質問主意書

第196回国会(常会)

答弁書


答弁書第二一〇号

内閣参質一九六第二一〇号
  平成三十年七月二十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出最低賃金の水準を見直す必要性に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出最低賃金の水準を見直す必要性に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、関係する資料の保存期間が経過しているものもあることから、網羅的にお答えすることは困難であるが、現時点において把握している限り、お尋ねのような調査・分析は行っていない。

二について

 お尋ねの「最低賃金の水準とその国の生産性との間の相関関係」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

三について

 地域別最低賃金は、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第九条第二項において「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」とされていること、及び同条第三項において「前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」とされていることを踏まえて決定されている。
 また、お尋ねの「他の先進国と比較した場合の日本の最低賃金の水準」については、各国において最低賃金が適用される労働者の範囲や物価水準等が異なるため、それらの最低賃金の水準を一概に比較することは困難であり、お答えすることは困難である。

四及び五について

 御指摘の「地域間の賃金格差」については、各地域における企業規模が異なること等により生じていると認識している。また、企業が支払う賃金水準については、各企業が、その経営状況や労働者の生活等様々な要素を考慮しつつ、労使の話合いを通じて、自主的に判断するものであると認識しているが、政府としては、最低賃金の引上げや賃金引上げのための中小企業の生産性向上を図るための助成措置等を進めることにより、賃金の底上げを図ることが重要であると考えている。
 全国一律の最低賃金が設けられている欧米諸国の制度は、最低賃金の適用除外の範囲も広く認めていると承知しており、原則として全ての労働者が最低賃金の対象となる我が国の制度とは異なること、最低賃金法第九条第二項において「地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」とされていること等から、我が国において全国一律の最低賃金の設定を直ちに実現することは困難であると考えているが、平成二十九年七月二十五日に取りまとめられた「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告」においても、「地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていく必要がある」との認識の下、「平成二十九年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安」が示されており、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率は近年増加傾向にある。政府としては、引き続き、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率に配慮していく必要があると考えている。

六について

 特定最低賃金については、「その意義および役割を認識し、今後とも特定(産業別)最低賃金の金額改正および新設の取り組みを積極的に進める」との意見がある一方で、「大幅な引上げが近年続いている地域別最低賃金額との差が急激に縮まっている・・・今後も政府の引上げ方針に配意した地域別最低賃金の審議が続くならば、特定最低賃金を存続させる意義はますます失われていく」との意見もあると承知しており、現時点で直ちに特定最低賃金の制度自体を見直す状況にはないと考えるが、今後とも御指摘の附帯決議や労使の意見も踏まえながら、特定最低賃金の活用について検討してまいりたい。