質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四八号

日EU・EPAの締結と国益の検証に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十二月七日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   日EU・EPAの締結と国益の検証に関する質問主意書

 経済連携協定であるEPAや自由貿易協定であるFTAは、自由貿易の促進拡大による経済的メリットや、協定国間の信頼関係の醸成が期待される等の政治的メリットが見込まれるケースもあり、EPAやFTAの締結自体は、我が国にとっても有益となりうるものであり、その意義と必要性を否定しない。
 しかし、EPAやFTAの内容に関し、日本の国益が守られているか、日本の真の国益に適ったものであるのか、という観点は厳しく問われなければならない。日EU経済連携協定(日EU・EPA)についてもその点は同様であり、我が国の国益が守られているか検証する観点から、以下質問する。

一 政府は、日EU・EPAの締結により、我が国の実質GDPの約五兆円の増加と労働供給の約二十九万人の増加が見込まれるとの試算を公表している。しかし、当該試算は、EU離脱が目前に迫った英国を含めたままの経済効果となっている。政府は英国のEU離脱後の形態を予測するのが困難であることのみを理由に、我が国の企業等に及ぶ経済効果の再試算に否定的な姿勢を示している。たとえ予測が困難であったとしても、英国のEU離脱後の影響を含んだ経済効果の再試算を行うと同時に、それを踏まえた的確な経済対策や企業支援を検討すべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。

二 日EU・EPAの発効による効果はなるべく多角的に検証されるべきであり、日EU・EPAの発効によって、EU企業と日本企業は、それぞれどの程度の関税負担を軽減することが出来る見込みなのか明らかにされたい。

三 我が国は日EU・EPAの鉄道分野について、EUが参入障壁と指摘してきた「安全注釈」を撤廃することを約束した。これまで安全面を理由に外国企業の参入を制限することが認められていた鉄道車両や線路等の物品の国際入札に今後EUの事業者が参加することが可能となる。貿易担当のマルムストローム欧州委員は、「安全注釈の撤廃はEU側にとって新たな市場を開くことになる」と特にその成果を強調し、鉄道産品の輸出拡大に意欲を示している。我が国の鉄道産業の安全を確保するために設けられた「安全注釈」の規定を撤廃する必要があったのか、政府の見解を明らかにされたい。

四 前記三に関し、「安全注釈」が撤廃されることにより、今後、我が国の鉄道の安全・安心はどのように確保されるのか明らかにされたい。

五 我が国の鉄道各社は、国際入札に向けた手続等を整備する必要があることに加え、鉄道産品の関連会社は競争力のある欧州の企業との競争を強いられることになるが、政府は当該企業等に対する支援や対策を行う考えはあるのか明らかにされたい。

  右質問する。