質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五〇号

建設業従事者及びその家族のための建設国保組合の安定運営に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十二月十日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   建設業従事者及びその家族のための建設国保組合の安定運営に関する質問主意書

 全国の建設現場で働く労働者・職人・一人親方等(以下「建設業従事者」という。)は、一般的な労働者と異なり、休業時の収入は補償されず、病気やケガ等で仕事ができなくなれば、収入が失われかねない現実を背負っている。こうした建設業従事者及びその家族にとって過酷な状況を緩和するために、病気やケガで仕事ができない期間の日当補償を行う「傷病手当金制度」や一定額以上の医療負担金が後日返還される「償還金制度」を提供してきたのが、全国の建設国民健康保険組合(以下「建設国保組合」という。)で、昭和四十五年の設立以来、建設業従事者最大の労働組合である全国建設労働組合総連合(全建総連)の下で二十二の建設国保組合が運営され、現在、被保険者数は約百九万人となっている。
 そもそも建設業では、下請けが幾重にも重なる重層下請構造の中、賃金や単価は下位の下請業者に行くほど減額される仕組みとなっている。このため、事業所によっては社会保険料等の負担に耐えられず、当該事業所の建設現場で働く建設業従事者を、必要に応じて労力を提供してもらう協力業者として取り扱う業態が一般化している。また、建設現場では昨今の高齢化もあり、深刻な労働者不足となっている。加えて、大工・左官・内装等の技能・技術の継承を危惧する声も高まっている。
 そこで、全国の建設業従事者とその家族のための建設国保組合の安定運営を図ることで、我が国の建設業全体を下支えする基盤を強化するべく、以下のとおり質問する。

一 我が国の医療保険制度については、国民負担の増大に配慮しつつ、公費助成を拡充することがあるべき基本思想であると考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

二 国民健康保険組合(以下「国保組合」という。)への国庫補助については、自然増を含む医療費の伸びを勘案して、現行制度を堅持し、補助水準を確保するべきである。そもそも国民健康保険法で、都道府県等が行う国民健康保険(以下「市町村国保」という。)への国の財政支援については、「負担する」と規定されているのに対し、国保組合への国の財政支援については「補助することができる」と規定されているだけで、法律上、不安定な取扱いがなされていることが問題と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

三 特定健診・特定保健指導について、全建総連関係の建設国保組合での実際の単価は九千円から一万円とされているケースが多いが、平成三十年度予算における国の特定健診に係る助成基準額は千三百九十六円と実際の単価の約十四パーセントとなっており、国から市町村国保への補助割合(三分の一)を遥かに下回る比率となっている。これでは特定健診を実施すればするほど建設国保組合の保険者への負担が大きくなるため、適正な補助単価・補助金総額等の抜本的な改善が必要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

四 建設国保組合は、建設業という同一職種の従事者で構成され、地域的・集団的なまとまりもあることから、組合員の間で「自分たちの国保組合」という意識が共有されている。その結果、高い保険料収納率の維持や、「上手な医者のかかり方指導」等の医療費削減の取組みがしっかりと継続されている。このように、保険者機能を十分に発揮することができ、医療費上昇をある程度抑制できる組合方式の医療保険制度の育成・強化こそが重要で、保険者機能の発揮に課題がある医療保険制度への一元化を進めることには慎重な検討が必要と考えざるを得ないが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

五 厚生労働省の通知「国民健康保険組合の行う国民健康保険の被保険者に係る政府管掌健康保険の適用除外について」(平成十七年十二月十五日付け)によると、事業主や従業員が国保組合に加入している場合、年金事務所で健康保険の適用除外の承認手続を経ることで、国保組合に加入したまま、厚生年金の適用を受けることができるが、この適用除外の対象者は「現に国保組合に加入している者」とされ、市町村国保に加入している者は対象となっていない。この運用を弾力的に見直すことで中小零細法人等で働く従業員の国保組合への加入が認められれば、市町村国保に不適切に加入しているとされる建設会社等の建設業従事者に対して、建設国保組合等からも厚生年金等の社会保険への加入を働きかけることが可能となり、厚生年金の運用拡大と建設業における雇用改善につながると考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

  右質問する。