質問主意書

第196回国会(常会)

答弁書


答弁書第二一六号

内閣参質一九六第二一六号
  平成三十年七月三十一日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員石上俊雄君提出持続可能な社会保障制度の確立に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石上俊雄君提出持続可能な社会保障制度の確立に関する質問に対する答弁書

一の1の(1)について

 御指摘については、政府としては、各保険者が被保険者等の健康づくりに取り組む等、保険者に求められる役割を適切に果たすための取組を推進するとともに、高齢化の進展等に応じ、保険者間の支え合いを進め、制度の持続可能性を高めていくことが重要であると考えており、平成二十八年度から、被保険者等が自ら健康の保持増進、疾病の予防を行うことに対するインセンティブを高める取組を推進することとしたほか、平成二十九年度から、後期高齢者支援金(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第百十八条第一項に規定する後期高齢者支援金をいう。以下同じ。)に係る被用者保険等保険者(同法第七条第三項に規定する被用者保険等保険者をいう。以下同じ。)の負担について、負担能力に応じたより公平な負担とするため、後期高齢者支援金の額の全てを当該被用者保険等保険者の標準報酬総額(同法第百二十条第二項に規定する標準報酬総額をいう。)に応じた負担とすることとしたところである。

一の1の(2)について

 御指摘の「高齢者医療運営円滑化等補助金」については、各年度の予算編成過程において検討し、適切に対応してまいりたい。
 また、御指摘の「全面総報酬割の導入に伴う被用者保険の保険財政への影響の評価及び検証」については、「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成二十七年五月二十六日参議院厚生労働委員会)において「後期高齢者支援金の総報酬割の拡大に当たっては、被用者保険の保険財政への影響の評価及び検証を行う」とされており、政府としては、その趣旨を十分尊重し、被用者保険の保険財政への影響の評価及び検証を行うよう努力してまいりたい。

一の2の(1)について

 御指摘については、政府としては、保険者の財政に与える影響を踏まえ、関係者の理解を得つつ必要な検討を行うことが重要であると考えており、今後、厚生労働省において、検討を行ってまいりたい。

一の2の(2)について

 任意継続被保険者制度については、医療費の自己負担割合が国民健康保険と被用者保険との間で違いがなくなったことなどを背景にその見直しを求める意見がある一方で、退職等に伴い被用者保険から国民健康保険へ移行した場合における保険料負担の激変緩和としての意義を評価する意見など様々な意見があると承知しており、御指摘については、任意継続被保険者制度の見直しに伴う保険者への財政影響も考慮しながら、慎重に検討すべき課題であると考えている。

一の3について

 御指摘の「税制における所得再分配機能の発揮を考慮」の意味するところが必ずしも明らかではないが、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第百五十条第一項に規定する介護給付費・地域支援事業支援納付金(以下「介護納付金」という。)については、高齢者を社会的に扶養するという意味を持つことを踏まえ、各医療保険者に係る介護保険の第二号被保険者の数に応じて負担する仕組みとされていたところ、被用者保険等保険者における介護保険の第二号被保険者間の負担の公平を図り、及び負担能力に応じた負担とするという観点から、被用者保険等保険者に係る介護納付金の額については、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成二十九年法律第五十二号)により、各被用者保険等保険者に係る同法第一条の規定による改正後の介護保険法第百五十二条第二項に規定する第二号被保険者標準報酬総額に応じて負担する仕組みとしたものであり、政府としては、御指摘のように「介護納付金の被用者保険間の負担調整は、公費の拡充を含めて検討するべき」とは考えていない。

一の4について

 御指摘の地域包括ケアシステムの構築については、政府としては、これまでも、通所介護、短期入所生活介護等の在宅サービスの充実や、小規模多機能型居宅介護及び定期巡回・随時対応型訪問介護看護の強化を図ってきているほか、「介護離職ゼロ」の実現に向けて、高齢者の利用ニーズに対応した介護サービス基盤の確保や、介護する家族の不安や悩みに答える相談機能の強化・支援体制の充実等に取り組んでいる。

二の1について

 総合合算制度については、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)第七条第一号イにおいて、総合合算制度、給付付き税額控除等の施策の導入について、総合的に検討する旨が規定されていたが、「平成二十八年度税制改正の大綱」(平成二十七年十二月二十四日閣議決定)において消費税の軽減税率制度を導入することとしたことに伴い、消費税率引上げに伴う低所得者対策としては実施しないこととしたところである。

二の2の(1)について

 介護ロボットについては、都道府県が設置する地域医療介護総合確保基金により、介護事業所への導入を支援しており、政府としては、平成二十六年四月の消費税率引上げによる増収分等を財源として、平成二十七年度から当該基金の財源に充てるために必要な資金の交付を行っている。

二の2の(2)について

 御指摘の「介護報酬加算」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成三十年度の介護報酬改定においては、指定介護老人福祉施設等において、業務の効率化を図る観点から、入所者の動向を検知できる見守り機器を、当該指定介護老人福祉施設の入所者の数の百分の十五以上の数設置している等の場合に、夜勤職員配置加算の要件を緩和する見直しを行ったところである。

三の1の(1)について

 政府としては、社会保障制度の持続可能性の確保及び財政の健全化を同時に達成するため、引き続き社会保障と税の一体改革を着実に進めてまいりたい。

三の1の(2)について

 政府としては、高齢者人口がピークを迎える平成五十二年頃を見据え、社会保障の給付と負担の姿を幅広く共有し、国民的議論を喚起することが重要と考えており、このような議論の素材を提供するため、「二千四十年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」(平成三十年五月二十一日経済財政諮問会議提出)を公表したところである。

三の2の(1)について

 まち・ひと・しごと創生法(平成二十六年法律第百三十六号)第九条第一項に規定する都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略及び同法第十条第一項に規定する市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略(以下「地方版総合戦略」という。)の検証については、地方版総合戦略を策定した各都道府県及び市町村(特別区を含む。)(以下「地方公共団体」という。)自身が、PDCAサイクルを確立した上で、その実施状況の総合的な検証を毎年度行うことが基本となるものと考えている。政府としては、「都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略及び市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略の策定について(通知)」(平成二十六年十二月二十七日付け閣副第九百七十九号内閣審議官通知)を発出し、このようなPDCAサイクルを確立することの重要性を周知したほか、地方版総合戦略策定のための手引を作成・公表する等、地方版総合戦略に基づく地方公共団体の施策が効果的・効率的に実施されるよう取り組んでいるところである。

三の2の(2)について

 まち・ひと・しごと創生は、地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保を目的の一つとしており、これを受けて、地方創生推進交付金の交付等により、御指摘の「現役時代から地域活動に参画する」人材も含め、地域社会を担う人材の育成及び確保に資する取組を支援しているところである。