質問主意書

第198回国会(常会)

質問主意書


質問第二二号

DV被害者の参政権の行使に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十一年三月十三日

福山 哲郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   DV被害者の参政権の行使に関する質問主意書

 警察庁が公表した「平成三十年の犯罪情勢」によると、配偶者などパートナーに対する暴力(ドメスティックバイオレンス。以下「DV」という。)被害の平成三十年の相談等件数が七万七千四百八十二件、検挙件数も九千十九件となり、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下「DV防止法」という。)施行以降で最多を更新している。
 DV防止法は平成十三年の施行以降、DV被害者の保護が不十分である等の指摘を踏まえ、これまで数度にわたり改正されてきた。また、DV被害者の保護に係る施策の一環として、平成十六年から、DV被害者については、ストーカー行為や児童虐待等の被害者と同様に、市区町村長に申し出て「DV等支援対象者」となることにより、加害者等からの、住民基本台帳の一部の写しの閲覧や住民票の写し、戸籍の附票の写しの交付等の請求を制限する「DV等支援措置」が講じられている。
 しかし、実際には、加害者等への誤送付や加害者の依頼した弁護士等への交付等により、自治体がDV等被害者の住所を漏らしてしまう事案が後を絶たない。平成二十四年のいわゆる逗子ストーカー殺人事件も、被害女性がDV等支援措置制度を利用していたにもかかわらず、発生してしまった。そのため、自治体からの情報漏えいを恐れ、加害者の下から逃げた後も住民票を移さずにいることが、DV被害者が自らの生命を守るための手段として常態化している実情がある。現在、全国で十一万人以上がDV等支援措置制度を利用しているが、潜在利用者はこの数倍ともいわれている。
 一方で、今年は統一地方選挙や参議院議員通常選挙が予定されているが、これらの選挙については住民基本台帳を基に選挙人名簿が作成され、投票所入場券が交付される。そのため、住民票を移さずに避難しているDV被害者は、住民票のある自治体でも、避難先の自治体でも参政権を行使することが困難な状態にある。
 そこで、以下質問する。

一 投票所入場券が届かない場合や紛失した場合であっても、選挙権を有し、選挙人名簿に登録されていることが確認できれば、本人確認をした上で投票することができる。住民票を移さずに避難しているDV被害者についても、同様の措置を取ることは可能か。また、可能な場合、住民票のある自治体の中でも、元の居所からできるだけ遠い投票所を選択することができるようにする等、DV被害者の安全に配慮した対応を取るべきだと考えるが、各自治体において具体的にどのような対応を取ることが可能か。それぞれ政府の認識を示されたい。

二 避難先の自治体においても、DV被害者専用の投票所を設置する等、住民票を移せない事情のある有権者が、期日前も含めて投票できるような措置を取ることが必要であると考える。現行法上、各自治体においてどのような対応を取ることが可能か、政府の認識を示されたい。

三 住民票を移さずに避難しているDV被害者が安全に投票することができるようにするための体制整備や法改正を行う必要性について、政府の見解を示されたい。

  右質問する。