質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四六号

我が国セラミックス産業の永続的発展に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十二月七日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   我が国セラミックス産業の永続的発展に関する質問主意書

一 原料確保・生産支援について

1 原料向け鉱物資源の上流対策に対する支援
 ファインセラミックス、汎用セラミックスの原材料となる鉱物資源(ボーキサイト、カオリン、ジルコンサンド、活性炭、天然黒鉛、希土類、アルミナ、炭化ケイ素、アンチモン、鉄鉱石等)は、供給国の偏在や限られた埋蔵量のため、安定供給に慢性的な懸念があり、資源外交や権益確保、購買力の強化等の上流対策が不断に求められていると考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 陶土等の採取に対する鉱業法による権利の策定
 現在の鉱業法では、一般的なセラミックス原料の陶土や一部陶石は鉱業権の適用対象とはなっていない。しかし、これらの原料採取のプロセスは、実態として鉱業権に基づく鉱物採掘と同様であり、陶土等の安定供給と採掘地の環境保全及び持続的な資源確保の観点から、鉱業法の拡大運用若しくはそれに類する法令の策定に基づく事業者への権利付与を認めるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

二 製品開発・使用促進支援について

1 省エネルギー投資に対する支援
 セラミックス産業では、節水トイレ、断熱浴槽、エコ瓦、断熱外壁等、多くの製品が建材トップランナー制度適合の認定を得ているが、今後も社会的に省エネルギーを求める国民の声は高まると予測されており、「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」や「省エネ再エネ高度化投資促進税制」の延長・拡充、取得要件の緩和が急務と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 セラミックス廃材・廃棄物を主原料とする製品の使用促進に対する支援
 耐火煉瓦等の耐火物製品は、セラミックス製品の製造工程で発生する廃材・廃棄物を主原料とした環境適合性の高い製品である。他方、これらの製品使用は、重金属溶出測定で環境基準値を下回ることが証明されているにもかかわらず、土壌汚染対策法による規制対象となっていることから敷設資材等として使用できない状況にある。ついては、既に確立している廃粘土材を用いた製造技術の活用やリサイクル材を用いた製品の規格化による品質保証を行った上での土壌汚染対策法の規制緩和や、リサイクル材を用いた製品をグリーン購入法の特定調達品目とすることを通じた使用促進等への支援が必要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
3 電力系統用蓄電池の研究開発・社会実装に対する支援
 ファインセラミックスをセパレーター部材とするNAS(ナトリウム・硫黄)電池は、再生可能エネルギーの弱点である不安定性を解決する大型電力系統用蓄電池装置として大きな期待が寄せられている。引き続き、安全性の向上や低コスト化のための研究開発や、再エネ導入率の高い諸外国での実装も可能となるよう、洋上風力発電、スマートグリッド、基幹接続系統といった設備導入拡大に向けた実証実験に対する支援が必要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

三 オールドセラミックスの振興支援について

1 クールジャパン施策を活用したオールドセラミックスの国際展開に対する支援
 我が国陶磁器産業は織物産業に次ぐ伝統工芸品指定を有しており、今後の輸出拡大が期待される。他方、産地には国際展開に関する専門家が不足しているのが実情で、クールジャパン施策をはじめとする国からの海外市場開拓に関する支援が必要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 中国・台湾等における模倣品に対する厳格対応等
 中国・台湾等で流通する、国内食器ブランドが製造する洋食器の絵柄を転写した模倣品に対して、個別図柄に対する取り締まりでは威嚇効果が弱いことから、当該国に対して「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定」への加入を促すとともに、当該国との二国間における意匠権全体を包括的に保護する制度の策定が肝要と考える。また、模倣品の探査についても、被害者自身による調査・通報では限界があり、また、被害者側の負担ばかりが重くなることから、通報窓口の機能強化によって国が積極的に意匠権の侵害を探査し、取り締まる組織の創設が大切と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
3 学校給食における陶磁器製食器の使用促進等
 公立学校の学校給食における陶磁器製食器の使用は、樹脂製品に対する有害物質懸念や、ものを大切にする心の醸成・食育の観点から、社会的に広がりを見せているが、他方、陶磁器製食器の導入においては、自治体負担が樹脂製品に比べ二倍から三倍であるという財政的要因と、樹脂製品に比べて重いこと、破損のおそれがあることという物理的要因が陶磁器製食器の使用促進の障壁となっている。これらの問題の解消のため、自治体に対する財政支援及び給食用強化陶磁器製食器の開発支援が必要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

四 人材育成支援・新技術対応について

1 築炉技能士、タイル張り技能士に係る技能継承・人材育成支援
 セラミックス産業では、築炉技能士やタイル張り技能士等の技能労働者が減少しており、技能継承と担い手不足が深刻な問題となっている。どちらの国家資格も上級資格を除き受験要件に実務経験年数が不要であることから、高等教育での専科創設による早期の初級資格取得と、演習科目の創設等による在学中の上級資格取得が担い手不足問題の解消のために必要であると考えられる。また、タイル張り技能士については、「技能五輪全国大会」の競技種目になっているが、築炉については競技種目になっていないため、これを競技化するとともに、教育課程での競技参加の推奨を通じた、早期の人材育成が効果的と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 ドローン等新技術の出現に伴う外壁打診検査規定の見直し
 平成二十年に改正された建築基準法施行規則により、外装タイルを含めた竣工・改修後十年を経過した建築物に対する全面打診検査が義務化されたが、足場の構築が施設管理者の負担となることから、新築建築物の建材選択において外装タイル材が敬遠される等、セラミックス産業に対する悪影響が出てきている。大規模災害を契機に各メーカーともに強化タイルの開発・製品化が進んでいることから、非破壊検査を用いた全面打診の規制緩和や、高所におけるドローンを用いた検査手法の導入など、足場を組まない検査も対応可能となる法令改正が必要ではないかと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

五 東京オリンピック・パラリンピック開催の際の我が国セラミックス産業の知名度向上の取組みについて

1 選手村食堂等における陶磁器産地の器での「おもてなし」
 陶磁器産地の器やメイド・イン・ジャパン洋食器を、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの選手村の食堂等で積極的に採用することは、器で食べる「やすらぎ」や「我が国の食文化」を伝える「おもてなし」として極めて効果的と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 選手村等における温水洗浄便座の整備
 温水洗浄便座(いわゆるウォシュレット)は既に、観光先進国の実現に向けた官民一体の取組において、「心が豊かになるトイレ空間」とのコンセプトの下、キラーコンテンツとして高い期待が寄せられている。この流れを更に加速的に展開するために、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの選手村等で温水洗浄便座を積極的に採用することで、我が国が誇る「心が豊かになるトイレ空間」文化を世界に知らしめる絶好の機会になると考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

  右質問する。