質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二一号

スポーツ庁通知「三〇ス庁第二三六号」における大学が授業・試験を行わないことを誘引する内容につき「学問の自由」を尊ぶ日本国憲法の精神との整合性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十一月十三日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   スポーツ庁通知「三〇ス庁第二三六号」における大学が授業・試験を行わないことを誘引する内容につき「学問の自由」を尊ぶ日本国憲法の精神との整合性に関する質問主意書

 平成三十年七月二十六日にスポーツ庁次長及び文部科学省高等教育局長名で発出された「平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法の一部を改正する法律による国民の祝日に関する法律の特例措置等を踏まえた対応について(通知)」と題する通知(以下「同通知」という。)につき、日本国憲法が保障する「学問の自由」を軽視するスポーツ庁の姿勢が垣間見られる内容となっており、学問を志す若者が世相に煩わされることなく学ぶことができる環境を守るために、ここに学問を希求する若者を代弁して政府の真意を問うものである。以下に政府の見解を質すので、未来を担う学究の徒の思いに対して真摯に回答することを求めるものである。

一 同通知は、「平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法及び平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法の一部を改正する法律」の成立に伴う国民の祝日の変更によって各大学の学事暦が少なからず影響を受けるであろうことをもって、学事暦や授業等の運用にあって、その留意事項について解説する通知であると理解するものである。しかしながら、その本文中には、それとは無関係な内容である「学生が、オリンピック・パラリンピック競技大会等に参加することは、競技力の向上のみならず、責任感などの高い倫理性とともに、忍耐力、決断力、適応力、行動力、協調性などの涵養の観点からも意義があるものと考えられます。」(以下「前記文章」という。)などの文章があるばかりか、「各大学等において、例えば、学生の同大会等への参加や同大会に係るボランティア活動への参加のため」(以下「前記修飾文」という。)などの修飾文を用いて、ボランティア活動を目的とした学事暦の変更等をあからさまに誘引するような文章が記載されている。学事暦の変更等についての手続きを解説するだけの目的であれば、前記文章及び前記修飾文などは不要であると理解するものである。ここで政府の見解を問うが、何故に前記文章及び前記修飾文を同通知に書き込んだのかにつき明らかにされたい。

二 同通知に前記文章及び前記修飾文のような文章を書き込んだのは、政府として各大学に対して、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会等に際して、各大学に在籍する学生に対して、大学が率先してボランティア活動へ参加できるような環境を整備することを求めているということなのか、政府の見解を明らかにされたい。

三 前記二に関連して文部科学省の見解を問うが、たとえば、大学が学事暦を変更しなかったり、ボランティア活動斡旋に非協力的であったりする場合、当該大学に対して政府が拠出する助成金・補助金等の取扱いにあって不利な扱いをするということがあるのかどうかについて明らかにされたい。

四 同通知の第一項において、「例えば、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催期間中(平成三十二年七月二十四日~八月九日、八月二十五日~九月六日)に、授業・試験を行わないようにするため、授業開始日の繰上げや祝日授業の実施の特例措置を講ずることなどが可能であり」とあるが、たかだか国際競技大会を理由として、大学の学事暦を変更させ、学問を志す有為な人材の日常を乱し、また、純粋に学問に打ち込みたいと望む学究の徒に対して、前記文章にあるような抽象的な精神論に立脚する能力開発を強いるかのようなボランティア活動への参加を促すための学事暦の変更に従わせるような施策は、日本国憲法が保障する学問の自由を軽視することにつながるのではないかと危惧するものである。学問を希求する者の日常を狂わせる施策を推進することについて、体育競技大会におけるボランティア活動ではなく学問に打ち込みたい学徒の「学問の自由」への配慮が欠如していると考えるが、政府の見解を求める。

五 政府は、スポーツについて殊更にその効用を流布し、こうした特例措置を講ずるが、精神性の向上を謳うのであれば、その涵養をはかる手段としては、文化芸術も同様の効果があるものと考えるものである。何故に体育競技大会にあってのみ、こうした特例措置を推進するのか理解に窮するものである。音楽、美術、文学などの文化芸術にかかる催事にあって、こうした特例措置を講じたことが過去にあったのかについて明らかにされたい。また、これまでに文化的な催事に際して、こうした特例措置が講じられたことがないのであれば、何故に体育競技ばかりを優位に扱うのかについて合理的な説明を求めるものである。

六 そもそも学問研究にあっても、高い精神性と倫理性は涵養されるものであると確信するものである。前記文章を拝読する限りにあって、スポーツが学問よりも優位であると政府が考えているようにも理解できる。政府は、学問追求をしても、高い倫理性や忍耐力、決断力、適応力、行動力、協調性などは涵養できないと考えているのかについて、見解を明らかにされたい。

  右質問する。