質問主意書

第198回国会(常会)

質問主意書


質問第四二号

児童福祉法二十八条事件に係る保護者指導勧告の統計に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十一年四月十八日

吉川 沙織   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   児童福祉法二十八条事件に係る保護者指導勧告の統計に関する再質問主意書

 私が提出した「児童福祉法二十八条事件に係る保護者指導勧告の統計に関する質問主意書」(第百九十八回国会質問第二八号。以下「前回主意書」という。)に対する答弁書(内閣参質一九八第二八号。以下「前回答弁書」という。)を踏まえ、改めて質問する。

一 児童福祉法第二十八条第一項及び第二項の措置に関する家庭裁判所による保護者指導勧告について、前回主意書の一及び二では、最高裁判所事務総局家庭局及び厚生労働省の福祉行政報告例においてそれぞれ取りまとめられた過去十年間の件数を問うた。この点、前回答弁書の「一について」及び「二について」で示された件数を比較すると、最高裁判所事務総局家庭局の調査による件数の方が福祉行政報告例の件数よりも過去十年間の平均で約二十件多くなっており、平成二十四年(度)に至っては最高裁判所事務総局家庭局の調査による件数が福祉行政報告例の件数の約十倍となっている。当該勧告の件数について両調査の間に看過できない乖離が生じていることが改めて明らかとなった。
 家庭裁判所による保護者指導勧告の強化等を内容とする児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律(平成二十九年法律第六十九号。以下「平成二十九年改正法」という。)は、厚生労働省に設置された「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」(以下「検討会」という。)における議論の結果を踏まえて立案されたと承知しているところ、第二回(平成二十八年八月三十一日)の検討会における配布資料「司法関与に関する各種の既存データについて」では、家庭裁判所による保護者指導勧告の件数一覧が示されている。
 同件数一覧では、最高裁判所事務総局家庭局の調査による件数がまず示され、次いで「参考」として福祉行政報告例の件数が添えられている。前回答弁書の「三について」で調査方法が明らかでないとしている最高裁判所事務総局家庭局の統計を先に示し、調査方法が明らかな自省の統計を「参考」扱いとした理由を明らかにされたい。

二 厚生労働省は、平成二十九年改正法の立案に当たり、第二回の検討会に示した家庭裁判所による保護者指導勧告の件数を立法事実の一つとしたか明らかにされたい。立法事実の一つとした場合、最高裁判所事務総局家庭局による調査と福祉行政報告例のどちらの調査件数に依拠したのか明らかにされたい。

三 前記一の乖離が生じる理由について、前回答弁書の「三について」では、調査方法等の違いが具体的に明らかではないため答弁は困難である旨述べるのみで、乖離が生じる理由を解明しようとする姿勢は見られない。
 同一の事象を調査している二つの統計の件数に大幅な乖離が生じているだけでなく、調査方法等を対外的に説明できないということは、統計及びこれに基づく政策判断に対する信頼性を大きく損なわせることになる。
 また、家庭裁判所による保護者指導勧告の受け手である行政側の統計である福祉行政報告例の方が大幅に少ない件数となっていることは、単に調査方法に差異があるからではなく、各児童相談所やこれを管轄する都道府県等が家庭裁判所から保護者指導勧告を受けたという事実を正確に認識していないからではないかという疑念を招くことになる。
 厚生労働省は、最高裁判所事務総局の協力を得つつ、当該乖離が生じる理由を解明し、明らかにするべきであると考えるが、見解を明らかにされたい。

  右質問する。