質問主意書

第198回国会(常会)

質問主意書


質問第四一号

元号を「令和」と改める政令の閣議決定及び公布に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十一年四月十五日

小西 洋之   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   元号を「令和」と改める政令の閣議決定及び公布に関する質問主意書

一 安倍総理は、元号を「令和」と改める政令を閣議決定した平成三十一年四月一日の記者会見(以下「記者会見」という。)において、「なお、新元号については、閣議決定を行った後に、宮内庁を通じて今上陛下及び皇太子殿下にお伝えいたしました。」と述べているが、この「お伝え」は天皇陛下と皇太子殿下に対して同時になされたものであるのかについて説明されたい。また、天皇陛下による元号を「令和」と改める政令の公布の国事行為は、この「お伝え」の後になされたものであるかについて説明されたい。さらに、菅官房長官による新元号「令和」の発表は、天皇陛下による政令の公布の国事行為の後になされたものであるかについて説明されたい。

二 安倍総理は記者会見において、「これは「万葉集」にある「初春の令月にして 気淑(よ)く風和(やわら)ぎ 梅は鏡前の粉(こ)を披(ひら)き 蘭(らん)は珮後(はいご)の香を薫(かおら)す」との文言から引用したものであります。そして、この「令和」には、人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められております。」と述べているが、ここでいう「人々が美しく心を寄せ合う」とは具体的にどのような状況を意味するものであるかについて、分かりやすく説明されたい。

三 安倍総理は記者会見において、「この「令和」には、人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められております。」と述べているが、令和にこうした「意味」を「込め」た者は誰であるかについて説明されたい。
 また、当該万葉集の「文言」を含め、令和という言葉において、なぜ、こうした意味が込められていると読み取ることができるのかについて、分かりやすく説明されたい。

四 前記二について、「人々が美しく心を寄せ合」っているとは言えない状況について、どのようなものがあると考えているのか、具体的に示されたい。また、こうした状況においては、「文化が生まれ育つ」ことはないと考えているのか、政府の見解を示されたい。

五 安倍総理は記者会見において、万葉集を「国書であります」としているが、ここでいう「国書」の意味について説明されたい。

六 安倍総理は記者会見において、令和について、万葉集の「文言から引用したもの」、「歴史上初めて国書を典拠とする元号」と述べているが、万葉集における「初春令月 気淑風和」との文言は中国の古典である張衡による「帰田賦」の「仲春令月 時和気清」の句を踏まえているものである、あるいは、「初春令月 気淑風和」の文言を含む箇所である「序文」は中国の書家である王羲之による「蘭亭集序」にならったものであるとの学者等からの指摘があるが、これらを踏まえつつ、令和の典拠が万葉集であると考える根拠について具体的に示されたい。

七 安倍総理は記者会見において、「元号は、皇室の長い伝統と、国家の安泰と、国民の幸福への深い願いとともに、千四百年近くに渡る我が国の歴史を紡いできました。」と述べているが、平成三十一年三月四日の参議院予算委員会において政府は「我が国における公式の元号は、いわゆる大化の改新に当たって大化の元号を立てたことに始まると考えられ、現在の平成まで二百四十七の元号が用いられております。」としているところ、この二百四十七の元号の全てについて「国民の幸福への深い願い」を持って、すなわち、そうした「願い」が込められて、定められてきたと考えているのか、政府の見解を示されたい。

八 安倍総理は記者会見において、元号について「日本人の心情に溶け込み、日本国民の精神的な一体感を支えるものとなっています。この新しい元号も広く国民に受け入れられ、日本人の生活の中に深く根差していくことを心から願っています。」としているが、ここでいう「日本人」の意味について、ここでいう「日本国民」の意味との違いを示しつつ、分かりやすく説明されたい。

九 前記八について、「日本人の心情に溶け込み」、「日本国民の精神的な一体感を支えるもの」、「広く国民に受け入れられ」、「日本人の生活の中に深く根差していく」とは、それぞれ、具体的にどのような状況を意味しているのか、分かりやすく説明されたい。

十 安倍総理は記者会見において、「我が国は、歴史の大きな転換点を迎えています」と述べているが、そのように認識する根拠について、出来るだけ多くの「転換点」と考える具体的な例を挙げながら分かりやすく説明されたい。

十一 安倍総理は記者会見において、「我が国の悠久の歴史、薫り高き文化、そして、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄はしっかりと次の時代にも引き継いでいくべきである」と述べているが、ここにいう「国柄」には、日本国憲法が立脚する法の支配及び立憲主義の原理や、日本国憲法に規定する国民主権、基本的人権の尊重、平和主義が保持されることも含むのか、政府の見解を示されたい。

十二 安倍総理は記者会見において、「文化を育み、自然の美しさをめでることができる平和な日々に心からの感謝の念を抱きながら、希望に満ちあふれた新しい時代を国民の皆様と共に切り開いていく。新元号の決定に当たり、その決意を新たにしております。」と述べているが、安倍総理は平成三十一年一月二十八日の衆参本会議での施政方針演説において、「しきしまの大和心のをゝしさはことある時ぞあらはれにける」との明治天皇による日露戦争の戦意発揚のためとされる御製を引用しながら、「平成のその先の時代に向かって、日本の明日を、皆さん、共に切り開いていこうではありませんか。」と述べているところ、これらはともに、新しい時代を国民と共に切り開いていくに当たっての決意を述べたものであるが、これらは同じ趣旨を示すものと考えてよいかについて、政府の見解を示されたい。

十三 前記十二について、安倍総理は記者会見において、「この「令和」には、人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められております。」と述べているが、安倍総理においては、明治天皇の御製にある「大和心のをゝしさ」が「あらはれにける」とされる状態とは、「人々が美しく心を寄せ合う」との状態に合致するものと考えているのか、違いがあると考える場合はその差異も含めて、分かりやすく説明されたい。

十四 前記十二について、前者の記者会見では平和な日々への感謝の念を述べながら、後者の施政方針演説では戦争に打ち勝つための「大和心」という国民精神を肯定しており、相矛盾するのではないかについて政府の見解を示すとともに、明治天皇の御製を引用した施政方針演説の内容は、安倍総理が説明するところの新元号「令和」の趣旨に照らして不適切ではないのかについて、政府の見解を示されたい。

十五 安倍総理は記者会見において、「かつては何年もかけてやっと実現するレベルの改革が、近年は国民的な理解の下、着実に行われるようになってきたという印象を持っています。」と述べているが、ここでいう「改革」には、いわゆる国家戦略特区制度を用いて五十二年ぶりに加計学園に獣医学部の新設を認めたことも含むのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。