質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四五号

長距離国際線における民間航空旅客事業の運航乗務員の適正な人数に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十二月六日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   長距離国際線における民間航空旅客事業の運航乗務員の適正な人数に関する質問主意書

 政府は、「参議院議員川田龍平君提出航空旅客事業における事業用操縦士、准定期運送用操縦士及び定期運送用操縦士に対する飲酒規制に関する質問に対する答弁書」(内閣参質一九七第三〇号)において、日本を拠点とする航空会社に勤務する副操縦士が、二〇一八年十月二十八日に英国において飲酒を理由に搭乗できなかった航空機(以下「当該航空機」という。)の運航体制について、「日本航空株式会社からの報告によると、御指摘の「当該航空機」は、二名の航空機乗組員により運航されたものと承知している」と答弁している。しかし、当該航空機は、大陸を横断する長距離国際線であり、その操縦を担う運航乗務員は、十一時間以上の長時間にわたって航空機の安全運航に努めなければならないと理解するところであるが、二名の運航乗務員のみでは、休憩等の時間で一名の運航乗務員が席を離れた場合には、一名で当該航空機を運航することになりかねず、不測の事態が生じたときに、二名の運航乗務員によって協力して問題に対処することができない。
 逆に、操縦室における運航乗務員の二名体制を常時確保するため、休憩等を与えずに長時間にわたる運航を強いることは、運航乗務員の疲労を高めるだけであり、集中力が散漫となることも予想され、結果としてヒューマンエラーにつながることは、航空機事故の専門家の間ではよく知られた事実であり、航空機事故予防という観点からは、非常に危険極まりない勤務環境にあるといえる。
 以上のような問題意識から以下に政府の見解を問う。

一 長距離国際線の運航に関し、我が国では、運航予定時間当たりの運航乗務員数等を法令で定めていないのか。定めていないのであれば、その理由を明らかにされたい。

二 当該航空機にあっては、二名の運航乗務員によって運航されたということであるが、当該航空機の運航中は、機長及び副操縦士が常時二名体制で操縦室において運航業務に当たっていたのかどうかについて明らかにされたい。また、仮に当該航空機の運航中に、一名で運航せざるをえない時間帯があったのであれば、その際の安全対策はどのようなものであったのかについて明らかにされたい。

三 航空機事故を防ぐ一つの方策としてクルーリソースマネジメント(以下「CRM」という。)が知られており、また、多くの航空会社がCRMに関する運航乗務員の能力開発に力をいれていると聞くところである。CRMは、人的要因に起因した航空機事故の主原因は、運航乗務員間のコミュニケーション不足や協力関係の構築不足であるとの考え方が米国で広まったことから生まれた概念で、操縦室で使用可能なすべてのリソースを駆使して安全運航を実現することを旨としている。CRMにおいては、少なくとも操縦室には、機長及び副操縦士の二名が乗務していることが前提とされているものと考える。そこで政府に問うが、長距離運航を前提とする航空機の運航にあって、CRMを実施するにははなはだ不適当な操縦室における運航乗務員の一名体制を許している理由について明らかにされたい。

  右質問する。