、日本の公的支援事業に対する国民および国際社会の信頼を失うリスクがあるのではないか。国民および国際社会の信頼を確保するためにも、ODA事業と同等あるいは類似の措置がとられるべきと考えるが、政府の見解とその理由を明らかにされたい。

十一 前記六のバンドン汚職裁判所で開かれた公判において、前チレボン県知事が当該資金提供について、名指しでCEPR社長の関与を示唆したことを承知しているか。当該資金提供へのCEPRの関与の可能性に対し、JBICはどのような対応を行っているか、具体的に明らかにされたい。

  右質問する。